人は何の為に生きるんだろうか（猫なし長文）

6月20日〜6月27日にかけて、自分の人生の中で1番長くて1番くたびれた1週間だったなと思います。

この1週間は愛知〜奈良への移動、大阪〜奈良への移動が大変な1週間でした。

ウチの兄貴が3年半前に肺ガンで5年生存率を言い渡されていました。
最初は切れるって話だったんですが、動脈か静脈か忘れましたが、浸潤していて切る事が出来ないのか、切っても意味が無かったのか、そんな感じで切り落とす事が出来ず放射線治療をしていました。
奇跡など起きるはずもなく、今年の5月の終わり頃に腎臓転移を確認したようで、余命半年の宣告をされていました。
放射線治療は1度やると同じ箇所に当てる事が出来ない治療のようで、もうやり尽くして出来ないので、痛み止めを打つくらいしか病院にできる事は無いから、最期の時間を家族と暮らしてくださいって事で退院になりました。
ただ、次に痛みが出て入院する事になれば、それは最期の入院であると思って下さいと告げられたそうです。
その話を5月14日に母親から聞いて、じゃあ急変するかも知れんし、6月6日に行くわと言いましたが断られました。
と言うのも、3日前くらいに本人と会ったらしく、車の運転を自分でやって、10キロくらいの米を自分で運んで、ご飯もモリモリ食べて、オレ年内は多分大丈夫な気がするわと言ってたから、お盆休みで良いんじゃない？って話で、ほんじゃあ盆にって事で話が終わりました。

が、5月24日に、まともに過ごせるのは後2ヶ月位やから、７月中旬辺りに変更してくれへん？と連絡を受けました。
じゃあ7月18日に行くわーと連絡を入れましたが、今度は6月16日にもっと早く来てくれへん？
痛みと吐き気でずっと何日も食べれてないみたいやわと連絡が入り、7月4日に変更。
そして、6月21日の朝連絡が入り痛みに耐えれずに6月19日に緊急入院したとの事。
7月4日まで持たないとの事で、じゃあ今から行くわと言いました。
面会時間があるので17時以内に来て欲しいと言われて、公共交通機関ではどの方法で行っても不可能でレンタカーを急遽借りて自分で運転していく事になりました。
到着して母親を乗せて病院へ到着。
到着したら兄貴が変わり果てた姿になってました。
最後に会ったのは肺ガンになって初めて入院した時で、放射線治療の副作用で髪の毛が抜けている状態でした。
それ以外は…まぁ普通の状態と言いますか…
心の中に抱いてる精神だけはわかりませんですが…
と言うのも、自分も29歳頃に若年性肺気腫と診断されて、それは誤診だったのですが、相当絶望の淵に立たされた記憶があります。
楽しい事も楽しく感じず、嬉しい事も嬉しく感じず、ただ悲しい事は深く感じて、苛立つ事も倍以上に苛立ちました。
それは死ぬ可能性をかなり秘めているのに、何に対して笑えと言うのか、何に対して嬉しいと思えば良いのか、何に対して喜べば良いのか分からなかったからです。

兄貴が入院してからその1回限りで僕は兄貴の見舞いには一切行かなくなりました。
かける言葉が見当たらないし、会ったところで、お前は良いよな生きられるんやから的な事を言われたら嫌だなぁと思って行きませんでした。

ただ、死ぬ前にアイツに会いたいって懇願してたから会いに来て欲しいと母親に頼まれて、すぐに行動しました。そういう経緯がありました。

久しぶりに見た兄貴は痩せこけていて、元気もなく、ゆっくり手をあげて、…よう…久しぶりやな…と言ってました。
髪の毛はフサフサにありました。放射線治療を辞めたから生えてきてたのでしょう
それでも、盆くらいで良いのでは？って言ってた頃はもっとふっくらとしていたようで、ここ2週間くらいで10キロくらいの体重が落ちて40キロになってたそうです。
その2週間はほとんど食べ物を摂取せず水だけなんとか飲んでたようで、病院へ行ってないので点滴もせず、栄養を取らずに、数少ない栄養をガン細胞に削り取られて生きてたようです。

色々な話をして、最後に来てくれてありがとうなと言ってました。
帰りに母親とご飯を食べて、時間は既に0時を回った後。
アレはもうアカンな…今週のどっかで死ぬな…
とりあえず電話ちょうだいっと言って、仕事があるので奈良から愛知県まで車で帰りました。
夜勤なので13時頃目覚めるはずですが、10時頃に電話があり、うわ…母親からや…と思って電話を取りました。
もう痛みに耐えかねて先生に眠らせて欲しいと安楽死を頼んだとの事。

もう、おいらと会う事が叶ったのでここに居ても意味がなくなったのか…
とりあえず、レンタカーを1週間延長して、今度は僕の嫁さんを迎えてからなので大阪へ行ってから奈良へ移動。
その前に会社に連絡して1週間休みをいただく。
そして、会いに行くと明らかに昨日より顔色も悪くなっている。
安楽死の方法として、痛み止めの点滴を打つと眠りに落ちていき、そのまま亡くなる事が多いとの事。
それで亡くならないようなら、さらにキツめの痛み止めを打つらしく、それを重ねて死を迎えるらしい。
みんな最期のお別れを済まし、痛みが走ってきたようなので痛み止めの点滴を打ち始める。1本終了。
その時点で兄貴は眠ってしまった。
既にみんな抱き合ったりして別れは済ませてある。
もう１本打てば終わりなのか…と思っていたら、
病院側から今は痛みも落ち着いているようなので、座薬で済ませておきます。との事で帰った方が良いと促された。
…話が違うじゃないか…と僕と、僕の嫁さんと、母親は思った。
兄貴の嫁さんは、私がオッケー出さなければ痛み止めは打てませんって帰り際に言った。
…なんだ、これは兄貴の嫁さんの意思か？それとも病院の意思か？わからん…と、とにかく僕達3人は母親の家に寝泊まりして、火曜日を迎えてまた兄貴に会いに行った。
昨日よりも更に悪くなっている。
…なんか知らんけど生きてるわ…
…痛い…こんなん痛いの見てても一緒やからもう帰ってくれ…と力のない言葉で言った。
しばらくして僕が、今日の所は帰るわ。
また来るからなと言うと、力なく頷いて、悪かったな、気をつけて帰ってくれよと言って眠りだした。
今日も安楽死は無いのか…？
どうなっているのか兄貴の嫁さんに聞くと、1番下の子の誕生日が金曜日なので、その日まで持たすそうですとの事。
その日まで延命したいのは誰がしたいのか…
兄貴か、兄貴の嫁さんなのか、病院なのか…
答えは分からないまま僕達は帰った。
だって、苦しみの中にある兄貴の嫁さんに対して安楽死させるって言ったやんなんて言えるわけがない。ただ、本人は相当痛みが走り続けていて、通常の痛み止めはほぼ効いているように感じない。
僕と嫁さんは大阪に帰って金曜日を待った。
この時点で、僕が葬儀や火葬などに参列できないのは確定。
なんせ会社には月曜日安楽死の話をして1週間突発の休みを貰った。
さすがにこれ以上休んで迷惑をかけれない。
そして、運命の金曜日に母親から電話があり、無呼吸が30秒続いたり脈拍が50まで落ちたりしてるとの事。
会いに行ったら、もうボロボロの状態。
既に意識は無く、目は死んだ魚のように虚な状態で、眠っているけど目は少し開いている。
口を開けてヨダレがダラダラ出ている。
タンが絡んで飲み込む事もできず、ンゴンゴ言ってる。
これのどこが生きているって言うんだ？
なんで死なせてやらん？
兄貴の意思とはあまりにもかけ離れてるじゃないか？僕は思っていた。
母親が僕に言った。今日は1番下の子の誕生日やでー！聞こえてる？って聞いたら、頷いてるような気もするし、カクンッてなっただけのような気もするって。
もうここまで来たら、きっと聞こえてるはずやよとしか言えないし、そう信じたい。

もう自分で口を閉じるのもできないのか？って尋ねると、兄貴の嫁さんが、舌にカビが生えてきてるようで感染してるらしいとの事。
…全く持って理解できん。
何故ここまでボロボロになって生かされる必要がある？
本人の意思はどこにいった？
あの強かった兄貴が身も心もボロボロになってる。
アイツが2日目に僕達を帰したのは、きっと僕にボロボロの姿を見られるのが嫌やったからなはず。
兄弟だからそれだけは分かる。
だけど、これはなんや？何を見せられてるんや？
そうこうしている内に、兄貴が目を見開いてガバッと起きて声にならない痛みを訴える。
…意識は無いはずなのに、それを超える痛みが襲っている。
痛いね、痛いね…すいません、痛がっているんですがと先生に言う兄貴の嫁さん。
…いや、違うやろ。すぐに点滴せえや！と心の中で叫んだけど、さすがに言えん…
母親を病室から連れ出して、アレはなんや？
なんで痛み止め打たんのや？あんなん生きてるって言うんか？って言って、兄貴の嫁さんに痛み止め打つように医者に言ってくれって言った。
そこで、やっと痛み止めに入った。
脈拍が30くらいまで落ちて、不整脈も打ち続けてる。
この点滴が終われば、やっと眠れるな…と思ったら、点滴が半分くらい無くなった所で医者が点滴を止めに来た。
…なんで？どう言う事？と心の中で思った。
分からん。誰の意思なのか全く分からん。
今目の前でずっと泣いてる嫁さんに、さすがよう言わん。
1時間後くらい、また兄貴がそんな状態で痛みで暴れ出した。
ウチの母親が泣きながら、もうええやろ！点滴落として楽にさせたってくれって言って、看護師が駆けつけて、点滴を落とし、5分後くらいに亡くなった。

…何やってんやろうか…
月曜日にウチの嫁さんも集まって、みんなで抱き合ってあのまだマシな状態で亡くなっているのが、兄貴の意思でありベストだったんじゃ無いか？
なんやこのどうしようもなくボロボロになったお前は…
だけど、よく闘った。最後の約束も覚えてるし、おいらの歌も聴いてもらって、まだまだ頑張れよ！お前ならできる！と言ってもらえた。
なんやこのボロボロの姿はって思うと涙が止まらなくて。

嫁さんが確認したところ、医者の判断としては娘の誕生日と父の命日が同じ日やったら、可哀想かと思って点滴を止めて延命を図ろうとしたとの事でした。
…医者のやってくれた事を頭から否定するつもりは無いけど、誕生日と命日が同じ日だったとして何の問題があるんだろうかと思った。
もう言うまい。
短い人生でしたが命を全うして死んだのは間違いない。
その亡骸をとりあえず、家に連れて帰ってドライアイスを敷き詰めていく。
家には猫ちゃんが2匹いて、兄貴の事を凄い好きらしく、兄貴もその2匹に毎日チュールをあげるのが楽しみだったらしい。
2匹とも久しぶりに兄貴が家に帰ってきたので喜んで近づいて、顔を覗き込んでペロペロ舐めている。
猫ちゃんの事を思うと何とも言えない気持ちになりました。
そして僕と母親は帰路につきました。

そして、僕はまた大阪に戻り、愛知県へと車を走らせて帰るのでした。

兄貴が亡くなって寂しい気持ちは有りますが、まだまだ頑張れよって言われたんだから、もうね、やるしかないでしょう（笑）
そういう約束でしたし。

兄貴が亡くなって大きく変わった事と言えば、ダラダラする時間を無くしました。
感性を働かせると言いますか。
自分が死ぬと分かっていたら、おそらくダラダラしないのではないかと思います。
1秒1秒大切な時間のような気がします。
無駄にネットニュースサーフィンしたり…良くやってました。が、辞めました。
そもそも、元々そんなことしてる場合じゃないし。

それは、その人に必要ならばそれを深く大切に捉えると言いますか。
DVD観るにしても、サイコーに楽しんで観ようかなと（笑）
深く楽しんで、深く悲しんで、深く頑張る！
一生懸命、人生を楽しめよって言われた気がするんです。
時間潰しにダラダラ何かをするとか、適当にコレをするって言うのは僕には必要ない気がして。
家族と会話する、猫ちゃんと遊ぶ、小説を読む、漫画を読む、映画を見る、ゲームをする、やる事は何でも良いのですが、しっかり目的や時間に制限を設けてバッチリ楽しむ、頑張る事が重要だなと思いました。
簡単なようで実は難しいんですけどね（笑）

長くなりましたが、
新生、高トーの話でした。