まだ温かく柔らかいまるを家族全員で代わる代わる抱き、猫ベッドに寝かせて、私の布団の隣でまるは一夜を過ごした。
翌朝、動物専用炉がある隣市の斎場に電話をすると、その日の午前10時なら予約できる、と。
隣市なので9時には出発。
棺のことを一晩中考えていた。
たとえ安置して荼毘に付すだけの箱だとしても、まるのためにやれることはやってあげたい。
そう思い、私は1つの案を思い付いた。
無理を承知で朝早くからヤマト運輸コールセンターに電話をした。
私はAmazonヘビーユーザーなので、毎回同じドライバーさんが届けてくれて、話をしたりジュースをあげたり、仲良くしてた。
顔馴染みのドライバーさんから直接電話がほしい旨・段ボールを届けてほしいことをコールセンターに伝えると、間もなく8:30に担当のKさんから電話が来た。
「コールセンターから、クロネコヤマトの段ボールを届けるよう聞いてるんだけど、いつもの11:30頃になるなぁ」
「Kさん、9:00頃は無理?」
「んー難しいよ、どうしたの?何か急ぎ?」
私は泣きながらKさんに話した。
「Kさん、昨夜愛猫が亡くなったの。この間Kさん言ってたじゃない?
『最近Amazonの配達、個人の配達の人が参入してるよね、最悪みたいだよ。遅配、置き配当たり前だとか。自負する訳じゃないけど、ヤマトの物流システムは最強だよ。日時時間指定厳守、誤配も遅配もない。』
って。
だからね、愛猫の棺をヤマトの段ボールにしたいの。そしたら、確実にあっちに届けてくれるでしょ?
でも、あと30分なんて無理だよね…」
と言ったら、急に早口でKさんが話し始めた。
「そういうことなら、これからすぐ持っていくよ。8:45には届けるから!」
と。
Kさんはその時間に段ボールを持ってきてくれた。
お金を払おうとしたら、
「僕からのプレゼント」
って。
号泣しながらお礼を言って受け取った。
でも、よくよく考えたら、彼は出勤が8:00過ぎ。
すっ飛んで来てくれたのが8:45。
彼は、いつもなら荷物をトラックに積んでいる時間だ。
そう、彼はトラック空っぽで、まるのために段ボールだけを積んでここまで届けにきてくれたのだ。
「猫砂、餌、あれこれニャンコのもの沢山届けてるしさぁ」
と照れ笑いしながら段ボールを差し出してくれた。
ヤマトは時間指定厳守。
彼は再び営業所に戻り、私の為にロスした分急いで荷物を積んだのだろう。
そんな事を考えたら、嗚咽が止まらなくなった。
にゃんにゃんトラックの棺がまるを包み、斎場へと出発した。
願掛けみたいなものかもしれないけど、この棺なら、迷うことなく虹の橋に届けてくれるだろう。
誤配も遅配もなく、確実に届けてくれるだろう。
天下のヤマト運輸に力になってもらい、まるはまるでVIP待遇。なんて幸せな子なんだろう、と思った。
まるが与えてくれた、人間同士の温かい心。
あれから買い物をする気力もなくKさんには会っていないけれど、そろそろ猫砂も注文するから、その時は笑顔で挨拶できるかな。


最近のコメント