自分で家を決めた猫

2019年3月26日(火) 440 / 12

友人は昔、猫の預かりボランティアをしていました。

友人の知り合いが預かりボランティアをしていたのがキッカケでした。

ある日、友人の家に新たな預かり猫がやってきました。

前の飼い主に飼育虐待をされていたところを助け出された猫でした。
成猫のキジトラ、大人しいオス猫です。

友人はこのオス猫にマルという仮の名前をつけました。

友人は結婚していて、子供もいますが家族みんな猫が大好きです。
マルは人が好きな子でしたが、甘え方を知らない子でした。
気が小さく、人の顔色を伺いながら生活する子でしたが、友人の家に来てから遊んだり人と一緒に寝たりと少しづつ明るい猫になっていきました。

マルは預かり猫だったので、定期的に開かれる譲渡会にも参加していました。
いつも友人宅までボランティアさんが迎えに来て、譲渡会に参加し、そして送ってもらっていました。

しかし、成猫のマルにはなかなか新しい飼い主さんが決まりませんでした。

マルを預かりはじめてから３ヶ月が過ぎた頃、友人家族はマルが参加している譲渡会を覗いてみることにしました。

会場の中には１０匹ちょっとの猫たちが色んなケージの中にいて、見に来たお客さんも数組いました。

会場のケージの中でずっと寝ているマルの姿を発見。

「マル〜〜。」

友人の声かけで目を覚ますマル。

とたんに嬉しそうに鳴き出しました。

友人家族がマルに話しかけたり撫でたりし、そしてしばらくして帰ろうとしたとき、急にマルが大きな声で鳴き出しました。

「ニャーーーー！！！ニャーーーー！！！」

それは置いていかないで！と言っているかのような大きな声でした。

友人家族はマルをあやそうとマルの元へ行った時、驚くことが起こりました。

「うるさい！静かにしろ！」と、ボランティアの人がマルを叩いたのです。

友人は「やめてください！叩かないでください！」とボランティアの人にいいました。

叩かれても鳴くのをやめないマル。

しばらく鳴いて叩かれたマルは、ケージの中でジッと座っていました。
とても悲しそうな目をしていました。

叩いたボランティアの人は自分の立場が気になったのか、その後取り繕うかのように何かを言っていたようですが、友人の耳には入ってきませんでした。

そんな譲渡会のあったあと、しばらくして友人家族はマルを自分の家族として迎えました。

マルはこの家で暮らしたいのかもしれない・・・・友人家族は譲渡会でのマルの姿を見て思ったそうです。

それと同時に叩かれたマルを見た時、自分の家族が叩かれたようでとても悲しかった。

友人は、預かりボランティアを辞めました。

今、マルは会いに行ってもとても幸せそうです。

マルはどの家でもないこの家族と暮らしたかったに違いないと私は見ていて思います。

1日でも長く、幸せに暮らせますように。

マルを叩いたボランティアさんは、まだボランティアを続けているそうです。

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