送り主は環境省小笠原自然保護官事務所。
ああ……美雨絡みで何か届いたんだなと思い、開けてみると中には立派な筒といくつかの書類等。
筒の中には感謝状が入っていました。
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小笠原の猫の里親になった人は世界遺産である小笠原の自然を保護するのに協力したことになるらしい。
一緒に入っていた小さな冊子は「島ネコマイケルの大引っ越し」という絵本。
小笠原ネコプロジェクトのきっかけとなった猫、マイケルについての話が絵本として描かれています。
これはこちらで読むことができます→http://kanto.env.go.jp/to_2008/0423a.html
なかなか面白いお話なので、興味のある方はどうぞ。
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他にはアカガシラカラスバトをデザインしたクリアファイルやステッカー、ピンバッジ、それに小笠原での動物診療などのパンフレット。
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なるほど……環境保護が絡むとなんだか凄いことになるんだなあ……。
小笠原はこの活動の効果が出て、固有種の鳥の数が少しずつ増えてきたそうで、島の中で島民が飼っている猫も全頭去勢避妊をし、マイクロチップを入れているそうです。
改めて美雨の生い立ちについて考えてみると、この子は生まれて一年足らずの間にいろいろな環境にいたのだなと改めて思いました。
美雨の故郷は小笠原諸島母島。東京から約千キロの距離。父島よりさらに五十キロも南にある小さな島。東京からだと28時間ぐらいかかるので、下手すりゃ外国に行くより大変な場所。
小笠原にいる野猫はなぜか圧倒的に黒猫だそうで(理由は不明)捕獲される猫の40%が黒猫とのこと。
しかも、美雨と同じ白ビキニ猫が多いんだそうです。同じ一族なのかは不明らしいですが、同時期に捕獲された他の黒猫はどれも美雨によく似ています。
美雨が捕獲された場所は、そんな母島の御幸之浜という浜辺の近く。島の中央あたりに位置し、人の住む集落からも遠いところ。グーグルのストリートビューで見てみると、道路の両端は鬱蒼とした森。山の下はすぐに海岸。このあたりで捕獲されたということは、この近くで生息していたということ。
捕獲された時は生後四ヶ月頃。親離れした直後ぐらい。
母猫にいつまで守られていたかはわからないけれど、気温が高く、雨が多く、崖や木々が多い不安定な場所。餌も得にくい過酷な場所でしばらくはたったひとりで生きていたのでしょう。
捕獲された直後はとても痩せており、四ヶ月なのに一キロ弱の体重で寄生虫もいたらしい。
昆虫やネズミ、鳥の雛などを食べていたようです。
捕獲器にかかってすぐ翌日には、船で2時間の父島の「猫待合所(ねこまち)」に送られ、預かり先の病院が決まるまで待機。
美雨が東京に送られたのは捕獲されて二週間後。東京のとある動物病院で、人馴れの修行をすることになり、各種検査を受け、里親を待ちながら病院で四ヶ月を過ごしました。
獣医の先生の話によると、美雨は人馴れが早く、すぐに里親の募集を出したにもかかわらず、長く里親候補が現れなかったといいます。
このまま決まらなければ先生か、病院のスタッフが引き取ろうかという話にもなっていたようです。
病院ですから、ずっとケージの中で過ごしていたと思われます(たまに先生が自宅に連れ帰っていたこともあったらしい)
そして、2月。
美雨は我が家にやってきました。
それまで何度も移動を繰り返したのが幸いしたのか、慣れるのが早かった。
猫にとって移動はストレスです。それを思うと複雑な気分です。
美雨は晴れた日や、夜空が綺麗な日はずっと窓辺にいて空を見上げ、太陽や月の光をよく眺めていることが多いです。
島で見た太陽や、星空を思い出しているのでしょうか?
外の世界には興味をなぜか示しません。一度だけ、洗濯物を干す時にうっかり網戸が開いていて、ひやりとしたことがありましたが、美雨は開いた窓の前にいても、外に出ようとしません。過酷な外の世界には、もう帰りたくないのかもしれません。
生まれて一年足らずで色々大変な思いをしたこの子を、私はずっと大切に守ってやりたいです。
小笠原で捕獲された猫は、基本的に処分されることはありません。里親が見つかるまで、病院や施設がちゃんと面倒を見ています。
小笠原で最初に捕まった猫、マイケルの引越しを提案した獣医さんは最初は殺処分が検討されていたこの猫を生かす方向で考えたのがこのプロジェクトの始まりだといいます。
とても意義のある、良い試みだとは思います。
世界遺産である場所、そしてそこにしかいない固有種を守るため、危険な外来種を排除するための処分。
それを殺さずに生かす選択をしたプロジェクトの方々は本当に凄いと思います。
でも……。
生まれた場所が違うだけで、処分される命がいることを忘れてはいけないと思います。
たまたま、小笠原の猫たちは運が良かったにすぎない。
美雨が母島ではなく、どこかの町中で野猫の子供として生まれていたら?
保護されることもなく、過酷な環境で暮らしていたら?と考えると怖くなります。
殺さずに里親を探す。
こういう試みが、世界遺産の土地や固有種のいる場所だけではなく全国で、民間だけでなく政府主導でも普及するようになることを望みます。
まあ、数も違うし、いろいろ予算もかかるし大変なのでしょうが、少しずつでもやって欲しいなと思います。
感謝状別に送らなくてもいいから、そのお金で街中の保護猫のためにもこういう試みを広げて欲しいなあ……。
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美雨「やっぱりおうちがいちばんいいよ!」
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