忘備録です。
とある事情で別居のため引越す知人家族がいました。
そのお宅には、外中自由の猫が2匹
常時外で係留飼育の犬が1匹
当初知人家族は、自分たちの安全が第一、と犬猫は置いていくつもりで相談してきました。
少なからず保護活動をしている私としては、どうあっても絶対に連れて出ることを提案。
が、本人たちにそれを出来るキャパがないのも十分すぎるほど理解できてたわけで。
結局、猫は新しい住まいに絶対やっちゃいけない「ペット不可で内緒で飼育」
犬は保護活動仲間の犬もやってる人に何人かあたり、どうにか頼み込んで保護してもらえることになり。
問題はそのワンコ
5歳になるオス、未去勢。
子犬の時はそれなりに可愛がっていたんだろう。
が、ここ2~3年、ほぼネグレクト。
「元々私(奥さん)は犬が苦手。旦那が連れて帰って子どもらが世話をしていた。ときどきは私も散歩をしていたけど、病気になってしまって手に力が入らない。だから散歩すると力に負けてリードを持つことができない。子どもらは部活だの受験だので世話をしなくなった。」
保護してもらう以上、最低限の医療ケアはしてから連れて行かねば。
ワクチンも狂犬病も、4年ぶり。
耳の中と首の後ろ、お腹の脇辺り、マダニでびっしり。
それこそワンコレスキューの動画にでてくるようなマダニ。
肋骨が浮き出て、毛並みはボサボサ。
誰かれないしに吠えまくり噛むこともあると思う、と聞いていた。
会ってビックリのなんて良い子。
「待て!」が私でもできる。
「お手!」ももちろんできる。
初対面の私に吠えかかることもなく、むしろ構って構って!とぴょんぴょん飛び跳ねてくる。
体格からして、15キロは欲しい子。
病院で計ってみたら、11.3キロ。
ガリガリ。
何度も書くが、常時外で係留。
小屋はプラスチックせいのちゃちなもの。
ご飯は誰かが気が付いたときにあげていたと。
お水も空なのに気が付いたときにいれていたと。
マダニ・寄生虫の駆虫薬のタブレットを食べ
診療台にあげるのに先生があげたおやつに飛びつき
注射も問診も、ビシーっとお座りの姿勢でへっちゃらぽん。
ただ、下半身を触られるのを極端に嫌がる。
知人曰く「旦那が酔って帰った時に撫でてて、嬉しくて飛び跳ねてるのがしつこくて、下半身を蹴っていたようなのを何回か見た。」
クソが!
そうだろうなと思ってはいたけど、案の定のフィラリア強陽性。
貧血もある。
終ってご褒美にと、診察を待つ間に息子に買って来てもらった
一番大袋(笑)のジャーキーが嬉しくて。
待て!って言ったら目をキラキラさせて待つ。
よし!ってパクって、もっとちょーだい!ってしっぽぶんぶん。
お腹空いてたんだよね、いつも。
おやつなんてもらったことないんだね。
誰彼なしに吠えるって誰が言った?噛みつくなんて誰が言った?
帰り道、上手にリードウォークできたね。
道すがら、田舎の外飼いのワンコに何回か遭遇したけど
吠えかかりもせず「あ!どーも!」ってな感じで通り過ぎたね。
なんて良い子。
知人の子(19歳)が
「家の中で飼ってやりたかった。でも親父が番犬だから外でいいって。
構ってたら、人を見て吠えなくなるからするなって。
だから・・・・」
ここのお家は周りが田んぼだらけ、母屋と離れと納屋のある大きな古い日本家屋。
知人親子の夜逃げ決行日が、ワンコのレスキュー当日。
夜中なのに吠えもせず、お散歩?お散歩!ってウキウキと知人息子に連れられてきた。
待機していた私がバリケンに入れようと、中にドライのササミを放り込んでみても
鹿肉ジャーキーを入れてみても、絶対入ろうとしない。
頭いいね。
時間もなくなり、どうしようもなかったので知人の子に抱えてもらい
バリケンを縦にしてずぼっと、手足を詰めないように蓋を閉じ。
そのまま車に乗せた。
片道1時間チョイのドライブ中、ワンともスンとも言わない。
一度だけ、クウ~ンと小さい蚊の鳴くような声。
保護先に到着、時間は夜の11時半。
新しい首輪と係留用ロングリードに付け替えて
フカフカの毛布がセットしてある小屋が置いてあってぐるっと囲いのある庭先へ。
半外のスペースの予定だけど、急な展開で準備ができていなかったと。いろいろごめん。
改めて見ると首輪、ボロボロ。
よくこれで千切れなかったレベルのボロ。
お疲れさん、ちょっと何か食べようか、と保護仲間がちょっぴりご飯を出すと
あっという間に完食「え?ねぇ、この子まさか晩御飯貰ってなかったとかないよねぇ?」と。
そんなはずないと思うけど、体がこれだから常に飢餓状態なのかも、とは答えた。
お代わり出すと、またペロッと完食。
レスキュー前日は少し体重が増えて12.5キロ。2週間で1キロ増、まぁいい。
「思った以上にガリガリ、それと臭い。洗ってもらってなかったんだよねぇ、そうだよねぇ。」
保護仲間がため息交じりにワンコを見る。
ともあれ、レスキューのミッションと知人の夜逃げは成功。
その後の連絡がまたがっかり。
「洗ってピカピカにして里親募集することになってたけど、ちょっとストップして。」と。
「散歩に連れて行ったら、ものの10分足らずで舌に強いチアノーゼが出る。
フィラリア強って聞いてたけど、末期に近いんじゃないかな、この状態だと。
30分の散歩なんてさせたら、心臓麻痺起こしてもおかしくないと思う。
あと、この子食糞する。移動したストレスもあるんだろうけど、原因を探るわ。
去勢はこの状態だと麻酔かけられないと思うから、しばらくはできないかも。
こっちで病院行って、もいっかい検査して判断することになる。」
10分足らずでチアノーゼ?
初見のときは気が付かなかった。
「試しにゆっくり15分歩いたけど、途中で貧血起こすんだよ。
歩けなくなって、立ち止まってそこから動けない。
抱っこして帰ったわ~近かったからよかったけどw」
ああ・・・本当にフィラリア末期なんだ。
「うん、多分この子あの場所にいたら1年持つかどうか。
まさみぃさん、グッジョブよ、ナイスレスキューよ、よく助けてくれた。」
嬉しくない、そんなの。
知人親子宅を訪ねると
今回の夜逃げがあーだこーだ、猫がこーだ、足りないものが何と何で
知人親子が口々に私に報告してきて、手伝いを感謝された。
「本当に無事終了してよかった。みんなも私も頑張ったよね、お疲れ!!!
誰も怪我してないし、警察のお世話にもならずに済んで本当によかった。
さて。
でさ、ねぇ?!誰かさ、誰か一人くらい私に聞いて来てよ。
ワンコどうだった?って!!!!」
20歳の長男が
「どうだった?」
保護仲間からの報告をそのまま話す。
みんなそんな重篤な状況だとは思いもしなかったようで、絶句。
当日のご飯のことも聞いてみたら、お互い「あげた?」と顔を見合わせる。
「あげてなかったの?誰も?あげてなかったのね?!」
沈黙が答えだ。
「お父さんがどうだったのか、私も理解はしてる。独裁者だったのもわかってる。
だけど!!それと散歩に行かない、ご飯をあげないのは別問題。
どんだけ理由を並べ立ててもダメ。
お前ら全員同罪!!!みんな共犯者!!
あの子がもし治療が間に合わず死んだら、あんたたち全員のせいだからね!!
もう二度と!!絶対!!犬を飼わないで。
猫も、今回は致し方なくここにいるけど、移動先が見つかったら即移動する。
ワンコに限っては、全員許さないからねっ!!」
情けなさで涙が出た。
もちろん人命第一、無事逃げおおせたのは嬉しい。
知人親子も私も、その点についてはお互いを褒め称え万歳三唱。
だけど、どうしてもワンコのことは許せない。
保護仲間に晩御飯のことを伝えると
「え?!もしかして、まさかねとは思ったけど。
ちょっと待ってちょっと待って。
え?何なのそれ?自分たちが大変なのは分かってるけど
そんな酷い!最後にご飯ももらえずにこっち来たってことよね!
なんでそんな酷い!!二度と犬を飼うなって言っておいて!!!
出来ることなら猫も取り上げてやりたいっ!!!」
電話の向こうで涙ぐんでた。
うん、もう怒鳴っておいたから。
「食糞の原因がわかったわ。今まで貰ってたご飯は多分そこらの激安フードだと思う。
体調整えて体重増やそうねって、グレインフリーのフードや美味しいおやつあげてたから
多分糞の臭いが今までと違ってたんだと思う。
あとやっぱり飢餓状態だったみたい。
いきなり増やすと下痢するかもと思って少な目にあげてたんだけど、足りなかったのもある。
ちょっと量を増やしてあげたら、それで足りて食糞しなくなったわ。
パッと見私は13キロくらいがベスト体重かなと思ったけど
まさみぃさんビンゴね、あの子は最低15キロはなきゃ。」
そかそか、よかった。
ありがとう、本当にお世話になります。
とりあえずこの子は今後1年間は里親募集せずに、じっくりゆっくりフィラリア治療をする。
多分落ちるまでに3年はゆうにかかるだろう。
が、まずの1年が勝負。
保護先でもいい子なんだって。
他のワンコに吠えかかることもあまりなく、去勢してなくても攻撃的でもなく。
ご飯がちゃんともらえると分かったらぴょんぴょん飛び掛かることも減ってきたらしい。
ひっぱりはあるけれど、短時間の散歩は今までの状態を考えると不思議なくらい上手にできる。
こんな扱いされてても、人が大好き。
待てもちゃんとできる。
本当にいい子。
だから余計知人親子に腹が立つ。
事情は熟知してる、同情もする。
独裁者を伴侶に持つと、こうも考えることができないのかと思うほどに。
息子も、知人の子とは幼馴染。
それを考慮してもなお、ワンコのことは腹が立ってしょうがないと。
うちがもうちょっと余裕があったら、うちで保護してしっかり可愛がってあげたいと。
私が出発する時「元気でな、せっかく助けて貰うんだからな・・・」と。
世の中にはもっと酷い虐待を受けているワンコはたくさんいる。
この子はまだマシな方なのかもしれない。
でも、仲の良い知人である分だけ、やるせなさと腹立たしさが込み上げる。
それもこれも、夜逃げが成功したからこその腹立たしさ。
これで失敗していたら、知人家族もワンコも猫も、どうなっていたやら。
そこは喜ぶべきところ。うん分かってる。
この子の新しい仮名は伍作(笑)
ごっちゃんと呼ぼうか
ごっちゃんにこの先とびっきりの幸せがやってきますように。
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