長吉の顔だけで約二週間もかけてしまった。
ヒカルくんも長吉も同じブラックスモークの子だが、毛色のパターンは似ているようで違う。
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お借りした眠っているヒカルくん。
この写真を元に眠っている顔を作った。
この写真の色味は電球色で若干セピア色っぽく見える。
しかし、この写真の色で作ると、殆ど黒猫のような感じになってしまうので、自然光の色が出ているこちらの写真を参考にした。
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ヒカルくんはブラックスモークとしては混ざりの色が少なめに見える。
いくつかお借りした写真を見ても、室内で撮影された者は、黒がが勝ってる感じなので、自然光の方が、よりそれっぽくていいなと判断した。
対して長吉は、縞模様がはっきり出ていて、同じブラックスモークでも黒の成分が少なく、黒い部分も赤みがかっていたので、電球色ではセピア色に見える子だった。
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もっとも私が気に入っているこの写真の色味を元にできる限り「見た通り」に再現してみたかった。
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そして、なんとか顔ができた。
最終仕上げの時にもう少し黒を上から被せようと思うが、目の上の薄い茶色がかった部分や、目の周辺の赤みがかったところ、鼻周りの薄いグレー、ところどころに入るランダムな縞模様など、今の私にできる限りで再現してみた。
作ってる時は殆ど執念だった。
普通、植毛は広い範囲でザクザク植えていくが、この子の場合はひとふさ単位で丹念に植えた。
植えては切り、また植えては切り。
微妙に色の違う部分にごくわずかな毛束を差し込んで、周りの毛と混ぜて、またその側に違う色を差して混ぜての繰り返し。
なんども写真と見比べ、違和感のあるところは徹底的に直した。
作業中、殆ど疲れは感じなかった。
「何かが乗り移ってるみたいに鬼気迫る感じで、作業中は声をかけられなかったよ」と主人に言われた。
それほど私は集中してたのか……全然気づかなかったw
もちろん、まだまだ似ているとはいい辛い。
残念ながら今の私の技術ではこれが限界。
もっと似せる方法がきっとあるに違いないが、それはもっともっといろいろ作って腕を上げていかなければ、その域には到達できないんだろうと思う。
でも、出来上がった時、涙が出てきた。
しばらく涙が止まらなかった。
去年作った時はそんなことなかったのに。もっと淡々と作ってたのに。
ああ……やっとあの子が帰ってきた……。
そんな気がして仕方がなかった。
完全にそっくりとは言えないけど、今の私の持ってる腕で最高の出来にしたよ。
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さあ、長吉、ヒカルくん。
これから君たちにぴったりの体を作ってあげる。
もう少しだけ、待っててね……。
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