『もんちゃん、食欲ないし、ちょっと元気がないから、明日病院で見てもらうね』
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本当に、『ちょっと元気がない』
その程度の感覚でした。
食欲がない、とはいっても、ちゃんとおやつには食いついてくるし、嘔吐もなし。
元気がない、とはいっても、私が帰ると玄関までのお出迎えもしてくれるし。歩くときは、いつものごとくご機嫌のしっぽはピンとまっすぐです。
最近寝てる時間が多い気はするけれど、この頃ほんと寒いし。。。
それでも、病院に行こう、と思ったのは、ちょっと気になっていたことがあったからです。
本当に、『ちょっと』。
もんちゃんの、水を飲む量が明らかに増えていたのです。
最近はお風呂場のぬるい水を飲むのがお好みらしく、浴室を開けてとの要求鳴きも少しばかり激しく、その回数も多くなっていました。
ただ、もんちゃんは小さなころから水を飲むのが好きな子だったし、と勝手に軽く受け止めていました。
トイレを掃除する回数も、最近多いなあ、とぼんやり思うだけ。
多頭飼いなので、留守中はだれがどこにしたかわかりません。(我が家のニャンズは母娘のせいか仲良く同じトイレを使っています)
猫飼いとして、多飲多尿は腎臓に問題有のケースだということくらいは知っていました。
けれども、それがどれほど深刻なものなのか、まるでわかっていなかったのです。
なにしろ、もんじゅはまだ5歳。
腎不全という単語は、もう少し先の年齢の猫ちゃんたちが気にするものだと思い込んでました。
最低の飼い主です。
その日、病院で診察を受けるまで、まだまだ楽観的な自分がいました。
『特に悪いところはないですよ』
先生にそう診断してもらって、安心したかった自分がいました。
そこに、思いもしなかった現実を突きつけられるまで。
「多発性嚢胞腎の疑いがあります」
目の前が真っ暗になって、頭のなかは真っ白になりました。
多発性嚢胞腎。
初めて耳にした単語。
先生の説明を聞きながら、事態の深刻さに呆然となりました。
多発性嚢胞腎は、ペルシャ系に多い生まれつきの遺伝性の病気だということ。
腎臓に出来た嚢胞が、成長とともに大きくなり、数が増えていき、正常な臓器の機能を確実に奪っていく不可逆性の病。結果として、腎不全の症状を引き起こしてしまうということ。
治療法はなく、完治しない。今は対症療法しかできないこと。
先生の丁寧な説明と、実際のエコーを見る限り、もんちゃんの状態は決して病気初期のものではないのだということが、私にもわかりました。
正常な腎臓のエコーと比べると一目瞭然で、大きな嚢胞のせいで、腎臓の形がまったくわからない状態になっていたのです。
「もん、ごめんね」
この子に本当に申し訳なくて、自分が情けなくて、治すことができないという事実がどうしても受け入れられなくて、気持ちがぐちゃぐちゃでした。
ちょっと元気がない?
とんでもない飼い主です。
どんなに辛かっただろう、どれだけ我慢していたのだろう。
お風呂場で、水を飲みたいと鳴いていたとき、
膝の上で、やたらに甘えてきていたとき、
『ねえ、なんかヘンなの。体の調子がおかしいの』
この子は、必死にそう訴えていたのかもしれないのに。
呑気すぎた私は、気付くことができなかった。
もう少し、早く気付いていれば。
しっかりと健康診断を受けていれば。
この病気は治すことはできなくても、進行を穏やかにすることができたはず。
何もかも、後悔ばかり。
けれども。
これ以上、絶対に辛い思いをさせちゃいけない。
出来ることは、まだあるはず。
目の前にいるもんじゅは、どう見たっていつものもんじゅ。
そんな病気を抱えていたなんて、本当に信じられませんでした。
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腹立たしいほど不甲斐ない飼い主ですが、この子のために、すべてを捧げようと決心しました。
・・・・と心底思うようになれたのは、10日くらいたってからでした。
病名告知された直後は、本当に何も考えられないです。
お先真っ暗って、このことだったのかってカンジでした。
いい年齢して泣いて、塞ぎ込んで、無理して笑って、また落ち込んで。
同じ病気や腎不全の猫ちゃんたちのブログやSNSを読みあさっては、励まされたり、泣いてしまったり。
いまもまだ、そんな毎日ですが、一歩一歩、進んでいきたい。
色々と情報を集めて、勉強して、自分なりに考えて、ちょっとでももんじゅの猫生を幸せなものにしてあげたい。
そう思います。
大好きだよ、もんじゅ。
来月4月12日で、6歳。みんなでお祝いしようね。
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「たんじょうびは、ちゅーる、いっぱいたべていい?」
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