私が住んでいた頃の蝦夷の地では8月というと
生き物たちも自然も秋の準備を始めていました。
まだ少しだけ日中の暑さも残るものの
徐々に空気が冷たさを帯びる頃。
そうして澄んだ空気をまとってお空の上の
家族やご先祖様をお迎えするのがお盆。
…というのが私の感覚でした。
おかげさまで未だに毎年「季節ボケ」が起こります。
本州では勝手が違って8月はまだまだ気温が強烈ですよね。
気候的な問題含め、毎年お迎え自体はしていたものの
精霊馬さんを作るのは控えていました。
ところが今年に限っては何となく昔の記憶が蘇ってきて
「あ、ちゃんとしないと。」と何故だか思ったのです。
思えば小さい頃から精霊馬さんを作るのは私の役割でした。
そんな訳で三連休は阿呆みたいに慌ただしく
一人室内で汗だくになりながら割り箸を削っていました。
想像すると何ともシュールな絵です。
昨年、うちの子が一周忌で、妹わんこが十三回忌でしたので
お江戸の大きな川で灯籠流しをしてきました。
今年は改めてお盆を迎える事ができるタイミングだったので
尻尾な家族たちがみんなでゆっくりできるように
色々なご飯やお刺身を買い込んで、前日からワクワクして
もう本当に選んでいる時間も準備も楽しかった。
まるで、みんなが生きている頃みたいに
「これ好きかな?」「食べてくれるかな?」
なんて。そういう感覚ってとても
幸せだったんだなぁと再認識しました。
あっという間の四日間。みんなで帰ってきて、還っていく。
私の郵便配達員さんはゆっくり休暇取れたかな?
きっとお土産たくさん泥棒風呂敷に詰め込んで
茜の空を登って行くのでしょう。
本当に、びっくりするほど綺麗な茜色だった。
あの子達は四足歩行なので、牛さんの歩みにしびれを切らして
走り回ったり、疲れたら牛さんに乗っかったりしながら。
見送る空に思い出したのは昨年の夏の事。
毎日毎日揚羽蝶に会いました。
だいたい必ず出社前と退社後の同じ様な場所で出会うのです。
揚羽さんは、少し目の上の方をひーらひらと私の行く同じ方向に
それはもう優雅に楽しそうに舞うのでした。
朝の太陽はまだ日差しもきつくなくて、なかなか気持ちよくて
うっかり仕事をサボって揚羽さんを追いかけてみようか?とも考えたり。
でも、気がつくともうどこにもいなくて、ちょっと不思議な毎日だった。
ある日の帰り道、
あまりにあの子が居ない事がきつくて、帰るのが嫌で帰宅途中に
ベソをかいて立ち止まってしまった私の視界に、黒い揚羽が舞いました。
ひーらひらと目の前を通り抜けて、すーっと上に舞いました。
私の目が黒揚羽さんを追いかけていくと目の前には
青と黄色を帯び始めたどーんと広くて大きな空。
「なに?上を向けって事?」って、思わず笑ってしまった。
きっちり五日間、黒揚羽さんを最後に出勤・退社のお見送りは止まりました。
揚羽さんを代表にトンボさんなどはよく
あの世からの御使い、神様の化身って言われますよね。
風情のない言い方ですが一説によると、
彼らは磁場を利用して移動をしていると言います。
ちょっとスピリチュアルなお話になりますが
お空の皆様自体にも磁場や電磁波があるのだそうで
それに揚羽さんやトンボさんが引き寄せられているというのです。
それらを総じて私が思うに。
不思議と現れた揚羽さんやトンボさんの動きを追いかければ
側に来てくれたあの子がその先にいるという事だと思うのです。
化身や御使いではなくても、その誘導される視界の先に
確かにあの子がいる、という事も言えると思う。
蝶々と追いかけっこ、楽しかったのかな?
そんな風に今を笑って居られるのはきっと
あのへこたれそうだった毎日を
揚羽さんを連れてあの子が来てくれたからだと思います。
だって、なんの能力もなくて見る事が叶わない私の為の
見せる事ができないあの子達みんなの気遣いだったと思うから。
生きるって事は、そういう優しい想いにも応えていくという事。
今年は昨年の優しい気遣いのお礼も含め大奮発してみました。
GWの出勤回数激減で懐はがカッスカスでしたが、心晴れやか。
そんなGW事情のお陰様で仕事は休みではなかった割に
とても楽しくて賑やかなお盆だったと思います。
今年も一緒に出勤してくれた揚羽んさんに、来年も会えたらいいなと
そんな事を思いつつ、お願いしつつ、元気に今年の残りも頑張ろうと思います。

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