そこでしめしめと妻は、職場の保護犬を身請けした。
もともとはポチなんてコンサバな名前だったものが、我が家らしくヌプルと改名され、
私たちは犬と暮らすようになったのだ。
ずっと猫の保護はしていたが、犬の経験はない。これがヌプルの受入で精神的なハードルが下がったのだろう。
認知症を患った女性の飼っている大型犬の、
その扱いが酷いのを見かねて、里親様募集することに。

何しろ結構な老犬具合である。
更に、疥癬まで患って、
もともとは「秋田犬」を見まごうばかりだった(らしい)ものが、毛も抜け落ち、何だかよく分からない姿に…
それでも、受け入れて下さる里親様が見つかった。
で、飼い主の女性から引き出して、
里親様の元へ行くまでの約2週間ほど、我が家に逗留し治療していた。
聞けば、
もともとはその女性の旦那さんが飼っていたのだが、1年程前にその方が亡くなり、
認知を患っている女性は、犬にはあまり意識を向けられなかったようである。
それがために、ちょいちょい脱走しては近所を徘徊していたため、早目に保護する必要があったのだ。

だから、我が家に来て久々のサンポは、かなり楽しかったよう。
老犬なので、10分程度でへばってしまうのだが、気持ちだけは若く、急いで先へ先へ進もうとする。
で、息が切れて「ちょっと待って!」と座り込む(笑)
比べるとヌプルは若く、2時間以上も平気で歩く。彼の普段のサンポは短くても20分程度なので、ペースの違う彼と一緒には連れて行けない。
結果、
彼がいる間は1日4回~5回もサンポしていた。
これはかなり負担ではあった。
それでも、当初我が家に来たときは、
怯えた顔つきで、何かから逃げるような歩き方しかしなかったものが、
柔和な表情で、しっかりとしっぽを振って歩むようになった。
世話することで、ぜんぜん変わるもんだなと実感した。
これからまたシアワセな老後を歩んで欲しい。それは犬猫問わず、縁があった動物全てに思うことではあるけれど。
はてさて、
そんなこんなでバタバタしていた我が家。
いざ、彼を里親様の元へ送り出すと、
途端にノンノのことを思い出す時間も増えた。
7年で身についた習慣とは恐ろしいものだ。
何でもないときでも「のん」とか「のんた」とか「のんちゃん」
なんて呼びつけて、彼女が面倒臭そうに返事して現れるのを待っていたため、
今でも、つい、呼んでしまう。
この位まで夜の気温が下がると、
彼女は必ず私の布団に潜りこんで眠っていたので、
眠るとき、どう眠っていいものか戸惑うようになった。
ときどき、彼女が布団の端を叩くような、
そんな微睡に苛まされる。

小さな小さな我がむすめ。
ボディサイズに似合わず、私たちの気持ちの中では、
その存在はあまりに大きくて、
君がいないこの生活に、まだまだ慣れることができないよ。
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