眠れないのではないかと思いつつ、結局それなりに体は疲労していたようでした。
目覚めてもやはりセナがいない事に落胆しながら、私はダラダラと仕事へ向かうための身支度を始めました。
この日も旦那はお休みでした。
仕事場まで車で送ってもらう間、セナを思い出しては涙ぐむを繰り返し、
こんなことではまともに仕事などできないのではと休むことも考えました。
けれど今後どのような状況が待っているかもわからない為、不用意に限られた有休を消費することはできません。
何とか平静を装い、マスクで顔を隠しつつ出勤しました。
不思議なもので、いざ仕事が始まるとスイッチが入るのか、冷静に業務を行う事が出来ました。
パソコンの壁紙は助とセナの写真ばかりで設定していましたが、
さすがにそれは見るのもつらかったので変えました。
仕事をするうちに頭に少しずつ色々な事を考える余裕が出てきた私は、
空き時間を利用して迷子猫の捜索について片っ端から調べ始めました。
やるべきことは何か、必要なものは何か、どこから手を付ければよいか。
旦那も同じことを考えていました。
LINEに保健所と警察と愛護センターに直接届出に行ってくると連絡が入っていました。
彼は午前中、数日前私が助とスキンシップをしている際発見した右頬のしこりを病院で診察してもらうため、
かかりつけの動物病院にも行ってくれていました。
自分が逃がしてしまったという罪悪感から、旦那も必死になって行動しようとしてくれていました。
私は私で、普段パソコンに触れる機会が多いので、あらゆる迷子猫の掲示板に書き込みをし、
簡単なポスターも作成しました。
迷子猫の捜索には情報集めが不可欠、特にチラシやポスターによる目撃情報は重要であると、
どのサイトにもそう書かれていたからです。
対策は早ければ早いほどいい、今この瞬間からできることは全部やろうという一心でした。
（写真）ポスターに使用した写真
偶々脱走する1ヶ月ほど前このような全身写真を撮影していました。
普段あまり猫の全身がはっきりわかるような写真は撮られないかもしれませんが、
万が一の為に（あってほしくないですが）撮っておくことは重要だなと実感しました。
背景を消す等の加工を全く考えていなかったこととそうした手段を知らなかったため、写真をそのまま載せ、
この写真の下に脱走した日付、心配しています、些細な目撃情報でも下さい等赤文字で記載し、
連絡先を載せました。
諸事情があり、連絡先は自宅の電話番号にしていたため、留守番電話にメッセージを残してほしい旨も記載していました。
ポスターが完成した後になってセナの特徴である赤い首輪や鍵尻尾が視覚的に確認できない写真であると気づき、
その部分は文字で特徴として付け足しておき、後日それとわかるもう少し見やすいチラシを作成しました。
（ですが新しいチラシが活用されることは幸いにもありませんでした。）
旦那に迎えに来てもらい自宅に戻ってからは、真っ先に近所の捜索を始めました。
昨日の捜索の際、暗くなってしまっては私たち人間の目に黒猫と黒い影や物を識別することは、
ほぼ不可能であると痛感したからです。
タイムリミットは日没までの約1時間ほどしかありませんでした。
猫の捜索に最適な時間は夜中から明け方だと言われています。
実際セナが食事などの為に活動していたのもそのあたりだと後々わかるのですが、
セナの性格上呼んでも警戒して返事などはしてもらえませんし、暗がりから突然現れて走り去られたら為す術もありません。
私たちは作業効率を考え、出来る時にできる限りのことをと割り切ることにしました。
自宅に戻ってから夕食を食べている間に早速作成したポスターをまずは100枚印刷しました。
夕食を終えた後、昼に旦那が猫のトイレを丸洗いしてくれた時にとっておいた砂をプラスチックの容器などに移し、自宅の周りに設置して匂いがわかるようにしました。
また、残りの砂をビニール袋に入れセナが逃げて行ったと思しき方角から自宅までの道しるべに撒きつつ、
近隣住宅にポスティングをしていきました。
その間も小さな声で（夜だったので迷惑にならない程度に）セナを呼び続けますが、やはり返事はありません。
家に帰ると助が心配そうに近づいてきます。
もう何度目かというセナがいない喪失感に襲われながら、翌日の支度をして就寝しました。
ぺったん したユーザ
ぺったん
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