僕はあきらめないよ…
きっとここから逃げ出して、
アニキと木登りしたり…
長老に狩りの穴場を教えてもらうんだ…
約束どおり、かあさんにたくさん獲物を獲っていってあげるからね…
僕はまた、茶毛に小さな入れ物に入れられ、白い大きな生き物に乗せられることになった。
白いのの外でクルクルが心配そうに僕を眺めてなにか言っていた。
外は真っ暗だけど僕にはよく見える。
外の景色は僕が見たことがない場所だった。
白いのは僕たちを胃の中に入れたまま、猛スピードで走り、あっという間に、また知らない場所に連れていかれた。
前にいたところよりも、明かりが少なくて、ずっと真っ暗な場所だ。
僕は怖くて怖くてガタガタ震えていた。
白いのが止まった。
僕は入れ物に入ったままそこから出され、茶毛は僕を連れて、小さな建物に入っていった。
こないだやってきて僕を膝に乗せた黒毛が現れた。
茶毛は前と同じように、僕が今まで入っていた檻を手際よく組み立てると、あっというまに前と同じように檻にいれられた。
同じ檻の中からでも見える景色は全然違っていた。

僕はやっぱり怖くて怖くて まんまん 泣いた。
でもわかっていた。
ここは、かあさんや長老や、にいちゃんがいたところから遠く離れている…
どんなに泣いたところでもうかあさんは迎えにきてくれないだろう…
黒毛は檻の外から僕のアタマを撫でようとしていた。
指しか入らなかったので、指先で僕の額をちょんちょん触るみたいになっていた。
何度もそうやって僕に触ろうとした。
僕はただただ怖かった。
しばらくすると茶毛は行ってしまったようだった。
黒毛ともう一人、大きなヒトがいる。
こちらは頭がチリチリしている。
チリチリは先にこの場所からいなくなって黒毛が離れたところでなにやらいろいろやっている。水の音がする。
僕は まんまん泣きながら、周りを見渡した
檻は周りが壁に囲まれた小さなスペースにはめ込まれた

上を見上げると、前は檻には蓋がされていたが、今度は蓋が開いていて、上の板との間に少しスキマがある。
もしかしたらここから逃げられるかもしれない…
今は疲れてしまったので、もう少し元気が出てから決行しよう!
しばらくすると、黒毛が檻の外から僕を指で触って、なにやら言っていたが、しばらくすると、誰もいなくなった。
天井のスキマ…
僕の体なら通るだろう…
足が痛い…
でも、チャンスは今しかないかもしれない…
僕は勇気を出して、檻をよじ登った。
案外簡単に脱出できた!
逃げよう!
かあさん、待っててね…
僕は周りをぐるっと見回した。
少し、登らなければならないけれど、外を見渡せそうな窓がある…
足は痛かったけれど、僕はそこに登ることにした。
外は真っ暗だったけど、なんとなく見える。
見たこともない景色…
この窓から外に出ることはできないらしい。
一周回って開けることができそうな出口があることに気が付いた。
痛くないほうの前足と鼻先をスキマに押し込んで、戸を右に押し出すと、重い戸が滑り出した。
なんとか自分が出ることができるだけ、戸を開くと、そこには段々があった。
たくさんの段々がずっと下まで続いている。
段々を飛び降りるのは少し痛そうだけれど、ここを降りれば外に出られるかもしれない…
僕は足が痛いのを我慢して最後まで段々を降りた。
壁と戸に囲まれたそのスペースはそんなに広くない。
向かいの戸の向こうから明かりがもれてきて、水の音が聞こえる。
きっとそこに黒毛とチリチリがいるに違いない。
見つかったらおしまいだ…
僕は音をたてないように厚い扉に近づいた。
この向こうが外だと思った。
そこはなんだか涼しかったし、向こうに違う空気が流れているような気がした。
僕は何回か扉を押してみたが、扉はびくともしない…
そうこうしているうちに、明かりのついていた方の戸が開いて、周りが明るくなった。
僕は飛び上がりそうになったが、見つかったらおしまいだと思って息をひそめた…
黒毛が出てきた。
濡れたアタマを布で拭きながら、さっきボクが降りた段々を登って行った。
またあたりは暗くなった。
やった…
見つからなかった…
でもどんなに押しても扉は開かない。
あきらめるもんか!
また明るくなると、黒毛がものすごい勢いで降りてきて、きょろきょろし始めた。
僕のことを探しているんだ!
僕はまた息をひそめた…が…
なんなく黒毛に見つかった…
*白いの…保護主様は白い車に乗っています
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