…あのコの瞳と同じくらい、澄んだ青色。
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ずいぶん前の事。
私が高校生だった頃。
帰宅すると見慣れない猫が家にいた。
母が犬の散歩に行って、一緒についてきたという。
「きっと飼主さん、探してるわよね」
近所の獣医さんに預かってもらい、いろいろ問い合わせの電話も、張り紙もしたし、警察も、保健所にも連絡した。
1週間、2週間、、、
獣医さんから「もし可能であれば飼ってあげてくれませんか?ウチでは面倒みれないので、保健所に届けなければならなくなっちゃうんですけど…」←というようなやり取りだったらしい。
捨てられたんだね。
そしてウチのコになったのが、まだ若いシャム猫のハックだった。
仔猫ではなかったけど。すぐ家に慣れた。
…というよりも相当図々しくて、先住の犬猫もビックリ、唖然という感じだった。
すぐにハックが『捨てられた』理由がわかるようになった。
見た目はエレガント。
なのに、その外見とは違ってとにかくうるさい。
騒々しい。
鳴き声はダミ声。
活発で激しい。
…ペットショップでかわいい~♥️なんて、
その特性を知らずに衝動買いをしたらきっと驚くだろう。
私も、先住の猫、トムしか知らなかったからビックリした。
トムは生ゴミと一緒に捨てられていたのを、私が拾ってきて、母と一緒にミルクを与えて犬がトイレの世話をして育てたコで。
とてもおとなしくて、穏やかな性格の猫だったから…
早食いで。
自分が食べ終わると、トムのご飯も食べてしまう。
しかも威嚇しながら食べる。
水を飲むときも、喋りながら飲む。
「にゃんぐにゃんぐにゃんぐ…」
手先が器用で。
ドア開けが得意で、脱走しまくる。
屋根の上にしょっちゅう出たり。
まさかこの窓は、網戸は開けられないだろうというところもチャッカリ開けて、隣の公園で野良ちゃんに睨まれて動けなくなっていたり。
私とも『おいかけっこ』を楽しんだ。
母がなくなったり、家の事情で私と一緒に、何回も引っ越しも経験した。相棒だった。
でも確実に歳はとる。
人間よりも早く、老いていく。
正確な年齢はわからないけれど。
15~16歳にはなっていたと思う。
ハックは腎不全になって、食べることも飲むこともできなくなった。
よろけながら、倒れても、それでもトイレへ行こうとしたし。
私が寝るときはいつもの場所で私と一緒に寝た。…股の間に挟まれて寝るのが好きだった。
あのしっとりとした素晴らしい艶やかな毛並も、だんだん艶を失っていった。
毛繕いもできなくなっていったのもあるだろう。
ある日、点滴に通院に行ったとき。
あまりにもハックが可哀想に思えて。
先生に『安楽死』のことを聞いてしまった。
…見ているのが辛かっただけなのだ。
「動物は、『死ぬ』ということを人間が考えるようにはわかっていない。『生きる』ことしか考えていないと思うんです。
だから、まだ点滴でどうにかしてあげられるのなら『その時』がくるまで、安心する場所で大好きな人と過ごすことがいちばんなのではないかなと思うんです」
『死ぬときまで一生懸命生きる』
2007年、9/15朝。
ハックは私の指を噛んだ。
寝ている私を起こしたのだ。
「はっちゃん、どうしたの?」
そのまま噛む力が強くなって…力が抜けていった。
「ボク、行くね!」って伝えたんだと思う。
私には、青空に向かって元気だった頃のように全速力で駆け抜けていくハックの影が見えた。
「ばいばーい!」
私はどうしてもハックの尻尾の先っぽが忘れられなくて。
ハックの尻尾の先っぽの遺骨だけを手元に遺した。写真たての後ろに置いて、食器棚の1番上で見守ってもらっている。
ねぇはっちゃん。
またアンタみたいなヤンチャ坊主が家に迷い込んできたよ。
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こら、てんてん!
それははっちゃんの…‼️
なんだかはっちゃんがしっぽをパタンパタンさせてる音が聞こえる気がした。
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