悪いホストに騙され香港マフィアに捕まり、助けてくれた青年と恋に落ち、
ワンナイラブの末大奥に戻ってきたマモー。(えらい大袈裟な)
しばらくはたっぷりとやや子に乳をやり
やや子の毛並みを舐めて整え、
下の世話もしておりましたが
やや子たちが寝息を立てると
マモーのお方はそっと寝床を抜け出しました。
窓辺に物憂げに立ち

「はあぁ、キジシロさま、会いタイ」
・・・と、外を眺めて
ほわわわ〜んとマモーが
昨夜の余韻に浸っているうちに
おミキの局、
猫ちゃん寝袋モフモフ「おかぁさん」に
麦千代と琥珀丸を
ひょいひょいと入れました。

麦千代、琥珀丸両方、ダミーの
「おかぁさん」と、マモーのお方の
区別がまだついていないのか、
それともねぼけているのか
2匹は「みゃう」の一言も漏らすことなく
母から引き離されてもうっとりと
ダミー母「おかぁさん」に
顔をうずめております。

それでいい。
母の顔もわからぬままのくらいの方が
これからの長いネコ生
心穏やかにいられるであろうぞ。
「許せ、マモーよ。
家出をしたそなたが悪いのじゃ。」
私は、麦千代、琥珀丸愛用の猫寝袋
「おかぁさん」に入れた2匹を
ダンボール箱に入れ、車に積みました。
家の巣箱には
モモ姫をぽつんと残し
私は大奥を後にいたしました。
大奥を出る前に殿がわたくしに
声をかけました
「そなた、泣いてはならぬぞ。
養子先の不眠症乙参を
泣いて困らせてはならぬ」
「承知しております。泣くものですか」
そうは言ったものの、やっぱりわたくしは
今にも泣きそうな顔をしておったので
ございましょう。
麦千代は何か気づいたのか
モゾモゾしはじめましたが、
そんな麦千代に琥珀丸が「遊んでー」と
ちょっかいかけに行き
また2匹はプロレスごっこ。
そうやんな
2匹一緒なら、大丈夫。
きっと、大丈夫。
これからも、大丈夫。
マモーも、大丈夫。
私は自分に言い聞かせました。

不眠症乙参藩には、
正室のぱぶろん御前と
姫君もおられました。
こみ上げるものを飲み込み
姫君に、2匹の入った箱を献上いたします。
姫君は「動いた〜❤️ちっさい〜❤️
可愛い〜❤️やばい〜❤️」
の4単語を繰り返しリピートし、
ほかの言葉はお発しにならず、
ほんにお年頃の愛らしい姫君にございました。
そこからはしばしぱぶろん御前や
不眠症乙参とお話をし、
不眠症乙参藩をあとにいたしましたが
最後に車の窓をあけ、手を振ろうと
車から見遣りましたところ、
不眠症乙参家の御三方は
三人頭を寄せ合い
麦千代、琥珀丸の2匹を
それはそれは優しい眼差しで
大切に見守っておられました。
それを見た瞬間に、
私にはわかりました。
そして、車の窓を閉めて
そっと車を走らせ、
不眠症乙参藩を去りました。
・・・
ほんに、みっとものうございますな。
たかが猫の入った
小さき箱を
かように大切に大切に抱えて
大の大人3人が
頭押し合いへしあい
・・・
間違いなく、ここであったのだ。
麦と琥珀の住処は。
麦千代と琥珀丸は
やっと
「いるべきところ」に
帰れたのでございましょう。
わたくしども、大奥は
「猫の譲渡」をしたのではごさいません。
まして「里親を選んだ」のではございません、
不眠症乙参藩の若君を
無事、藩にお返しするために
今まで2匹の若君を
大奥で
お預かりしておったのだと。

続くのだ‼️
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