突然、父が切り出しました。
「あの時、ナツちゃんに餌をやらなければ。あの後すぐに、飢え死にしたか凍え死にしたかしただろうけど…。その方が苦しまなくてすんで良かったんじゃないだろうか。」
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「そんな事ないべー。ナツちゃん、お父さんの膝の上でまあるくなって、コロンコロンして、幸せそうじゃん。」
「いや、これからよー。これから苦しむべ。」
そうかー。そんな風に考えていたんだ。
ナツちゃんの癌は目に見える場所にあって、どんどん大きくなるそれを、私たちは毎日目にしています。それはグロテスクな肉塊で、皮膚が裂けていつでも血が滲んで、その痛々しさは目を背けたくなります。
だから父も余計にそう思ってしまうのかな。
これからナツちゃんがどれだけ苦しむのか、それはわからないけど。
でも苦しんだからといって、現在が否定されるものではない、と私は思います。
それはブッコさんだってそう。
ブッコさんはダブルキャリア。キャリアでも発症せずに一生を終える子もいますが、確率としては発症する可能性の方が高いでしょう。でも発症して病気で苦しんだとしても、ブッコさんがちゅ~るを美味しそうに食べたり、窓辺やコタツの中でぬくぬくと寝んねしたり、というひとときの幸せが帳消しになる訳ではないはず。
![](/img/diary_image/user_111376/detail/diary_245054_1.jpg?h=3b42a6d2e303be484e1f17a5f58c451e)
「ナツちゃんは人が大好きなんだから。人に見捨てられたまま死ぬより、良かったと思うよ。飢え死にだって凍え死にだって、苦しい事に変わりはないだろうし。」
骨と皮のように痩せて現れたというナツちゃん。必死に助けを求めたのは、人が大好きだったから。
だから、きっとこれで良かった。
ナツちゃんの残された時間は少ないかもしれないけど、それに寄り添えて良かった。
私はそう信じます。
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