我が家の敷地内に、どこからか猫がやって来たらしい。
暗くて姿は見えなかったが、それはそれはめんこい声で鳴いていたという。
ブッコとその猫は互いに惹かれあったのか、しばらく鳴き声を交わしていたそうな。
その様子はさながらロミオとジュリエットのようだったと父は言った。
ブッコの声はダミ声で、飼い主の贔屓目(贔屓耳?)で聞いても可愛くないなぁ、と思う時もあるほど。そのブッコもなかなか可愛い声で鳴いていたらしい。
以上はわたしが眠っていた間のことを両親から聞いた話。
だいたい敷地内に猫が入り込んで来ると、ブッコは怒り、唸り声をあげてしっぽをぶっとくして走り回る。それが優しい声で鳴き交わしていたというのだから、その猫のことをよほど気に入ったのだろう。
そしてその猫が、昨夜もそして今夜もやって来た。
まずブッコが突然顔をあげ、窓の方を向いて鳴き出した。鳴きながら窓の方へ移動していく。すると聞き慣れない猫の声が聞こえてきた。なるほど細い高い可愛い声でブッコに呼び掛けている。
玄関脇の窓だったので灯りをつけて覗いてみると黒猫だった。少し長毛の血が入っているのか、しっぽがフワフワした感じ。
話に聞いていたとおり、お互い見つめ合いながら呼び交わしている。


見辛いけど、黒猫ちゃん。
うーん、これはちょっと見ていて切ない。
切ないけれど、どうすることもできない。
ブッコの恋に合わせたかのように、今年最初の薔薇が咲いた。

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