
母親は衰弱死したそうで、餌を求めて倉庫から出てきていたのを上司が可哀想に思い餌を運んでいたのだった。それを近所の、猫嫌いで有名なオバさんが見かけ、「畑や庭で糞尿被害が出るので、餌付けをしないで。保健所に連絡します!」と、自治会に訴え出た。その上司は、昔から猫は半外半室内で飼い、自宅の庭に来る野良猫にもせっせと餌をあげていた。その地域では、それが当たり前になっていて、猫は倉庫のネズミ捕りに飼う、というような見識。猫嫌いのオバさんは、最近都市部からUターンしてきた人だった。
「このままでは保健所に捕まってしまう。可哀想だ。どうにかできないか?」と、一時預かりボランティアをしている私に相談してきた。
「保健所が捕獲に来るのは、狂犬病の恐れがある犬のみで、猫は人が保健所に持ち込むんですよ」と上司に話した。どうにか保護する努力してください、とも話した。
実はその地域には、保健所に動物収容施設がなく、私たちが活動している地域の収容施設に送られてくる。他の何箇所かの地域からも送られてきて、多いときには20匹単位なのだと、ボランティアの代表が嘆いていた。野良育ちで子供を産んで、子猫はまだ人間を怖がらないから、母猫が居ない間に子猫だけが収容されてくる。それは、地域の人間が保健所に持ち込んでくるのだ。

保護猫、TNRの活動をしていくにあたり、地域の認識の温度差を感じている。しかし、毎日のように保健所に収容されるのは、上記のように、「可哀想と言って餌付けだけをし、大きく育てて、野に放ち、無秩序な交配によって増える猫たち」なのだ。それは無抵抗な小さな命、ということになる。
ジレンマを抱えながら、目の前の小さな命を保護するだけで精一杯の毎日を過ごしている。
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