
くぅちゃんが来た日のことは、とても鮮明に覚えています。
初夏、カイくんを引き取った私は、夫婦で経済的に余裕があること、また、里親を必要としている猫ちゃんの手助けになればと思い、多頭飼いすることを決めました。
しかし、早速地元の保護猫団体のホームページを見て、連絡を取った私に返ってきたのは、予想もしていなかった言葉でした。
「障碍者には猫は飼えませんよ。猫は譲渡できません。」
私はもともとグラフィックデザイナーとして10年仕事をしてきましたが、ハードワークで精神を壊し、精神障碍者2級の手帳を持っています。
保護猫団体のヒアリングの中で、そういう理由で現在は休職中であるという旨を情報として話したところ、こちらの現在の状態や先住猫であるカイくんの飼育状況も一切確認されないまま、その冷たい一言でやり取りは終了しました。
電話が終わってから沸き起こってきたのは、とてつもない虚無感でした。
そもそも意味がわかりませんでした。
誰が障碍者に猫は飼えないと決めたんでしょうか。
世間の常識でしょうか。
猫が大切すぎて言ってしまったのでしょうか。
その本心は私にはわかりません。
しかし、私は拙いながら初めての猫であるカイくんの面倒を必死にみていましたし、それがある一定の水準を満たすものだと自負してもいました。
毎日の食事のバランスを考え、コミュニケーションをし、爪を切り、こまめにブラッシングして、甘え、甘えられて私たちの関係はとても良好でした。
そんな状況を見もせず、レッテルを貼られて断られる。
なるほどこれが差別なのかと、その時はじめて実感し、背筋が凍る思いをしました。
その後、正式に保護猫団体に抗議を申し入れ、代表から謝罪の言葉をいただきました。
また、その際代表から、本来であれば障碍者が猫を飼ってはならないなどという先入観はあってはならない。
むしろ猫はセラピーキャットとして時に人の心を癒す役割を果たすと説明され、それならばなぜその考えが統一されていないのかと悲しく思いました。
その保護団体を信用できなくなった私は、しかしあきらめることができず、里親募集サイトで見つけた一匹の黒猫の里親に応募します。
それが、くぅちゃんとの出会いでした。
くぅちゃんの預かり親さんは、私を障碍者だからと決めつけず、どういう症状で、どういう世話ができるのか詳しく聞いてくれ、旦那のサポートが万全であることも話し、その状況であれば問題ない、とはるばる群馬からくぅちゃんを連れてやってきてくれました。
預かり親さんは、部屋の状況や、私の猫を飼うことへの考え、そしてカイくんとくぅちゃんが仲良く過ごす様子を見て安心して帰っていきました。
これから猫ちゃんを里子に出そうと考えている方は、どうか、常識にとらわれた先入観をなるべく持たずに里親候補の方と接してほしいと思います。
くぅちゃんは今、毎日私の就寝時に、私の腕枕で寝るとても人懐っこい子になりました。
日記を書いている今も、ひざの上でおとなしく丸くなって終わるのをまっています。
くぅちゃんを愛し、愛されることで、いつか私の傷が癒えていくことも祈っています。
紆余曲折ありましたが、最高にかわいいくぅちゃんに出会わせてくれたあの事件を、納得は全くしていませんが今ではあれがあったから今の関係があるとめぐりあわせだと思っています。

美しいくぅちゃんのシルエット
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