あの日以来…
休日 一日家にいると、午前中はかなりの確率でコタロウセンサーが発動することに気づいた
コタロウが かわいい声で泣く時は、一緒に窓の外を眺めるようになった
畑で茶白が日向ぼっこをしている
遠目で見ても、ふっくら 体格がよいのがわかる
飼われていなくても、きっとどこかで餌ぐらいはもらっているのだろう
お腹いっぱいゴハンをもらって
自由気ままに散歩を楽しんでいることを願っている
なるべく悲惨な想像はしないことにしていた
私はあの茶白に何もしてあげることができないのだから
考えてもしかたのないことなのだ…
「コタちゃマン、おトモダチ 日向ぼっこ気持ちよさそうだね~」
コタロウは私の言葉を無視して 大声でまんまん泣きながら 茶白を目で追っては、茶白が移動すると全速力で追いかけて別の窓に移動し、また泣く…
休日はそれが当たり前になってきた
そうやって半年が過ぎた
2019年 夏
私は 茶白と間近で遭遇した
勝手場のドアをあけると、たたきの人工芝の上で寝そべっていたのだ
どうも、私は茶白の至高のくつろぎタイムの邪魔をしてしまったらしい
茶白は素早くドアから遠ざかり、私を睨んで、「シャーッ」と威嚇し、一目散に逃げて行った
それから、私は、以前より頻繁に茶白を庭や畑で見かけるようになった
気になりはしたが、今のご時世、簡単な気持ちで野良猫に餌を与えることはできないと思っていた…
敷地内の畑には、ネコ嫌いの父が農作業に来るし、ご近所にもネコ嫌いがいる…
なにより、あの体格…どこかで餌をもらっている可能性も高い…
避妊はされているのだろうか…
避妊されていなければ、ますます、ご近所問題に発展する可能性がある…
糞尿だって…
別の猫がしていった糞尿もまとめて 我が家のせいにされる可能性だってある
今まで見たことがなかったのに なぜ急にこんなに頻繁に現れるようになったのだろう…
私がコタロウと暮らし始めて、外の猫にも関心が行くようになったためか、それとも、誰かが捨てて行ったのか…
ところが、秋になると、茶白は急に姿を消した…
現れなくなると、気になるようになった
交通事故にでもあったのだろうか
コタロウセンサーが働くのは、鳥や虫が現れたときばかりだった…
その度に 私はがっかりし、不安はだんだん大きくなった…
3カ月ほどが過ぎた
裏の洗濯機を使いに出ようとして、勝手場のドアをあけると、茶白と出くわした
茶白は泥だらけで、顔つきは鋭く、ガリガリに痩せていた…
私は その変わり果てた姿を見て、何も考えられなくなり、しばらく硬直した…
その後、二階に走り、物入れからコタロウのドライフードを取り、階段をバタバタ走って勝手場に戻った
しかし、そこに茶白はもういなかった
私は漠然と考えていた
次にここに来たら、茶白に食事を振舞おう…
しかし、その日以降、また、茶白を見かけることはなくなった…
再び茶白を見かけなくなって1か月以上が過ぎた
主人が言った
「今日 車の修理屋の十字路のところで茶トラが車に轢かれて死んでたよ」
私は激しく後悔した
あのとき、すぐにゴハンをあげていれば…
また勝手場に現れたかもしれない…
ゴハンを与える人がいれば
食べ物を探してウロウロして車に轢かれることもなかったかもしれない…
あの日 ドライフードを取りにいくまでの時間
私は躊躇したのかもしれない
畑仕事をする父のこと、ご近所トラブル、糞尿のこと…
一瞬のうちにたくさんのことを考えたのかもしれない…
あの時間がなければ、あの時、ゴハンを食べさせてあげることができていれば、茶白は車に轢かれなかったかもしれない…
その日 私は根拠のない後悔をしながら悶々と過ごした…

*2019年秋口くらいの出来事です
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