
父はトラ猫のちゃめをひいきにしているが、ちゃめのほうも父に一番懐いていて、少々大げさに言うと、もう片時も離れたくないというほどである(実際には、ベランダなどで自由気ままに遊んでいるときもある)。
父が二階の居間へ来て、なかなか下の自分の部屋へ戻らないときなど、ちゃめが迎えに来る。階段へ続く扉の前に座って、早く戻ろうよとじっと見つめている。父が留守をすると、どこへ行ったかしらと探し歩いて、見つからないとつまらなそうにしているから、ちゃめのことが気にかかって、父はなかなか長時間家をあけることが出来ない。
そんなちゃめのために、父は、買い物かごを少し浅くしたような手提げのついたかごに座布団と毛布を敷きつめて、移動式ベッドを作った。さすがに外出にまでは連れて行けないけれど、二階へ来るときなどは、ちゃめの入ったかごを手に提げて上ってくる。テーブルの上にかごを置くと、ちゃめは毛布の下から顔だけをちょっと出して、丸い目をしてあたりをうかがっている。
相思相愛の二人であるが、移動式ベッドの中で気持ちよく眠ったちゃめは、父が眠る頃にすっきり起き出して、寝ている父の身体の上を足元から胸のあたりまで歩いてみたり、ドライフードの入った箱をひっくり返してじゃらじゃらと大きな音を立てたりするから、父はこのところ寝不足気味である。
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