私の声を聞いて、近づいてくるビスコ。
これが、この2年間の私とビスコの毎朝の決まりごと。
2年間、毎朝必ず、私の出待ちをしてくれてたビスコ。
この酷暑の中、いつもガレージで待っててくれた。
私がガレージに行くと、近づいて来てごはんをおねだりしてた。
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毎朝、毎晩。
この夏は暑かったから、ミルクもたくさんおねだりに来た。
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いつもはウェットもたくさん食べるのに、数日前から、食欲が落ちてた。
総合栄養食のちゅーるを少しと、ミルク。
それに、またたびの粉をふりかけたカリカリを少し。
ビスコのために、デビフのムースをたくさん買った。
少しでも、ビスコが食べられるように。
少しでも、ビスコに栄養つけて欲しくて。
水曜日。
朝、いつものように出待ちしてくれてた。
でも、いつものウェットにもカリカリにも口をつけなかった。
代わりにちゅーるを2本。
それにミルク。
夕方。
ミルクは飲まない。
デビフのムースを少し。
またたびをかけたカリカリを少し。
木曜日の朝。
ちゅーる2本。
ミルクは飲まない。
夕方。
がらしゃとコロンと一緒にウェットを食べてた。
カリカリも食べてる。
ちゅーるも食べた。
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よかった。
食べられるようになったんだね。
金曜日の朝。
いつもの時間にビスコがいない。
どうしたのかな?
がらしゃは来てるよ。
夕方。
やっぱりビスコはいない。
なんだか胸騒ぎがする。
でも、少し遅れてるだけかもしれない。
土曜日の朝。
ビスコはいない。
用意したごはんを食べにきた形跡もない。
夕方。
いつもビスコと一緒にいたコロンだけが庭にいる。
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必死で鳴いてる。
この声は、お母さんを探す声なの?
ビスコ。
コロンが呼んでるよ。
どこにいるの?
コロンはずっと、庭で鳴いてる。
ビスコ。
どうしちゃったの?
今朝。
ガレージに行くと、コロンだけが待ってた。
その姿を見て、
「やっぱりビスコはもう…」
という最悪の考えが頭をよぎる。
ビスコ。
ビスコ。
二年間、
雨の日も、
風の日も
雪の日も
ずっとごはんを食べにきて、毎日顔をあわせてた。
気高き野良のプライドで、決して人間に媚びることもなく、触らせてくれることはなかったけど、
私の姿を見たら、
「ごはんちょうだい」
と、近寄ってきた。
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授乳中は一日に何度もごはんを食べに来て、私を驚かせた。
かわいい子供たちも連れてきた。
子どもたちに
「ごはんはここで食べるんだよ」
と教えて、大切に、大切に育ててた。
子どもたちを避妊、去勢するために、目の前で捕獲器に掛かった子どもたちも見た。
私の姿を見て、
「開けてあげて!」
と必死で訴えてた。
子どもたちの手術がすんで、
ひょっとしたら、もう来てくれないかもしれない…
と心配したけど、
ビスコは変わらず来てくれた。
小さな子どもたちを、安全な場所で育てようと、うちのガレージに引っ越してきた。
子どもたちを庭で遊ばせて、微笑ましい姿を見せてくれた。
パナップとポッキーを保護したときも、ビスコはそばにいた。
パナップとポッキーを連れ去った私のもとに、やっぱりビスコはいつも通り来てくれた。
この夏の暑さで、
ビスコの保護を考えてた。
厳しい環境の中、子育てしながら必死で生きるビスコを、とても大切な存在だと感じていたから。
ビスコはガレージでいつも私を待っててくれた。
なのに、今日はビスコがいない。
今日は朝からビスコを探して歩いた。
近所の人にも聞いてまわった。
近くの空き家も、道路沿いも。
何度も何度もビスコの名前を呼びながら。
お外の子は守れない。
何かあっても、目の前にいない限りどうすることもできない。
いつかは別れがくるのはわかってても、それが今日や明日だとは思いもしない。
これからも、ビスコに「おはよう」を言う毎日が続くと思ってる。
ビスコ、どこにいるの?
どこかで動けなくなってるの?
コロンが来てるよ。
たくさん鳴いてる。
コロンも私も
ビスコのこと待ってるよ。
早く帰っておいで。
いなくなったなんて信じない。
いつまででも待ってるから。
ずっとずっと待ってるからね。
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