飛び出した僕に大きな塊が突進してきて、それから僕は、全身が痛くて動けなくなった。
痛いよ…動けないよ…逃げられないよ…
かあさん… 長老… にいちゃん… … … みんな……
僕はいつか長老が言っていた言葉を思い出していた
ぼうず、おまえにも、わしらにも、これから何が起こるかわからないんだよ。今は元気に木登りもかくれんぼもできるがの…
悪いカラスにつつかれるかもしれない、いつ捕まって閉じ込められるかわからないし、尖った武器で襲ってくるヒトもいるんじゃ…中には、いつもごはんをわけてくれるあのヒトみたいにいいヒトもいるし、そういうヒトの中にも自分のウチにわしらを閉じ込めるヒトもいるんじゃよ
お前はな、何があっても生きるんじゃよ 戦っても、媚びても、なんでもいい
生きることを優先するんじゃよ…
僕はたぶんあの日長老が言っていた危機に落ちていた
生きるにはどうすればいいんだろう…
生きる……僕は大声でかあさんを呼ぶことしかできなかった。
「かあさん、かあさん、痛いよ 動けないよ 助けにきてよ」
さっきの大きな生き物と同じやつが道の真ん中を猛スピードで走っていく。
またあいつに襲われるかもしれない。
僕はあいつに突進されて、道から隅っこに押し出されて かあさんを呼んでいた。
ずいぶん時間が過ぎたような気がしたけれど…かあさんはこなかった
代わりにヒトが二人、僕を覗き込んでいた
一人は小さめで、黒毛がクルクルしていた
もう一人の少し細い方は、茶色いまっすぐな毛だった
茶毛が僕を捕まえた!
痛い!離せ!
僕は まんまん 泣いたけど、痛くて抵抗できなかった。
茶毛は僕をクルクルに渡し、クルクルは僕を抱いたまま、さっき僕にぶつかった塊と似た、白い大きな生き物の口の中に入っていった
彼らはどうも、そいつを動かすことができるらしい…
僕はどんどん、元いた場所から離れていった
かあさんがどんどん離れていくのが悲しくて、僕は まんまん 泣いた
彼らは僕を連れて大きな建物に入っていった
そこにはまっすぐな壁があって、屋根もある
眼鏡で黒毛で白い体をしたヒトが現れた
僕は、茶髪とクルクルと別れると、台にのせられ、すると、なにやらカチャカチャ音がした
奥からなにやら、鳴き声がする
そこはなにやらとても怖い場所だった
細い針のようなものを刺されたるとなんだか気が遠くなった
長老の言葉を思い出していた
ヒトにはいいヒトと悪いヒトがいるんだよ
いいヒトかどうかは見ただけではわからない…
だから…わからなかったら逃げるんじゃ…
なんだか不思議な気分だ…
あんなに痛かったのに…
今はジンジンして、しびれて、その代わり、痛みはよくわからなくなっている…
茶髪とクルクルはなにやら組み立てている。
檻ができあがった
しまった!
二人は僕を閉じ込める檻を組み立てていたんだ!
僕は檻にいれられると茶髪は僕のアタマを一回撫でて、見えないところに行ってしまった。
クルクルが僕の様子を心配そうにじっと見ていた
クルクルはだいたい決まった時間にゴハンをもってきてくれる
いつももらっていたあのゴハンとは少し味が違うが美味しかった…僕は長老の言葉を思い出し、与えられたゴハンを食べた
きっと食べないと生きられない…ここから逃げることもできない…
元気になって動けるようにならないとかあさんに会えないんだ。
クルクルはあまり僕に触らないけど、優しそうに見えた…
檻の扉が開けられた
見たことがないヒトがいる 今度はまっすぐな黒毛…
僕を膝に乗せてアタマや体を何度か撫でた


なんだか気持ちよくなって僕はゴロゴロ喉を鳴らすとかあさんにするみたいに前足で何度もそのヒトを押した

今、僕はそのヒトと、その家族と一緒に暮らしている…


*もうすぐコタロウと私が出会って1年立ちます
未だにわからないことや迷うことが多いです
このコを引き取ったばかりの頃は私は迷ってばかりでした
このコに何が起こったのか具体的には知りません
保護主様に聞いた話を頼りに当時の私はいろいろ想像を膨らませていました
勝手に長老と兄ちゃんと餌やりおばさんを登場させたりして…
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