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避妊、去勢手術済の印、耳に鋏の入つた猫を“桜猫”と言ふ事を、最近知つた。
寧々の耳は、真つ直ぐに鋏が入つてゐた。処置をなさるお医者様によるのだらうか。
寧々は屋内飼ひの、歴とした家猫で在つたのが、突然、飼ひ主に置き去りにされた。
一週間程、扉の前で鳴き続けてゐたのを、隣人が不審に思つて確認すると、五人家族らしかつた寧々の家は、もぬけの殻であつた。
夜逃げだと思はれる。
幸ひ、隣人が寧々を保護してくださつた保護団体の方と知り合ひだつた事から、保護、避妊手術をして頂いて、そのまま地域猫になる予定だつたのださうだ。
「でもね、この子は地域猫は無理だと思つたの。」
団体の方が仰るには、保護した時に既に声が掠れてしまつてゐたのださうだ。
どれだけ鳴いたのか、人が離れると、その掠れた声で、まだ鳴かうとする。
充分に人馴れをしてゐる事、健康でよく食べ、トイレを失敗しない事から、直ぐに譲渡会デビューをさせる事になつた。
その譲渡会で、我が家の次男坊(当時、小三)と運命の出逢ひを果たす。