①ドキソルビシン(アドリアマイシン)
リンパ腫に対して最も強力な抗がん剤です。副作用の頻度は高くありません
が、嘔吐や下痢および白血球減少が起こります。注射薬であり、投与には 1 時
間程度かかります。
②ビンクリスチン(オンコビン)
リンパ腫に対して、中等度の効果がある注射の抗がん剤です
③シクロホスファミド(サイクロフォスファミド)(エンドキサン)
リンパ腫に対して、弱い効果のある抗がん剤です。注射と錠剤の両方がある
ため、通院が大変な患者様には内服で処方することも可能です。
④プレドニゾロン
抗がん剤ではなく免疫を抑えたり炎症を鎮める薬剤ですが、リンパ腫の細胞
は本薬剤に反応するため、リンパ腫の治療においては抗がん剤として用いられ
ます。ただし、効果はあまり長続きしませんので、通常は治療の初期にのみ用
いられます。
⑤L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)
リンパ腫の細胞が必要とする栄養素を分解する酵素薬です。リンパ腫以外の
細胞には無毒ですので、他の抗がん剤で見られるような副作用が起こりません。
ただし、効果はあまり長続きしませんので、通常は治療の初期など、リンパ腫
で弱った体力を回復させる時期にのみ用いられます。
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プロトコール参照
※9週1クール
ドキソルビシン
時間をかけて点滴で投与しますが、点滴中に暴れて留置針がずれてしまうと危険です。皮膚下にドキソルビシンが漏れると、重度の皮膚障害が起こります。
投与に時間を要するので、半日~1日病院に預けることになります。
副作用は胃腸障害、骨髄抑制、脱毛、アレルギーなどがあります。
•ビンクリスチン
これも血管外に流出すると周辺組織が壊死する危険性があります。
副作用は便秘、骨髄抑制などがあります。
•サイクロフォスファミド(シクロホスファミドなどとも呼ばれます)
副作用として出血性膀胱炎が起こることがあります。その他胃腸障害、骨髄抑制など。
治療後は薬を排泄するために、十分に水分を飲ませて頻繁に排尿させましょう。そのため利尿剤も投与します。
また、これらの抗がん剤では共通して下痢・嘔吐の症状が出やすいです。
ステージ分類
Ⅰ 単一のリンパ節病変
Ⅱ 二つ以上のリンパ節の腫大があり、横隔膜を境にして片側に限局
Ⅲ 全身的なリンパ節病変
Ⅳ Ⅲ期の所見に加えて、肝腫や脾腫がある
Ⅴ Ⅰ~Ⅳ期の病変に加えて、骨髄や節外性の病変がある
サブステージa : 症状なし
サブステージb : 症状あり
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骨髄抑制
抗がん剤投与後4~5日目くらいから、骨髄抑制により血液中の好中球が減少し始めます。好中球とは、体を細菌などから守っている白血球(免疫細胞)です。薬剤によって多少異なりますが、投与後約7日目に最下点となります。この好中球の数が低下している時期には、体が細菌に感染しやすくなっています。
抗がん剤治療中は、好中球数が1,000~2,000/μL(通常の5分の1くらい)まで下がることがあります。好中球数が500~1,000/μL以下になってくると、細菌感染の危険が高まります。好中球が少ない状態で体内に細菌が入り込むと、血液が細菌に侵された状態(敗血症と呼びます)になり、非常に危険です。
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豆知識
・初めの抗がん剤は個体差によって効果が違うので、リスクを避けるために点滴を打って濃度を下げ、おしっ こで排出する。そして半日入院で要観察(二度目以降から入院不要の可能性も?)
・早く効果が出る子は1週目~2週目でがん細胞の減少が見られる。
うまく行けばレントゲンではまったく映らなくなる。
そうなると、とりあえず「寛解」という判断になる。
※ただし再発も速い場合は予後は良くないらしい(問題は寛解後の延長期間)
通常は8週あたりで寛解
※白血病ウイルスがある子は寛解までいっても、他の場所に転移して再発することがある
・レントゲンでは5mm以下の小さな腫瘍は発見できない。
5mm以下の腫瘍はCTなら発見できるが、CTで撮るには猫の場合麻酔が必要になるのでリスクがあり
(グルの場合は再度大阪になるので不可・1クール後に調べる事になるが結果が出ても治療継続)
・寛解する子は早い段階から抗がん剤が効くことがほとんどで、長く生きられない子はどの抗がん剤を打って も効果が小さい。
つまり1週目、2週目で効果が見られない場合は見通しが厳しくなる可能性が高くなる。
・点滴で補えるのはビタミンとかミネラルが中心で、猫が一番必要としているタンパク質や脂質は摂れない
栄養は自分で食べる事
・副作用が出ているということは、抗がん剤が効いているということ。
副作用が強く出ている、それこそ死にかけるくらい出ていると、がん細胞もめちゃくちゃ死んでいる。
完治に向かうと、それなりの副作用も出る。
逆にイベントが起きずに何事もなく治療が進んでしまう子は、一見元気そうなので飼い主としては安心 するが、長い目で見るとあまり良くない。
・転移
白血病陽性は鼻にはできにくい(初期症状「鼻水」「くしゃみ」から、「鼻血」
腫瘍が大きくなると「顔が変形」
腫瘍は肝臓や脾臓にできやすい
再発の可能性として、縦隔型の他にも多中心型と言って体中のリンパのある部分にできる場合もある。
あご、首、脇、足の付け根などにリンパ腫はできやすい。
・副作用
○消化器毒性…当日から2日後に軽い食欲低下と嘔吐→20%~30%程度 ※薬の強さによる
〇骨髄抑制…投与4~5日目から(薬剤によって違うが最下点7日目)
好中球数1000~2000まで下がる事もザラ。ただし1000~500は危険数値(敗血症)
「敗血症」→高熱39度以上が突然出て具合が悪くなる、早期発見で治療可能(1~2日)
抗がん剤投与5~8日目で確率は5~10%
※猫の平熱37.5~38.5度
副作用流れ 食欲不振・嘔吐(初日~)下痢(4日~)敗血症(5日~) あくまで予想過信禁物!!
・血液検査の欠点 腎臓の数値が悪くなった時にはすでに75%くらい機能が落ちている。
・「吐出」と「嘔吐」の違い
嘔吐は胃に入った食べ物を吐くこと。食べ物が消化中の状態で出る。(食べてある程度時間)
吐出は食べ物が胃まで行かずに逆流するので、未消化の状態で出てくる。(食べて即座に吐く)
※猫の胃液は酸が強いので食道を荒らす。何度も吐いていると食道が痛んで狭くなってしまう(狭窄)
吐いたタイミングのメモと嘔吐物の写真を撮っておくと判断に便利
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・肝臓
肝臓疾患の症状は、初期の段階で最も多いものは「無症状」肝臓は「沈黙の臓器」とも言われ
進行するまで症状がなく、健康診断の血液検査で、肝臓の異常に初めて気づくことも頻繁。
進行した肝臓疾患では、体重減少・黄疸・嘔吐・下痢や血便などの症状。
重症膵炎では急激な元気消失と食欲廃絶が認められ
ショック症状など命にかかわる状況になる。
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・消化器毒性…通院目安
グレード1 嘔吐(一日3回以下)下痢(排便回数2回) 様子見
グレード2 嘔吐(一日3~10回・2日で5回以内) 通院・輸液
下痢(排便3以上~)通院・輸液
グレード3 嘔吐(2日以上続く)通院・輸液
下痢(排便6回以上)通院・輸液・入院
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・肝障害 ALT AST
グレード1 上限×1.25(105) 上限×1.5(76.5)
グレード2 ×1.25-1.5(二週間未満) ×1.5-2
グレード3 ×1.5-2(124) ×2-10(92)
グレード4 ×2以上(168~) ×10以上(510)
ただし他数値も必要なので過信禁物
※数値高い時の抗がん剤(ドキソルビシン・ピンクリスチン)50%減量か別の薬
抗がん剤における肝機能障害は抗がん剤の投与量に影響される中毒性とアレルギー性がある。
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〇悪液質とは(人間用データ)
「がん悪液質」とは「がん」が体の栄養を奪い取ってしまってしまい、体の栄養状態が悪化していく様態のこと。「がん悪液質」の発生メカニズムに関しては不明な点が多く、はっきりとは分かっていない。
「悪液質」の定義:「従来の栄養サポートで改善することが困難で、進行性の機能障害をもたらし、(脂肪組織の有無にかかわらず)著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝障害症候群である。病態生理学的には経口摂取の減少と代謝異常による負の蛋白、エネルギーバランスを特徴とする」
原因
主な原因は、生体内の代謝異常と食欲不振によるものと考えらえている。
がんに罹ると、体内ではがん細胞の刺激により慢性的に炎症が起こり、エネルギーや栄養が消費される。それを補うために体内のたんぱく質や脂肪が分解されなど代謝異常が起こり、結果として体力を消耗する。この代謝異常は、主に炎症反応が強く起きている時に分泌される炎症性サイトカインの過剰な分泌によるものと考えられている。これらのサイトカインは「がん」よりもがん患者の免疫細胞から、より多く分泌されることが判ってきている。炎症反応は全身性のものであり、これは「がん悪液質」の特徴である。
悪液質 (人用データもメカニズムが同じなため混合記載)
(人間データ)
悪液質は,脂肪組織と骨格筋の両方が消耗する病態である。多くの疾患で発生し,多くの癌において寛解または病勢制御に失敗した場合によくみられる。一部の癌,特に膵癌および胃癌では,深刻な悪液質を生じる。
悪液質に伴い,化学療法に対する反応低下,機能的能力の悪化,および死亡率の上昇がみられる。
悪液質は,主に体重減少によって確認しやすく,顔面の側頭筋喪失が最も明白である。
(人間治療方法)
治療は癌治療に関係する。癌がコントロールまたは治癒できれば,方法にかかわらず,悪液質は消退する。
カロリー補給を追加しても悪液質は緩和されない。体重増加がみられたとしても通常はわずかであり,筋肉よりもむしろ脂肪組織の増加による可能性が高い。機能も予後も改善されない。そのため,癌で悪液質がみられる患者のほとんどに対して高カロリー補給は推奨されず,十分な栄養が経口摂取できない状況を除いて静脈栄養の適応はない。
※動物用は治療薬なし
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動物データより
医学における悪液質の診断基準
12カ月以内に5%以上の体重減少、筋力低下、疲労感、食欲低下、除脂肪体重低値、生化学データCRP、Hb、Albの異常。
〇悪液質改善・食事療法(ただし個体・抗がん剤治療により担当医相談必須!!)
・炭水化物(ぶどう糖) ↓ 減らす
・脂肪 (量よりタイプが大事) ↑ 増やす
・たんぱく質(癌細胞と健康細胞が取り合う) →適量 (過剰だと癌促進・過少だと宿主消耗)
・アルギニン・グルタミン・n-3脂肪酸 ↑ (サバ・イワシ)
ヒルズn/d
ω3は強化されているがω6との比率の公表なし
ヒルズa/b
ヒルズ猫用キトン(缶)
ロイカナ退院サポート
ω3は強化されているがタンパク質が高すぎる
〇癌患者の栄養補給
・原則・腸が動いているなら利用する(ともかく早く対策する)
給仕期間 数日→経鼻カテーテル
1~2週間→食道瘻チューブ
月単位→胃瘻チューブ
猫は口からの強制給与は極力避ける(限界がある)
栄養チューブからの投薬可能
猫と家族のストレス軽減
※高カロリー輸液
適応
・消化管の機能が不十分な動物
・短期で回復が望めるもの
・腸管の切除手術後など…(ただし長期利用は疑問・通常は一週間)
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特徴1 悪性度が低い<がん>から、悪性度の高い<がん>へ変化していくことがある。
特徴2 <がん>は転移する
•腹腔内腫瘍→肝臓に転移しやすい
•腹腔内以外の腫瘍→肺に転移しやすい
•好発転移のある腫瘍
•前立腺癌→骨に転移しやすい
•肥満細胞腫→肝臓に転移しやすい
特徴3 <がん>は身体にどんな影響を与えるか
•局所では、炎症や大きくなった組織が圧迫することで機能障害を起こす
•腫瘍随伴症候群 (頚部のリンパ節が腫大することで呼吸不全を起こすなど)
•末期には全身症状として 悪液質(炭水化物やタンパク質の代謝変化などが原因で栄養失調から衰弱する)を起こす
特徴4 <がん>で亡くなるということ
•がん性胸膜炎
•がん性腹膜炎
•悪液質
•臓器不全
•大量出血
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血液検査の見方
リンク
https://jsamc.jp/services/clinical_inspection4.html
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◆猫の最期をなるべくラクにするうえで知っておきたいこと
・猫は死期が近づくと、体温が下がる
・猫の体温を下げる協力をする
・体温が低い状態で食事させると胃が受け付けず嘔吐する可能性がある
・体温35度以下は、いつ旅立ってもおかしくない状態
(復活の見込みがある場合は温める)
猫が最後に寒くて暗い所に行くのは、体温が下がってきて
体力の消耗を最小限にしジッとすることで復活するため
(死ぬ準備をしているわけではない)
吐き気を止めるにはつまり体温が下がれば胃も動かなくなり吐き気もおさまるのでは?
動物をみていると、老衰の症状は突然にやってきます。
ある限界に達するまでは全く何の症状もなく、ある限界を越えた瞬間に症状が発生するのです。
テロメアのなくなった細胞が突然細胞分裂を止めるのと同じです。
動物はそのように設計されているようです。
ですから、昨日まで元気だったのに今朝から突然起き上がれない、ということがあるのです。
①温めない。ひんやりした場所を確保してあげる。
②水以外は受けつけない状態なら、無理に栄養を与えない
③枕など、楽な姿勢が取れるように。
④階段などトイレへの経路に気をつけてあげる。
・某獣医ブログ
この子がどうして欲しいか、飼い主さんが考える、出た結果、それが最良の方法。
簡単に決めつけて、目を背けるのは簡単です、楽だと思います。
でもよく見てあげて、よく考えてあげる、
そのことが何よりその子にとって大切な事ではないかと。
獣医としてできるのは、検査や薬の処方だけではなく
この治療や薬の先にどういうことが待っているのか
先をしっかりみてもらうことです。
どの検査でどれだけわかるのか、どの治療でどのくらい楽になるのか
余命が伸びるのか、凄く痛くても完全に治るのか、何ヶ月続ければいいのか
一生続ければならないのか。
同じ方を向いて治療していきたいのです。
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〇最期の時・呼吸苦しみからの解放
死が近くなってくると、気道内の分泌物が増加して
「ゴロゴロ」という音がするようになってきます。
とても辛いと思いますが、この頃になるとペットの意識はもうないの
苦しみからは解放されています
また、死の直前には呼吸の変化も出てきます。
努力呼吸表現するべきぜえぜえとした感じの呼吸が出てきます。
これも、見た目には辛いのですが、この頃にも、意識はなく
苦しみからは解放されています。
でも、聴覚は死の直前まで残ります。体が弱っているから反応できないだけで、
飼い主の呼びかけを最後まで感じ取ることができます
呼吸の状態が変わってしまい、悲しみと驚きでどうしてもうろたえてしまうと思い
ます。
でも、その頃にはペットは苦しみから解放されています。
受け入れることはとても難しいと思いますが、「苦しんではいない」ということを
少し頭の隅に入れてもらえたらと思います。そして、最期まで暖かい声かけを
続けてほしいと思います。
・猫は自分の死期を悟ると、飼い主にいつも以上に甘えたり
最後の力を振り絞って元気な姿を見せるなどの行動をとることが多い(エンジェルタイム)
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副作用
「副作用の種類―「副作用を出さない」工夫」
ペットではヒトと比べて副作用がかなり出にくいのは事実なのですが、使用する薬剤から副作用が出ることもまた事実です。副作用にはどんなものがあるか主な例を挙げてみましょう。
・骨髄抑制
骨髄では白血球、血小板、赤血球が作られているため、抑制が起こると白血球の減少→細菌感染、敗血症、 血小板の減少→点状・斑状出血、赤血球の減少→貧血などが起こります。
抑制を引き起こす強さの度合い、その抑制が薬剤投与後何日で
ピークになるかは薬剤によって異なりますから、
それを見越して血液検査を実施しピーク時の抑制が許容範囲内であるかをチェックします。
ある程度の抑制が起こってもそれは一時的なもので普通時間と共に問題なく正常に回復します。
もし何らかの症状が現れた場合にはそれらについての治療を行い、
さらに抑制を引き起こした薬剤は骨髄の機能が回復するまで投与を中止、
以後も減量する、もしくは薬剤を変更する等の処置をとります。
・消化管毒性
主な症状は嘔吐と下痢です。症状が現れた場合には制吐剤や胃腸粘膜保護剤、
消化管運動調節剤などを使用しますが症状の現れる頻度が高い薬剤では
症状が現れる前に予防的に投与しておくこともあります。
・脱毛
猫ではヒゲが抜けることがあります。
・その他
心筋毒性、腎毒性、出血性膀胱炎、アレルギー反応などがあります。
今まで例を挙げてきた副作用は、軽度なもの(一時的でペットへの影響も少なく回復可能)と重度なもの(持続しており影響が深刻で回復不能)と2種類に分けることができます。
飼主の治療に積極的に協力(投薬やペットの日常生活の管理に関して指示に従う、ペットの状態の変化をよく観察する等)してもらえるならばまず防ぎうる問題です。
それでも重大な副作用が発現してしまった場合には直ちにそれまでの治療内容を変更し、副作用に対する治療を行います。なぜなら、重大な副作用はペットのQOL(生活の質)を低下させてしまい、命まで縮めてしまう可能性があるからです。しかし、軽度な副作用の場合は少し解釈が異なります。
脱毛や、薬でおさまる一時的な嘔吐や下痢と、癌で命を縮めることを天秤にかけてみて下さい。
私たち獣医師は、小さな副作用なら出ても仕方ないなどとは全く思っていませんし、どんな副作用も出さないように最大限の努力を払います。しかし、副作用が出た場合でも、それが許容範囲であれば容認しなければならない場面が確かに存在します。
要は、何が一番大切で、優先されるべき治療の目標なのかということです。この考えからすれば、根治可能な進行度であればある程度の副作用もその都度の対症療法で乗り越えてもらい、まずは完治することを優先するのが必要だろうし、既に根治を望めない段階であれば、一番の目標はできるだけ苦痛や不自由がなく生活してもらうことでしょう。その上でもし癌の進行を遅らせたり症状を軽減させることができるのであれば抗がん治療を実施することになります。しかし、この場合は優先項目がQOLの向上ですから、小さな副作用でも出ないように治療を施さないといけないわけです。
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癌発見・検査の限界
※PETでも5mm以下の癌は発見不可である。また臓器により発見精度に差あり。※犬・猫で3センチ以下の腫瘍を「腹部触診」で触知することは、「至難の技」である。特に、肝臓と胃は解剖学上、通常、触知できない。※レントゲン撮影やエコー検査にも限界がある。(以前に記載した5ミリ以下は映らない)
(PETとは癌細胞に印をつける人間適用検査にて動物には不可)
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緩和
癌の痛み緩和治療
■痛みの治療でよく使用される薬剤
・非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)
カルプロフェン(リマダイル など)
メロキシカム(メタカム など)
フィロコキシブ(プレビコックス など)
テポキサリン(ズブリン など)
・非麻薬性オピオイド鎮痛薬
ブトルファノール(ベトルファール など)
ブプレノルフィン(レペタン など)
トラマドール
・麻薬性オピオイド鎮痛薬*
モルヒネ
フェンタニル
*強力な作用を持つオピオイド鎮痛薬の多くは「麻薬」に指定されており、
麻薬施用者免許を取得した獣医師にしか処方することができません。
麻薬性鎮痛薬を使用した治療を受けるためには、
麻薬施用者免許を持つ獣医師のいる動物病院を受診する必要があります。
■吐き気の治療でよく使用される薬剤
・中枢性(脳に作用して)に、吐き気を抑える薬
プリンペラン(メトクロプラミド など)
プロクロルペラジン(ノバミン など)
マロピタント(セレニア など)
ドンペリドン(ナウゼリン など)
・お腹の動きをよくして吐き気を抑える薬
プリンペラン(メトクロプラミド など)
ドンペリドン(ナウゼリン など)
・炎症に起因する吐き気を抑える薬
ステロイド薬(プレドニゾロン など)
・その他
胃薬(胃粘膜保護剤やH2ブロッカー)、整腸剤 など
■痙攣や神経症状の治療でよく使用される薬剤
フェノバルビタール(フェノバール など)
ジアゼパム(セルシン、ダイアップ座薬 など)
ゾニサミド(エクセグラン、コンセーブ錠 など)
臭化カリウム など
・呼吸困難
胸水や腹水の貯留が原因の呼吸困難の場合は
利尿剤の投与や穿刺(せんし)して貯留液を抜き取る処置
(※穿刺とは体内の液体を除去する目的で注射針などを刺すこと)
重度の貧血が原因の場合には、出血の原因を特定し治療を行ったり、輸血を検討する
・輸液療法
1.静脈輸液
静脈の血管に留置針(軟らかいシリコンの針)を挿入して固定し、静脈に直接輸液剤を投与します。輸液剤はゆっくりとしたスピードでしか投与できないため、必要量を十分に投与するには長時間かかります。そのため、入院(日帰り入院も含む)
2.皮下輸液
どうぶつの背中(肩甲骨と肩甲骨の間あたり)の皮膚の下(皮下組織)に針を刺し、輸液剤(生理食塩水やリンゲル液など)を投与します。比較的短時間でできるため通院(外来)で行ったり、方法を指導してもらって飼い主さんが自宅ですることもできます。皮下組織に輸液剤を一度に投与しますので、投与部位が一時的に水ぶくれのように腫れますが、時間とともに吸収されていきます。入院や通院がどうぶつにとってストレスになると考えられる場合には、短時間の通院あるいは自宅でできる皮下輸液が適しています。
静脈輸液と皮下輸液では、それぞれ使用できる輸液剤や添加できる薬剤、糖分の量などが異なります。
十分な食事がとれなくなった場合に栄養分やカロリーの補給を目的として行われる輸液療法(高カロリー輸液)もあります。この場合の輸液剤には、高濃度の糖分やアミノ酸、脂肪分などが含まれたものを使用します。一般的に高カロリー輸液は、末梢の細い静脈を利用した静脈輸液や皮下輸液で行うことはできず、中心静脈といわれる心臓の近くにある太い静脈に専用のカテーテルを入れて行うため、通常、入院で行います。高カロリー輸液を行うことで栄養的なサポートをしてあげることが可能ですが、ターミナル期のどうぶつには、状態によって無理な栄養補給がかえって身体の負担になる場合もありますのでよく 検討してから行う必要があります。
経管栄養
1.鼻食道チューブ
鼻から細いチューブを入れて食道まで到達させ、留置します。通常全身麻酔なしで挿入できるので、全身麻酔のリスクの高いどうぶつでも設置できるという利点があります。
鼻から挿入するため細いチューブを利用しますので、投与できるのは液体状の流動食のみです。嘔吐したときには食道内でチューブが反転し、口から出てしまうことがあるため注意が必要です。
鼻から出たチューブは頭の上で固定しますが、どうぶつによっては気にしてストレスになる場合があります。通常3日から1週間程度の給餌に利用され、長期間の留置には向きません。
2.食道瘻チューブ
首の横に穴をあけてチューブを挿入し、食道まで到達させて留置します。全身麻酔が必要ですが、内視鏡等も必要とせず、比較的短時間で設置できます。太めのチューブを設置できるため、液体状の物だけではなく、ドロドロにした缶詰やミキサーにかけたフードなども与えることができます。
どうぶつが留置したチューブを気にすることも少なく、ストレスの少ない方法の一つです。食欲が戻れば、いつでも抜去することができます。一般的には数週間から数カ月の給餌に利用されます。
なお、食道疾患のあるどうぶつでは利用することはできません。免疫力の落ちているどうぶつでは、挿入部位の感染に注意が必要です。
3.胃瘻チューブ
全身麻酔をかけ、内視鏡を利用して胃に専用のチューブを設置します。太めのチューブを設置できるため、液体状のものだけではなく、ドロドロにした缶詰やミキサーにかけたフードなども与えることができます。どうぶつが留置したチューブを気にすることも少なく、ストレスの少ない方法の一つです。食欲が戻れば抜去することができますが、設置後2週間は抜去できません。これは、胃壁と皮膚が十分に癒着しないと、チューブから入れる食事が漏れ、腹膜炎を起こすことがあるためです。
一般的には数週間から数カ月の給餌に利用されます。感染や腹膜炎に注意が必要です。
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※どうぶつ本人の意思とは関係なく食事を強制的に摂らせることになる「強制給餌」や「経管栄養」は、「延命ではないか」「余計に苦しむ時間を長引かせるだけではないか」と悩まれる飼い主さんも多くいらっしゃいます。確かに栄養的にきちんとサポートしてあげることは延命につながると思いますが、それがすぐに「苦しむ時間を長引かせる」ということになる訳ではありません。栄養をきちんと取ることは悪液質の進行を遅らせることにつながり、どうぶつの「辛い」「苦しい」「しんどい」という状況をできる限り緩和し、場合によってはそのような状況に陥る時間を短くしてあげられる可能性もあります。
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グル永眠により情報をここまでとします。
少しでも参考になれば幸いです。
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