処方箋猫薬品

2019年5月14日(火)

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処方箋医薬品とは：
処方箋医薬品（しょほうせんいやくひん、英語: prescription medication）とは、
医師の処方箋を必要とし、薬剤師による調剤によって処方される医薬品のことである。
（処方箋医薬品 - Wikipediaより抜粋）

人生においては時々、勇気がいる場面があります。
幼少の頃、ただひたすら拳を握りしめる一方で
涼しげな表情で「全然なんてことありませんけど、何か？」みたいな事を
呪文みたいに何度も繰り返し言い聞かせては自分を奮い立たせておりました。
それしか方法を知らなかったからですが、まったく残念な幼少期。
「かわいいを売りにする」という子供の最大の才能を活用できておりませんでした。
（今でも性格上、そんな上手な事はできないですけれど。）

嫌な事があると、うちの妹ワンコをぎゅーっと抱きしめて
広い大地を汗だくになって（冬は雪を漕いで）駆け回り
時として雪に顔を埋めて「わー」とか叫んだ青い時代。
こうして出来上がった体は、基本的に病気知らずなのですが
いかんせん、心の強さは幼少期と変わっておりません。

猫さんという生き物。
私にとっては初めて出会った記憶のまま、
神々しく手を伸ばしても触れる事ができない
空気のようでいて圧倒的な存在感を残すもの。
そんな神々しい猫さんが私に残してくれたもの。
「処方箋医薬品」が上の説明通りならば、「処方箋猫薬品」に他ならないと
私は今でも思うのです。
猫さんには独自の処方箋があって、それはいつでも、いつまでも効果を発揮する。
ただし、ご縁があった人だけに効果がある特別な薬。

あの子は私が泣いている時、いつもビビって高いところに逃げては
上から泣き止むのをずっと見守ってくれていました。
ところがふとした瞬間に、するりと長い尻尾を腕に絡めて
後ろ向きのまま、私の目の前にずっと座っていてくれました。
彼女が振り向くまで何もせず、ただ黙ってその柔らかい
長い尻尾の感触だけを感じていたものでした。
ただそれだけで、随分と勇気が湧いたのを今でも覚えています。

時が経ち、もうすぐ二年になろうとしています。
今でも時々、歯を食いしばらないと歩けない瞬間に出会い
足が動かなくなってしまう時があります。
そんな時はいつもいつも、彼女の長い尻尾の感触が
足に手に巻きつくような錯覚をおぼえます。
静かな時間、やっぱり立ち止まって何もせず
ふたりで同じ風景を見ているような感覚でいると
決まって聞こえる気がするのは「大丈夫だよ」。

今でも印象的な一枚の写真。
凛とした瞳で上を仰ぐ横顔と、胸を張った美しい猫たる猫の姿。
きっとそんな彼女がいるはずなので
私もぐっと奥歯を噛み締めて、彼女を真似てみるのです。
だって私は、君のお母さんなのだから。
あの子の姿がいつだって私に勇気をくれる。

気が滅入ったら、滅入った時の処方箋。
辛くなったら、辛くなった時の処方箋。
泣きたい日は、泣きたい時の処方箋。
無駄をせず、必要な時に必要な分だけ与えてくれる。
私のあの子は、そういう猫さんでした。

今日も感謝。

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