滋賀県 40代 女性 ブロック ミュート

愛し可愛い12ニャンの母、毎年複数保護しては里親さん探しをしている猫たちの仮母をしています。 「過酷な外の世界に生まれ、そのまま命尽きようとしている子たちを助けたい。どうか生きてほしい、幸せにな...

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人工保育で育ったうちの子紹介
2012年6月28日(木) 1449 / 5

2011年4月13日のこと。

風呂上がりだった22時頃、自室へ戻る為に廊下を歩いていると、中庭の方から子猫の鳴き声がする。
「ミー! ミー! ミー!!」と突き刺さるように聞こえる鳴き声は、まるで悲鳴のようだった。
何処かに子猫がいる! と慌てて、中庭に続く窓を開けた。
夜闇の中目をこらしてよく見てみると、中庭の真ん中に生まれたてとおぼしき子猫がひとりぼっちで鳴いているじゃないか!
春とはいえ夜はまだよく冷える。
気温は10度あるかないかくらいだ。
そんな中を、目も開いていない小さな子猫が必死に鳴いていた。
まるで「寒いよ、たすけて、ママ、ママ」って叫ぶみたいに。
近くに母猫はいない。
本当にひとりぼっちだった。
見ていられず裸足のまま外へ飛び出し、子猫を抱き上げると、掌の暖かさに安堵したのかふと鳴くのを止める。

抱き上げたはいいものの、「どどどどうしよう!?」と慌てたのが第一だった。
生まれた時からずっとワンニャンと一緒に育ってきてはいたが、こんな幼い子猫は始めてだ。
見るとへその緒がまだついている。
被毛も乾きたてのようで、まさに生またばかりの子猫。
どうやら母猫が育児放棄してしまったらしい。
我が家に時々遊びに来る黒猫ちゃんが、妊娠していることには気がついていた。
きっとあの子の子だ……!
黒猫ちゃんは若い子だった。
多分初産だったんだろう。
それで産んだはいいけれど、どうすればいいかわからなくて置いていってしまった。
……そんなところだろうか。

先代の愛猫が病気で亡くなってから、既に4年。
病気にすら気づいてあげられなかった私には、もうネコと暮らす権利などないと思っていた。
だから新しい子は迎えなかった。
同じ悲劇を繰り返したくなかったから……。
現在共に暮らしているのは、三名のわんこ達のみ。
幼少時代から共に生きてきた先代のわんこが亡くなり、私がそれを乗り越えられたのは大人になってから。
その頃我が家に来たわんこ達のことはそれなりの知識を身につけたつもりでいたけれど、にゃんこの事、とくに生まれたての子猫のことなんてまるで知識がなかった。

目も開いていなければ耳も閉じたままで、お腹にはへその緒がついている、本当に生まれたての子猫。
毛色はキジトラ。

このままではいけないと、すぐにあちこちの動物病院に電話するも、時間も22時を過ぎている上、田舎である我が家の周辺には22時以降やっている動物病院などありゃしない。
わんこ達のかかりつけの獣医さんも、さすがにこの時間じゃ電話に出てはくれなかった。
タウンページで調べた結果、夜間診療の動物病院がひとつだけあるけれど、車を飛ばしても片道一時間半の距離だ。往復3時間。そんな悠長なことはしていられない。
早く何とかしなきゃ、このままじゃ弱ってしまうと、比較的近くにあるあちこちの病院に電話をかけまくっていたら、ひとつだけ奇跡的に繋がった。
診療時間はとっくに過ぎていたけれど、たまたま獣医師がまだ院内にいたらしく、電話に出てくれたのだ。

何のかんのとやり取りをしつつ、とりあえず仔猫用ミルクの残りがあるからそれを分けてもらえるということに(人間用牛乳なんぞじゃ駄目なことくらいは知ってる)
それを頂きに、愛車を20分ほどぶっ飛ばしてミルクを確保。アドバイスも色々もらう。
「母親が見捨てた子ですからね。生き延びる可能性は低いと考えてください。一週間……最低でも3日は生き延びてくれれば、希望はあるでしょう」とのこと。
何が何でも生き延びさせるよ、死なせてたまるか! と拳を握りしめる。
体重110gの小さな小さな男の子。
まず保温が一番大切だということで、熱いお湯を入れた2Lのペットボトルを段ボール保育箱の端に置き、更にホッカイロを毛布の下に敷いて(箱半分程度。熱くなったら移動出来るように)、その上に子猫ちゃんを乗せることに。
一緒にもらってきたシリンジで少しだけミルクを飲ませて、落ち着いてくれた所で、寝床をあたためて寝かしつけた。

その後、ネットで子猫育成サイトや人工保育サイトを無数に貪り読み、どうにかにわか知識をインプット。

翌日はたまたま仕事が休みだったので、朝一で子猫用哺乳器を買いにペットショップへ。
戻ってきてそれでミルクを飲ませてみると、グビグビ飲んでくれた。ああ、良かった……!!
下半身を暖かい布でマッサージすると、うんちもおしっこもしてくれて一安心。
三名いる我が家の愛犬達(全員捨て子・保護犬出身)が、部屋の外から「赤ちゃんの声と臭いがするー!」とキュンキュンいいっぱなしだったけれど、「入ってこないでぇぇぇ」と待たせ続ける。
生き延びてくれたら、いずれ仲良くしてもらうから。それまで待っていておくれ、弟達よ。

だが、その日の夕方。
育児放棄の母猫が、もうひとりの子猫も庭のど真ん中に運んできて、そのまま放置して去っていった(現場を見た)
「どうすればいいのかわからないの。後はよろしくね」と言わんばかりに。
仮に寝床の引っ越し作業中なら、こんな所(庭の真ん中。砂利の上)に置き去りにはしないだろう。わざわざ運んできて、置いていくとは。
ママなのに何してるんだぁぁぁ!? と頭を抱え、またすぐに迎えにくる可能性はないかと散々迷った。
けれど迎えはなく、子猫は蹲ったまま。
もうひとりもふたりも一緒だ、何より見捨てておけるかぁぁ! とまたもや裸足で庭に飛び出し、その子も保護。
母猫とそっくりな、黒猫ちゃんだった。
この子は最初の子よりも一回り小さい。
体重は90gしかなかった。
鳴いてる声も少し弱々しい。
ミルクも飲んでくれない。
いかん、これはいかん。
まずは身体を温めてあげないと! と自身の服の中に子猫を入れ、服越しにカイロを当てて擦り続けた。
ある程度暖まったところで、一日前に保護したキジトラくんが眠っているほかほかの寝床へ。
間違いなくふたりは兄妹だ。
まさか兄妹そろって庭の真ん中においていかれるとは、この子達だって夢にも思わなかっただろう。

とりあえず我が家の弟達(愛犬ズ)がお世話になっている、主治医の動物病院(前夜とは違う所)へ電話をして、ふたりを連れていくことにした。
ふたりがスヤスヤ眠る段ボール箱をそーっと助手席に乗せて、箱にシートベルトをかけて、細心の注意を払いながら病院まで運転すること15分。
結果、先生には「生後一日くらいしか経ってないね。でも保護が早かったから、元気だ。順調にいけばきっと大丈夫。少しずつ哺乳器にも慣れてくるだろうから、頑張って!」とエールを頂く。
先生の話では、子供の少ない母猫(この場合、恐らくこの二名)は母性本能が弱いこともある、と。
生まれつき弱い子を見捨てる事もあるけれど、この子達は診た所元気だから、母性が弱くて放っていったという可能性が高いということだった。

あンの、ヤンママめ!(苦笑)

でも、こうなってしまったものは仕方がない。
この子達を死なせるわけにはいかない。死なせてなるものか!
必ず私が元気に育てるんだ……!!

────そんな決意を胸に、その日から私の子育てが始まった。

3時間おきのミルクと排尿等が必要な為、まともに寝られなかった。
休憩時間や仕事の合間にミルクタイム。
睡眠中も3時間おきに飛び起きて、ミルクタイム。
便秘気味かと思いきやふたり揃って下痢になり、心配ごとがある度に主治医の先生に電話をしたり、ふたりを連れて病院に駆け込んでばかり。

初めての子猫。
初めての人工保育。
ミルクを飲んでくれない夜はわんわん泣いた。
「飲まないと死んじゃうよ、ちゃんと飲んでよ……!」って、子猫を抱きしめて泣きまくった。
全てが手探りで、情けなくなることばかりだったけれど、とにかく元気に育ってほしかった。

子猫達に名前をつけた。
キジトラの男の子には、『さち』
クロネコの女の子には、『ゆき』
『幸』という漢字から取った名前だ。
幸せにしたい、幸せになってほしい、この子達に必ず幸せな人生(猫生)を……! という、願いと誓いからつけた名前だった。




生活の全てがさち&ゆき中心になった。
仕事は無論、わんこ弟達のお世話と散歩もしつつ、毎日がさち&ゆきの為の日々。
それ以外、全ての趣味と好きなことを断ち切った。
そうしないと育ってくれないように思えたのもあるし、何より、そうしなければならない状況だった。
「人間の子育てと同じだよ……大変だろうけれどきっと報われる、頑張れ」とは、母の弁。

保温・排尿・排便・哺乳。
手がうんちまみれになっても嬉しかった。
「良いうんちが出たね~」と笑っていた。
掌の中で鳴く子供達の脈動が、ただただ愛しかった。
小さな変化がある度に獣医さんに元へ電話したり、駆けつけたり。
人工保育で育てるのは難しいと聞いていたし、子猫はいつ容態が急変して亡くなってしまってもおかしくないとあちこちで語られていただけに、ちゃんと育ってくれるのか怖くてたまらなかった。

一週間・二週間が経ち、三週間が経つ頃、弟達(わんこお兄ちゃんズ達)との初対面もした。
子猫に優しい14歳の黒ラブ兄ちゃん、おっかなびっくりで飛び回るシーズーコンビ、そのお兄ちゃん達に「あそんで~」と寄っていくさち&ゆき。
ネット上でアドバイスくださった人工保育先輩の皆様は、「子猫時代はあっという間ですよ。育児を楽しんでくださいね」と仰る。
なるほど、楽しむ余裕もいるよなと思い、文字通り手塩に掛けてふたりを育てた。





――――――あれから、一年強。

さち&ゆきは、共に一歳の仲良し兄妹に育った。
人間である私を母として育ったからなのか、初対面の人にも一切の警戒心を持たず、玄関まで「ななーん」、「なん」とご挨拶にいく我が家の出迎え隊。
我が家を訪れる人は動物好きばかりなので、出迎え隊は人気者だ。

やることなすことが個性的で、お喋りで、遊び好きで、肩に昇るのが大好きなさち。
声がとんでもなく可愛くて、控えめで、でももの凄いママっこで、抱っこが大好きなゆき。
ふたり揃って私の行くところ全てについてくる。
トイレの中は勿論、本来猫は苦手な筈の風呂にまで。
わんこお兄ちゃん達のことも大好きで、寝ている兄ちゃんズに「あそんで、あそんで」とてしてしちょっかいを出している。

私の自慢の愛息と愛娘だ。
可愛い可愛い、私の子供だ。

間に病気もした。
高熱を出して病院に駆け込んだり、何日も寄り添って看病したり、毎日がドタバタと走り回るだけの日々だった。
離乳させるだけでも一苦労だったし、頭を抱えたことなんか数えだしたらきりがない。
けれどどうにか、にゃんこのこともそこそこ詳しくなれたと思う。
先代のにゃんこにしてあげられなかったこと、あの子が身を以て教えてくれたことを、この子達に生かしてあげることが私の役目だと思った。
小さな体調変化も見逃さないよう、もう二度とあんなことは繰り返さないように。
膨大な知識を頭に叩き込み、この子達の為に生かす。
それしか出来ないのなら、それを精一杯やるまでだ。




神様のお達しなのか、あれから猫を保護する機会がやたらと増えた。
病気の子を保護して完治させてから里親さん探しをする回数の多いこと。
動物の神様、もとい猫の神様が、私に何かを成せと言っているようなてんてこまいっぷりだ。

大変だけれど、幸せなのだと思う。
たくさんたくさん悩み事があって、現実的にも経済的にもキツイ面もたくさんたくさんあるけれど、可愛い子達が私の傍らでわらっている。
それ以上の幸せはない筈だと、毎日自分に言い聞かせている。


さっちゃん、ゆきちゃん。
これからもよろしくね。
ずっと元気でいてね。

保護猫の母猫&子猫ちゃんズ。
絶対幸せになれる場所を探すから、どうか幸せになってね。

そして高齢のわんこお兄ちゃんズ。
どうか一日でも長く、私と、そしてさち&ゆきと一緒にいてね。

これまで私と共に生きてくれた、先代のワンニャンズ。
たくさんの愛をありがとう。
たくさん色々なことを教えてくれて、ありがとう。
後悔ばかりで立ち止まるより、前に進むことにしたよ。
というより、半ば強引にでもそうなるよう、ワンニャンの神様にきみたちがお願いしたのかな?
前に進んでって、いってくれたのかな。
さっちゃんとゆきちゃんは、そんなみんなから私への贈りもののような気がするよ。
きっとみんなの想いがたくさんたくさん、ふたりに託されているんだろうね。

ありがとう。
今までも、今も、これからも、みんなみんな、愛してるよ。






ここまで読んでくださった皆様へ。
長々とお付き合いくださりありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。
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