良さげな人?そうでもない人?近寄っちゃいけない人?
容姿は?言葉遣いは? いちいちチェックしては 自分の物差しの中に当てはめていた
自分自身だって、大した人間ではないのに、そのちっぽけな器に他人の計り知れない器量を押し込んでいた
今もその癖はあまり抜けていない
さかのぼる事 5年ほど前の話、オババの知り合いから 連絡があり
可愛そうな猫がいるんだけど、どうにか出来ない?って
その猫が居着いているであろう場所は 書院造のものすごい豪邸
家の回りに竹林があり、太宰治や菊池寛が住んで居そうな 趣ある大豪邸
蔵もあり、一軒家と間違えそうな物置もある
重厚な銅製の扉の下から出入りする猫達
時たま、お手伝いさんの買い物帰りの姿をお見かけしたり、庭師さんがお仕事をするお姿を見る事があったが、家人をお見かけする事も、ましてや話しをする事も無かった
で どうするの 何したいの?と知人に回答を出す様に言葉を投げる

この懐こい子を助けたいって
では 捕獲して 貴方の家に連れて行けば良いのね と言うと
いや違ううちでは飼えない 誰かに飼って貰いたい と
貰って頂ける当てはあるの? というと ない という
話しを持ってきたこの方 本当は優しいのです オババは知っている
でも 優しいだけで見守ってるなんて
何もしない事と一緒だよ と話してその日は終わった
数日後に一枚の写真が送られて来た

散歩に一緒に付いて来るほど人に懐いている、このままじゃ不憫だから、一緒に考えるから助けて と
どうにかしてあげたい気持ちは十二分にあったが、当時のオババの家は書院造の家からの引き上げた子猫がひしめきあっていた
大人の猫の保護には躊躇した
今もまだうちに 残っている子がいる
書院造の家の猫は皆揃って 猫エイズ
せめてもの 気持ちで妊娠しないように
三毛猫に負担がかからない様に避妊手術をしてあげる事しか、思い浮かばなかった
では 有志を募って手術代をご用意下さい
避妊手術は オババが手配します と
お顔はかわいい三毛ちゃんなんですが、なんとも言えない雰囲気が漂っていた
エイズ発症しているだろな という顔つき体つき
おばさん数人で 懐こい三毛猫を囲んで
今後の話を道端でしていたら
そこに 顔見知りでちょっとオラオラ系の女子高生が通りかかった
そのまま通りすぎるのかと思ったら
おばさんたちぃ〜 ゲロ汚い猫囲んで何やってんのぉ? と話しかけてきた
言葉使い悪いな としかめっ面でオババが、今さっきまでの経緯をぶっきらぼうに女子高生に話した
ふーん と女子高生は一言言って
一呼吸置いてから、おばさん達はここに居てもらっちゃあ迷惑なんだね このゲロ汚い猫
かわいいもん、オレが連れて帰るよ と学校のサブバッグにエイズを発症しているであろう、薄汚れて汚い猫を押し込んだ
パックの縁から顔だけ出した猫はこちらを見ていた
女子高生は、そのまま家に向かって歩き出した
あのあのあの と大の大人達が言葉が出なかった事を、昨日の事の様に鮮明に覚えている
最初の約束通り避妊手術の料金は有志の方が出してくれた
エイズ白血病ダブルキャリアで発症もしている
長くは持たないだろう と獣医は言った
それでも 女子高生のご家族はダブルキャリア発症の猫をプリンと名付けて、暖かく迎えて下さった

プリンちゃんに手厚い治療もしてくださった
この出来事の後に多少ヤンチャの格好してようが、言葉使いが荒かろうが
ヤンチャ時代は人生の通過点でしかないんだと少しは思える様になった
時は過ぎて、女子高生は立派な社会人になっていた
あのオラオラ系の姿はなく、見目美しいお嬢さんに変身していた
5年も前のお付き合いだったにも関わらず、プリンちゃんが亡くなったとわざわざ、彼女とお母さんがご挨拶に来て下さった
猫をカバンに詰めこんで、連れて帰った高校生時代から亡くなる最後まで彼女がプリンの治療費を出したのです と
彼女のお母さんが、プリンを連れて来た時には正直困ったなと思いましたが、最後まで面倒を見るという約束でしたからね って
我が子ながら、あっぱれな娘ですと笑いながらおっしゃった
いやいや お母さん あの容姿の猫を家族にしてくれた あなた方ご家族に頭が下がります
お母さん プリンちゃんを背負った、あなたの娘の背中は大きく光輝いていましたよ
誰にでも出来る事ではありません
野良時代のプリンちゃんの写真しか無いが
お前 サブバッグの玉の輿に乗っかって良かったね 幸せだったろう

情が気薄になった人との交わり、知人にさえ荒い言葉を投げかける今の世に素敵な縁がまた結べました
これも猫神様のおかげです
このご縁が永く続きますように
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