その日は私が仕事、旦那がお休みの日でした。
朝はいつも通り愛猫たちに熱烈な別れの挨拶を済ませ、ちょっと迷惑そうな顔に見送られて自宅を出ました。
仕事中も頭の中の半分くらいは猫の事を考えています。
昼休みに旦那から届いた猫の写真を糧に、午後の仕事も頑張りました。
いつもは２～３枚送ってもらうのですが、今回は忙しかったのか1枚しかもらえませんでした（しかも助のみ）
（写真）旦那からLINEで送られてきた日中の助
定時で仕事を終え、バスでまっすぐ自宅へ向かいます。
最寄りのバス停を降りてからも、旦那と他愛ないLINEスタンプのやり取りをしていました。
これによりセナの脱走時間が正確に把握できたという訳なのですが…。
自宅が視界に入ってくると、家の周りをうろつく人影が見えました。
不審者かと思い一瞬身構えましたが、近づいてみるとそれは旦那でした。
何も知らず「不審者かと思ったよ、何してるの？」と半笑いで近づいていく私。
旦那の返答は勿論私の予想だにしないものでした。
「セナが逃げちゃった…網戸があいてるの気づかなくて…」
「は？」
すぐに理解が追い付きませんでした。
逃げたと言う事は家にはいないと言う事で、外にいると言う事は…と、必死に頭を回転させていました。
申し訳なさそうに落ち込む旦那に「とりあえず探さなきゃでしょ」と言い捨てて、ひとまず玄関に荷物を置きに向かいました。
事の顛末は旦那が換気の為に1階の部屋の窓を開けたところ、網戸がわずかに開いていることに気づかず、セナがそこからふいに飛び出してしまった、ということでした。
この時はそれだけ聞きましたが、後で詳しい話を聞いたところ、
窓を開ける→網戸があいていた→セナ飛び出す→旦那セナが出たことに気づく
→助も脱走するという二次災害を防ぐため網戸をいったん閉めて外から回り込む
→外に出てみるとセナが窓から部屋に入ろうと網戸を必死にひっかいている
→旦那の出現に驚いたセナが逃走
と言う事だったようです。
私たちは「セナ―！」と呼びかけながら自宅周辺を歩き回り始めました。
1時間ほどうろついたところで、自宅からほど近い駐車場で少し離れたところを黒い猫がダッシュで横切っていくのが見えました。
「セナ?!」と思わず叫びながら駆け寄りましたが当然追いつくはずもなく…。
以降は2時間の捜索もむなしく、それらしい姿を目撃する事すら叶いませんでした。
自宅に戻ってリビングに入ると、いつもはお出迎えをしてくれる助が、部屋の中をそわそわと歩き回っています。
セナがいない事、私たちのただならぬ雰囲気を感じて不安になっていたのでしょう。
その姿を見てどうしようもなく涙があふれてきました。
（写真）二日前の助とセナ
今朝、仕事に行こうとする私の足元に擦り寄ってくれたセナがいない。
座椅子に座ると足の間に無理やり収まろうとするセナがいない。
もう夕飯時をとうに過ぎているのに、催促するセナの声がしない。
ベッドに横になっても体をピタリと寄せてくれるセナがいない。
家の中にいるだけでセナがいないという現実を次々と突きつけられている気分でした。
その度に涙が止まらなくなり、時に泣き叫び、何もする気が起きずただ無気力に座り込んでいました。
着替えて、夕食を済ませて、お風呂に入って、明日の支度をして、やらなければならないことは色々とありましたが、どうしても動く気になれませんでした。
結局しばらく座り込んだ後は、着替えだけしてベッドに横になりました。
旦那は終始申し訳なさそうに、助は「何があったの？セナはどこ？」と聞いているように鳴いていました。
私はその声を聴きながらセナを思い出しては泣き、泣き疲れては呆然とし、ぼーっとセナの事考えてはまた泣き、を繰り返している内にいつの間にか眠っていました。
こうして脱走当日の夜は終わりました。
ぺったん したユーザ
ぺったん
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