体調を崩してから毎日、病院で点滴と何種類もの注射。
ただでさえ体が苦しいのに、つらいよね。
食べなくなって何日だろう。
もうこの子は、食べることはできないの?
ずっと点滴で命を繋いでいかないといけないの?
あんなに食べることが好きだったのに、もうダメなの?
むうた、諦めちゃうの?
そう思いながら何日も過ごした。
病院からも
「このまま食べなければ、これ以上の治療もできないし、こんな状態を続けるのはむうたちゃんにとっても酷かもしれないですね」
酷…
確かにそうかも。
むうたにとって酷なこと、むうたの気持ちも考えずに、毎日…
でも。
やめたらむうたは死んでしまう。
そう思うと、毎日の点滴はやめられない。
毎日、葛藤した。
どうしよう。
どうしたらいいの?
そんな状態で一週間以上が過ぎた。
早朝5時過ぎ。
今までほとんど動かなかったむうたが、ゆっくり起きてきた。
むうた?
どうしたの?
苦しいの?
さみしくなった?
起きてきたむうたは、そのままごはん皿の前に。
むうた?
食べるの?
おなか空いたの?
小さな声で
「んま〜〜…」
それはむうたの心からの叫びに聞こえた。
「ママ…
むう、まだ生きたい!
まだみんなと一緒にいたい!
だから食べる!」
大急ぎでキッチンに走り、むうたのごはんを準備。
いつものフードと、食べやすいスープ。
そっとむうたの前に置くと…
食べた!
むうたが食べた!
ほんのひと口ふた口だけど、確かにむうたが食べた!
むうた!
やっぱりむうたはまだ諦めてなかったんだね。
まだ生きたいんだね。
わかった。
わかったよ。
ママ、むうたの気持ち、よくわかったよ。
むうたが諦めないなら、ママ、まだまだ頑張れるよ。
だから、病院つらいけど、頑張ろうね。
食べられるようになれば、きっときっと元気になるから。
その日、病院でむうたが食べたことを報告すると、
「食べたんですか?え?ほんとに?わぁ〜〜!」
と、スタッフさんも思わず笑顔。
心配してくれてたんだ。
ありがとうございます。
その日からむうたは、毎日、少しずつ食べる量を増やしていった。
もちろん、食欲と並行して、動きも活発に。
今までひとりで寝てばかりだったむうたが、またお膝に来るように。
日向ぼっこにも自分から行くように。
あんなに荒れてたお口も自分で毛づくろいしてキレイに。
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すごい。
すごいよ、むうた。
毎日の病院通いはまだ終わらないけど、むうた、確実に回復してる。
食べることは生きること。
むうたはそれを身をもって証明してくれた。
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日に日に元気になってくるむうた。
これには病院の先生も思わず
「信じられない…」
先生、むうた、もうダメだと思ってたでしょ?
「…正直、そう思ってました。
ここまでの重篤な状態で回復する子、まずいないんですよ。
特にむうたちゃんはエイズもあるし、病気と戦えない。
その上、心筋症まであって、病気の苦しさ、毎日のストレス、心臓への負担を考えると、難しい。
膵炎を治療するのにステロイドも使えない。
このままおうちでゆっくり最期を迎えさせてあげた方がいいのかとも思ってました。
でも、頑張って治療に耐えてるむうたちゃんを見てるとなかなか言い出せなくて…」
やっぱりね。
でも、むうた、負けなかったよ。
むうたの「生きたい!」って気持ちが勝ったんですよ。
「そうですね。
この子の生命力、すごいです。
奇跡が起きたとしか思えないです。
私もこんなこと初めてです。
本当にすごい!」
それでもまだビルビリンの数値は6.6。
胆汁が流れてるかどうかを示す数値。
むうたを黄色猫にしてる数値。
この数値が下がらないと安心はできないのわかってるけど。
心筋症とはこれから一生お付き合いしていかなきゃいけないのわかってるけど。
でも…
むうたは生きることを選んだ。
諦めないことを選んだ。
「生きたい!」と心から思った。
だからきっと大丈夫。
この子はきっと大丈夫。
だって、こんなに穏やかな顔でお昼寝してる。
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気持ちいいんだよね。
もちろんこれはむうたひとりの力じゃない。
私の力でもない。
むうたの不調を聞きつけて、わざわざむうたの平癒祈願に行って下さったお友達。
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むうたが少しでも食べられるようにと、フードを送って下さったお友達。
心配してたくさん連絡下さったお友達。
「必要な物があったら何でも言って!代わりに買ってくるから!」と言って下さったお友達。
へこんでる私に「こんな時こそへらへらしとけ!そしたらむうたも楽しい気分になるから!」と喝を入れて下さったお友達。
自分も腎不全の子を抱えてるのに、むうたが少しでも楽に過ごせるように、毎日のようにヒーリングして下さったお友達。
むうたが元気になるように、遠くから祈って下さったお友達。
みんなの力。
みんなのおかげ。
改めて思う。
野良で嫌われ者だったむうた。
どこにも行く場所がなかったむうた。
いつの間にか、こんなにもたくさんの力をもらえる存在になってた。
きっと、ネコジにいなかったら、こうはならなかった。
むうたが体調を崩した時、この状況を日記に書こうかどうか悩んだ。
たくさんの人に心配かけてしまうかも。
もし回復しなかったら…
悲しい思いは私ひとりがすればいい。
だけど、思い切ってむうたの状態を日記に書いた。
だからたくさんの応援、たくさんのパワーをもらえた。
みんなが送ってくれた祈り、エネルギー。
むうたはそれを生きる力に変えることができた。
この子は幸せな子。
この子は恵まれた子。
そして、もう一つ、むうたに力を与えた存在。
いつもはごはんの時間しか姿を現さないのに、
縁側で寝てるむうたを外からじっと見つめてた存在。
寝てるむうたの前に座って、じっと見つめてた存在。
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「あみさんよ。
おれにゃわかってたぜ。
おれの好敵手は病気なんかにゃ負けるわけねぇってな」
ふきちゃん、むうたのこと心配してくれてたんだね。
ありがとう。
「こいつとは、これからあみさんちのボスの座をめぐって戦わないといけねぇからな。
こんなとこでくたばられちゃ困るってもんだぜ」
ふきちゃん…
うちのボスはむうたじゃなくて、ちまさんだよ。
「おっと!
あのべっぴんの姐さんかいっ?
こいつぁまいったな。
あの姐さんにゃ、おれも勝てる気がしねぇや」
そうだね。
むうたも勝てないからね。
でも、ふきちゃん、むうたのこと心配してくれてありがとね。
これからもよろしくね。
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