
(注意:ネタバレあります)
猫の本があるとついつい手を出してしまうのと一緒で、子供に買ってやる絵本も、いろんなものを万遍なくと頭では思いつつ、やっぱり猫の絵本が多くなってしまう。
「ともだち」(文:松谷みよ子、絵:渡辺三郎)も、アマゾンで出ていたのを、すぐに買ってしまった。
港町に住む青い目の猫は、自分の目と同じ青い色をしたインコと友達になりたかったのだけれど、インコが飛んで逃げてしまったのでその後を追いかけて行って、インコと一緒に外国行きの船に乗り込むことになる。船の中で猫とインコは仲良くなるのだが、あるとき、船がインコの故郷の島のそばを通った。小鳥がたくさん飛び交う小さな島にインコは帰りたがる。猫は決心して、鳥かごを倒して逃がしてやるのである。猫にとってインコはたった一人の友達だったけれど、その友達のために、猫はそうするのが一番いいと思った。
「ふねは あおい うみを どこまでも はしっていきました」最後のページに描かれた、広い海の青い色が、心に沁みるようである。もう、水平線の向こうに小さくなってしまった、猫の乗る船。
松谷みよ子さんの文はもちろん、渡辺三郎さんの描く、猫の青い大きな目が悲しみをいっぱいにたたえていて、忘れられない。猫の目の色、小鳥の羽の色、海の色。その青と同じくらい透き通っていて、美しい物語である。
最近、年のせいかやたら涙もろくなって、子供に読んでやりながら、声が震えないようにこらえるのが大変である。息子には、まだ青い目の猫がとった行動の本当の意味はわからないのだろう。読み終わるとすぐ、次はこれを読んでと別の本をもってきたが、今度はストーリーに起伏のない汽車の本だったので助かった。
だけど、草原をどこまでも走っていく汽車の本を音読しながら、たったひとり船に乗って、知らない土地へと向っていく猫の孤独を考えたら、どうしようもなく切なくなって、やっぱりちょっと泣きそうになった。
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