
実家の裏のほうから子猫の鳴き声が聞こえると父が言うので、外へ出て耳を澄ますと、確かに、母猫を探しているのだろうか、子猫らしい「にゃあ、にゃあ」と呼びかけるような声が聞こえてきた。
声は、どうやら実家の裏にある駐車場から聞こえてくるようであった。そこで、キャットフードと、保護する場合のためのキャリーバッグを抱えて、急いで裏の駐車場へ回っていった。
先に行っていた父が、白黒の子猫がいる、でもすごい速さで車の後ろへ走って逃げてしまった、大きさはこれくらい、と両手でりんご二つ分くらいの空間をこしらえて言った。
どこへ行っただろうと、止めてある車の下を順番に覗いて行ったが見つからないでいるうちに、今度は反対側の、駐車場の出口の方へ走っていく小さな白黒が、止まっている車のあいだにちらっと見えた。交通量の多い車道の方へ出てしまうとまずい。急いで先回りしたら、また駐車場の奥の方へ戻っていくのがフェンスの横の茂みの陰に見えたが、その後、姿を隠してしまった。
どちらにしろ、今の状態では、捕まえて保護することは無理なようであった。こちらが助けたいと思っているのに、それが伝わらないで、逆に子猫を怯えさせてしまっていることが、とてもじれったい。とりあえず、車道の方へ行ってしまわないように、裏庭と駐車場との境界あたりに餌を置いておくことにした。
子猫が消えたあたりを見つめていた父が、「ポチが子猫になったみたいだな」、いつになく感傷的なことを、ぽつりと言った。
そういわれると、こちらも感慨深く思ってしまうけれど、私の中ではむしろ、白黒の子猫はデビンちゃんと重なっていた。
(デビンちゃんのことを書き出したら、話がちょっと長くなってしまうので、つづきはまたあした書きます)
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