オカンちゃん〜〜主人が泣いた日〜〜③

2018年3月1日(木) 495 / 10

オカンちゃんは、徐々に家猫になっていきました。
居なくなっていった子供たちのことも諦め、だんだんと家での生活を満喫できるようになりました。

オカンちゃんは、主人のことが大好きでした。
大好きというよりは自分の子供のように思っているようでした。

私たちがご飯を食べるときにはあぐらをかいた主人の膝の上。そこでずっとオカンちゃん用のご飯をおねだり。
刺身や湯がいたササミなど食べていました。
オカンちゃんには毎日日課がありました。それは主人の毛づくろいです。
ごろ寝をしている上に毎日乗っては、丹念に頭の毛を毛づくろいです。

主人もまたオカンちゃんが大好きでした。
「オカンちゃん、もういいよ。ありがとう。」と困った顔をしているものの嬉しそうでした。

オカンちゃんと出会い、１０年ぐらい経ちました。
オカンちゃんも１０歳を超えてきた年齢になりました。
いつの間にかオカンちゃんの犬歯は全部無くなっていました。

あるとき、主人が言いました。
「オカンちゃん、なんかお乳の辺りに膨らみがあるんだ・・・」

オカンちゃん自身は何も変わらない生活を送っていました。
私は、「気になるなら病院行った方がいいんじゃない？」と言いました。

私たちは、軽い気持ちで病院へ行きました。
元気なオカンちゃんは病院を嫌がっていました。
診察のとき、先生から思ってもいなかった言葉を聞きました。
「これは多分、腫瘍ですね。組織検査をしましょう。」

私と主人は想像と違った成り行きに驚くばかり・・・・

病院ですぐに検査をして、すぐに結果がでました。
「やはり腫瘍でした。乳腺腫瘍です。すぐに手術をしましょう。」
「猫の場合は腫瘍は悪性がほとんどです。腫瘍も二箇所ありますから、早急に取りましよう。」

先生のお話に、ただただ驚き、動揺するばかりでした。
オカンちゃんの手術日はすぐに決まり腫瘍を切除することになりました。

家に帰っても私たちは想像していなかったことに、口数も減っていました。

「知っていたんだ・・・・・」
主人がポツリ言いました。

「何を？」
私は聞きました。

「オカンちゃんの腫瘍・・・・前からあったこと・・・・」

「少し前から気づいていたのに・・・・・」

私は主人にかける言葉がありませんでした。
なんでもっと早く言わないの！とか、責める気にはなれませんでした。本人が一番傷ついているからです。

オカンちゃんは、その日も変わらず主人の毛づくろいです。
「オカンちゃん、ごめんね・・・」
そんな言葉を呟く主人にいつもと変わらないオカンちゃん。

オカンちゃんの手術は、すぐに行われました。腫瘍二箇所をえぐるように取ります。オカンちゃんの乳首も一つ無くなりました。

夜、迎えに行き腹帯姿のオカンちゃんを見て、主人はすごく切なさと申し訳さそうな顔をしていました。
帰宅してからのオカンちゃんは、フラつき大きい声で鳴き、見ている私たちはオロオロするばかり。

ですが、オカンちゃん。
なんと、ご飯をモリモリ食べ始めたのです。
先生からは食事はまず無理なので次の日も点滴にと言われていました。
私たちは、少しだけホッとしました。

それからオカンちゃんの術後は経過も良く本人の体力もあり、回復していきました。
私たちはオカンちゃんの底力というか生命力を感じました。

主人は心の底から嬉しそうでした。
またオカンちゃんは元気になり、一緒に暮らせる・・・そう思っていました。

しばらく平穏な日々が続きましたが、長くはありませんでした。

オカンちゃんの再発です。
1年以内にまた再発したのです。

オカンちゃんは、また腫瘍切除の手術をしました。

だけど、今回の術後は前のように回復は早くありませんでした。
高齢になっているオカンちゃんの体力はそんなになかったのです。

オカンちゃんは、2回の手術の後は外科的治療はしませんでした。
本人の負担や余生をオカンちゃんらしく生きて欲しかったからです。

オカンちゃんは、今から4年前の4月に亡くなりました。

そのとき、主人がオカンちゃんを見ながら泣いていました。

「オカンちゃん、ごめんね。もっと早く病院に行っていれば・・・。自分のせいだよね・・・。」

ずっとずっと、亡骸を見ながら謝っていました。

私は、今の主人には何を言っても慰めにはならないと思い、声をかけず2人きりにしました。

オカンちゃんには沢山教わりました。

出産のショックで、また発情期がはじまることがあること。
ケガがひどくてじっとしていて帰ってこなかったこと。

そして、母猫として子供を守るために数匹のアライグマに立ち向かった愛情。

主人は、今でもオカンちゃんのことを思い出すと、自分を責めているようです。
でも、いつもいい猫だったと言っています。

いつか、主人が自分を責めずいい思い出としてだけオカンちゃんのことを話せる日がくればいいなぁと思います。

長い長い日記を読んで下さり、ありがとうございました。

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