
ちゃめとはしょっちゅう顔を合わせているのに、なぜかなかなかなついてくれない。鼻のまわりとか首の横をちょっと撫でるくらいなら触らせてくれるけれど、頭や背中を撫でようとすると、ひょいと私の手を避けるように姿勢を下げて向こうへ行ってしまう。もともと、あまり触られることが好きな猫ではないみたいだが、一番お気に入りの父には、顔や頭をこすりつけたり、背中を丸く山型にして撫でられたり、非常に馴れ馴れしいから面白くない。もしかしたら私には、大嫌いなみゆちゃんのにおいがついているのかもしれないなどと思う。
それがある時、一階の屋根の上で寝そべっているのをベランダから呼んでみたら、にゃあ、と返事をして立ち上がると、こっちへ歩いてきた。呼んで来るということ自体が珍しいことで、何となく今日は触れそうだと思っていたら、案の定、私に寄って来てくれて、あごの下を撫でるとうれしそうに目を細めて首を前に伸ばし、頭を手に預けた。おそるおそる背中を撫でてみると、やっぱり逃げないで、ベランダの手すりの上で腹ばいになって、ごろごろと喉を鳴らしている。ようやく、私がちゃめびいきの父の血縁者だとわかったのかしら、などと思い、気を良くして、さらに機嫌をとっておこうと、飾り棚に仕舞ってある竿の先にネズミのついたおもちゃを取り出して来て、遊んであげた。(ちゃめは、このネズミのおもちゃが飾り棚の、ガラス戸のついた二段目の棚に入っていることを知っていて、よく取っ手に足をかけて立ち上がり、中を覗き込んでは、振り返って母の顔を見て、「遊んでほしい」とにゃーと鳴く。)
ようやくちゃめと仲良くなれたと思っていたのだが、それが次に会ったときには、半ば予想してはいたけれど、やっぱり前と同じ、撫でようと思ってもそっけない態度である。猫心って、わからない。
最近のコメント