白ネコさんとの思い出の続きです。
11月1日。
朝9時30分頃、外に出かけた。
昨日の晩に置いた白ネコさんのご飯を確認するとご飯がなくなってる。食べてくれたんだー。
お腹いっぱいになってよかったよかったと自転車を漕ぎだした。
この日は自分の中である決断をしていた日だった。
それは、歌うことをやめようと言うものだった。
僕は愛知県に来てから毎週、一人カラオケに行っていた。
カラオケが好きな訳ではない。
僕は今までカラオケを好んで行ったことがない。
ギターのコードをネットなどで見たりして、弾きながら歌えば良いだけなので、家族で行くとかならまだ分かるけど、一人で行くなんて考えられなかった。
…家族と行っても順番を待たないと行けないし、連続で歌い続けないと練習にならない…
そう、歌を楽しむと言うよりは練習をしてる感覚に近かったので、歌を歌って楽しいとあまり思ったことがないのである。
何故、一人カラオケに行っていたかと言うと、自分の今まで溜めた歌詞のできあがっていない楽曲に適当に詞をつけて、一枚CDを作って結婚記念日にサプライズで嫁さんにあげようとしていた。
その中には、過去に関西最優秀作曲賞をもらった作品や、レコード会社から評価を貰った四月の雨と言った嫁さんに作った楽曲などが入っていて喜んでもらえると思っていたからだ。
ただ、その楽曲は10代の現役の頃ですらまともに歌えた試しがない。
でもCDなので、最悪良い部分を貼り合わせても作品としては成立するので問題はない。弾き語るとなると話は別ですが…
そう、区切りの良い部分だけを最高の状態で歌える最低限の技術だけを取り戻せば良いと思って、週に一回通った。
…けど、甘かった…
一向に上手くならない。何ヶ月も行ったのに何も変わらない。そりゃそうだ。週に一回2時間歌って、現役の頃もまともに歌えなかった歌を、区切った所で歌いこなせる訳がない。
…もういいか。
CDあげて喜ぶとも限らんし、上達が見込めないなら時間とお金の無駄。その時間を白ネコさんと遊んだりしてる方が良い。とりあえず今日でもう歌はもう辞めや。
…いつか、こんな日が来ると思ってたけど割とアッサリしてたな。
よく考えたら本気で取り組んだ事も数回しかなかった。才能だけで出来るもんじゃないわ。その程度なんだわとサジを投げた。
そして自転車に乗り道路を挟んだ白ネコさんとよく遊んだ向かいのマンションへ。少し行けば信号のある交差点があるけど、交通量が少ないので寮からマンションへ一気に走ってカラオケ屋を目指した。
歌ってみると当然ながら上達はしていない。
はい、終了〜。帰ろ帰ろ。下らん時間やった。
そう言えば白ネコさんのご飯がなくなりかけている。新しい味のご飯を買ってあげよう〜♫
そうそう、缶詰とか買ったことがなかった!コレも買っていこう!喜ぶやろうな〜♫
そんな感じで買い物を済まして、15時頃寮の前に着いた。
交通量が少ない道路で渋滞が起きている。
?…なになに?なんで?
ネコが車に轢かれて死んでる…
白ネコさん?まさか…いや、いやいや、グレーだ。
断言できる。白ではない。…良かった…と思い、そのまま寮に帰った。
嫁さんに電話でその事を話した。
まさかー?白ネコさんじゃないやろー。気のせい気のせい。
うん、おいらもそう思う。そんな感じで電話を切った。
気になったので1時間置きくらいで寮内をくまなく探した。…いない…
22時。いつもの時間が来た。なのにいない…。
…アカン。あの死体が気になる。目の前で見よう。
本当に目の前で見た。
夜だけど、白ではない。白に近いけどグレーだ。
でも血がいっぱいついていてよく分からない。
頭も割れていて、お腹も腸が出ていてわからない。
白ネコさんの耳ダニも血がこびりついていてわからない。
でも…足の形が似ている。あの後ろ足。
…わからない…わからない…白ネコさん?…わからない…触っても平気?…
…ネットで調べよう…
そのネコが病気を持っていたらうつる可能性があるとの事。
もし、この遺体が白ネコさんじゃなかったとして、病気になって白ネコさんや家族に病気をうつしたらどうしよう。。。そう思った。
一先ず、違うと信じよう。。。そして僕は、その死体をそのままにして部屋に帰っていった。
2日目。11月2日。
あの死体は、道路で横たわっている。
昨日よりもっとグレーになっている…。
…胸騒ぎがする。今日呼んで来なかったら、アレは99パーセント白ネコさんや。2日連続でいないなんてありえない。
ただ夜勤…昼勤ならお出迎えがあったりするけど、夜勤の時は会えたり会えなかったりやったから何とも…
だけど仕事が終わって白ネコさんがいなかったら、あの遺体を白ネコさんがよく居た水槽の横の大きな木の下に埋めてやる。そう思っていた。
その為には、仕事が終わって帰ってくる朝の7時〜仕事に出かける20時までの間では無理だ。
人目につきすぎて穴を掘るなんて無理。
仕事を休むしかない。そうしよう。
そして、仕事が終わってもやはり白ネコさんはいなかった。
嫁さんに、今日突発で休み入れて白ネコさんを寮のよくいた水槽の横の木の下に埋めるって言った。
嫁さんからの答えは、勝手に埋めたら犯罪やで。
…は?…
またネットで調べた。確かに私有地に勝手に埋める事は犯罪のようだ。
…どうすれば良い?
役所とかに相談してみるとかは?
でも、私は白ネコさんじゃないと思ってるけど…。
そして、その日は何もせずに終わった。
11月3日。仕事にも集中できない。
やはり白ネコさんは呼んでもいない。
アカン、もう無理や。
嫁さんに電話した。俺は何と言われようがあの遺体を寮に埋める!アレは100%白ネコさんや!!
いや、私は違うと信じてるけどな…。
信じるとかそんなんじゃない!!アレは現実なんや!!現実にそこにおるんや!!グチャグチャになりすぎて分からへんかったんや!!もう何でもいい!!絶対に埋める!!
一方的に電話を切った。
その日は台風が来ていて大雨だった。
もう本当に真っ白な体は、本当に汚れまくってグレーになっていた。ずっとずっと車に踏み続けられた。
コレは無理か…休んでも土がグシャグシャで埋めるなんてできない。…次の日にしよう…
そうして、そのまま遺体は道路の真ん中で横たわっていた。
次の日、夜勤が終わり朝に帰ってきた。
台風は過ぎ去り晴れていた。
よし。今日休みを入れて夜に埋める。
そう決めていた。
夕方、様子を見に行った。
……遺体がない……
え?なんで?
保健所か、市役所が遺体を持って行った?
これ以上車に轢かれずに済んだ…良かったのか?
ちゃんと供養してくれれば、寮に埋めるより良かったのか?
…休む理由がなくなった…
仕事に出よう…昔そういえば猫とかの遺体は保健所や役所で火葬するって聞いたことがある…
…良かったのか?
骨とかは貰えるのか?
ネットで調べよう…。
昔は供養などしていたが、現在は生ゴミとして処理されますって書いてある…。
…えっ?
おいらの白ネコさんが生ゴミで処理…なんで??
なんで!なんで!!
おいら何やってたの!?雨の中でも掘ってあげれば良かったんじゃないの?
その間、悠長に夜を待って寝てただけ?
そもそもなんで少しづつ疑いをかけていったのなら、あの道路にそのまま置きっ放しにしてるわけ?
どこか別の場所置いてあげれなかったわけ?
よくよくネットで調べたら愛猫が車に轢かれて死んでいたという似たような境遇の人が、ゴミ袋などで遺体に直接触れず別の場所に安置した。とか、腸をお腹の中に戻して、血まみれになった愛猫を抱きかかえて泣きながら帰ったとか書いてるじゃん。
オレは何?病気になるだのなんだの。何それ?
そんな事ばっかり調べて肝心な事は調べられていない。
あの子はきっと、おいらが目の前で確認しに行った時に、ゴメン。こんな事になってしまった。ゴメン。ここから助けて!って言ってたに違いない。
それを…それを、気づいてあげれなかった。
1番大切な場面で気づいてあげれなかった。
そして見殺しにした。君は幸せだったと最後まで言い切れるか?
最後、手を差し伸べれなかった僕に、気づいて欲しかった。助けて欲しかったと思っているに違いない。君は本当に虹の橋の上にいてくれてるか?
僕はネコジに来るまでは、白ネコさんは暗い牢屋みたいな所に閉じ込められていて、助けてって言っていて、僕が必ずそこから出してやる!ってそんな感じで思っていた。
君は本当に虹の橋の上で、他の猫ちゃん達と遊べているか?頼むからそうあってくれ。
白ネコさんが死んだ事実も悲しいけど、生ゴミとして処理されたのが自分のせいで1番許せない。
殺したいくらい許せない。僕は僕を一生許さない。
結構引きずられたように思います。
即死であってほしいと心から思います…。
そして、遺体がなくなってこの道路の写真を撮って気づきました。
このルートは、僕がカラオケボックスに行く時に自転車で通ったルートだと…
僕はイヤホンをしていて気づかなかったけど、白ネコさんは僕が出て行くのを見かけて追いかけてきて車にはねられたんじゃないかと思っています。
そう考えれば合点がつく…
ここに何年も住みついていた君が不用意に道路に飛び出すはずがない。
僕は運命なんて結果論だと思っていた。
運命は変えられない。だって、結果論なんだもんと思っていた。
でも、あの日から僕はそう思わなくなった。
小さな選択の積み重ねが運命って言うのなら、運命は変えられるんじゃないかと思いだした。
だって、あの日君と遊ぶ為に、飲み会を断っていたら、あの日君は道路の上で死んでしまうなんて事はなかったんじゃないか?
あの日、連れて帰る事が出来ていたら?
あの日、向かいのマンションやガソリンスタンドで遊んで道路に慣れたから?
あの日、一棟に呼んだから?
あの日、僕と出会ったから?
悔しくて悔しくてどうしようもない。
悲しくて悲しくて涙しか出てこない。
こんなどうしようもない自分を殺してやりたい。
けれど、そんな事できない。誰も喜ばない。
僕を愛してくれた君が一番喜ばない。そうだよね?
君は本当に、みんなが言ってくれるように虹の橋の上で、レイくんやコナちゃんや大勢の猫ちゃん達と遊んでくれてるか?
僕は僕の運命を変えてやる!
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