今は合併して市になったが数年前までは村だった。
その村の中でもひときわ田舎。
小高い山の麓に縦に三軒並んだ真ん中の平屋が夫の実家。
嫁いでからGWと正月の年二回帰省していた。
もちろん猫達も一緒に。
私達が帰省すると、前の豪邸に住む本家のお嫁さんのY子さんが、なんやかんやとお料理を持ってくる。
そのお料理がキョーレツだった。
見た目もだが、味もキョーレツだ。
シチューはじゃがいもも人参も火が通っておらずガリガリ。なんだか真っ黒いものが浮いていると思ったら大根葉だった。
カレーは、ルーがたっぷりで、豚肉、ベーコン、シーフードミックスが入っており、具の相性が悪いのか、下ごしらえをしてないのかとても生臭くて味が濃い。
ピーマンの肉詰めは肉だねが外れている。味がついていない肉だねは捏ねておらず、おそらくひき肉をそのまま詰めているのかパサパサでイヤな臭い。
私はお料理が大好き❗️と得意げに持ってくるY子さんだが、正直迷惑だ。
義母も義姉も絶対食べない。
悪いからと少しだけいただく私達夫婦だが、破壊力満点で毎度撃沈する。
もったいないと思っていても食べられないから、結局捨ててしまう。
このY子さんは本家の後妻さん。
元夫は本家の長男と従兄弟同士。
ずっと不倫関係で、それを知った元夫は自○をし、Y子さんは親族から吊し上げを食らっていた。
それを本家の長男が連れ出したという、とてもドラマチックでスキャンダラスなエピソードをお持ちだ。
その後入籍し、晴れて本家のお嫁さんになったわけだが、村中大騒ぎだった。
普通は自分への好奇の視線や心ない噂話に堪え忍ぶしかないと思うのだが、Y子さんは全く違った。
周囲の視線を睨みで跳ね返し、挨拶もガン無視という戦闘体勢。
その中で義母だけにはY子さんは心を開き、なんやかんやとお料理を持ってくるようになったらしい。
四年前、私は義母の介護→葬儀→法要で約半年間夫の実家に猫達と共に滞在していた。
ある日、義姉達の餃子が食べたいというリクエストで150個近く作った私。
しかし、義姉次女が『なんか気分じゃない』と菓子パンとアイスクリームという偏食な夕飯にカチンときた私はY子さんに差し入れした。
『いつもお料理ありがとうございます。少しですけど。』と焼きたて皮パリパリの餃子を手渡した。
翌日、Y子さんとおはようございますなんて挨拶したのだが、餃子云々何も言わない。
次の日もその次の日も。
挨拶はするけど餃子云々は無し。
口に合わなかったのか、迷惑だったのか。
そして義姉の仕事が休みの土曜日朝にY子さんは餃子を入れたお皿を返しにやって来た。
『餃子ごちそうさま。うんまかったよ。』
と義姉にお礼を言い、私とは目を合わせない。
そしてアイスコーヒー入れてと私に命じ、ご近所の奥様の悪口と義弟の悪口を言って帰っていった。
その一件でと二度と差し入れはしなかったのだが、同時にY子さんからの破壊力満点のお料理もぴたりとなくなった。
そんなある日、いつものようにアイスコーヒーを飲みながら義姉相手に悪口を言っていたY子さんに『ごゆっくり』と洗濯物を干しに席を外した私。
いつも同じ話なのでどうでも良い。
女中と化していた私はとても忙しいのだ。
Y子さんが帰ってから、義姉が言った。
美國ちゃん、私肉じゃが食べたい。
あと餃子作って❗️
Y子さんが食べたいんだって❗️
ついでに姉ちゃんの分と姪ちゃんの分も。
義姉は、労力を全く考えていない。
肉じゃがの為に牛肉が必要だし、その為に市内に一軒あるお肉屋さんでちょっと良い切り落としを買ってこなければならないし、
餃子に至っては、水切りした野菜とひき肉と香味野菜であんを作り、それを包まなければならない。
韓国ドラマを視ていた義姉は渋々買い物に行ってくれた。
お肉なんか何でも良いのよと言う義姉は、
『牛肉の肉じゃがは美味しい。もう牛肉じゃないと食べたくない。』
と私が作った肉じゃがを食べて言っていたことをすっかり忘れている。
急いで買い物を済ませ、肉じゃがを作り、冷ましている間に餃子を作る。
何とか夕飯に間に合い、肉じゃがと餃子をY子さんにお届けする義姉であった。
私の女中時代のお話の一つである。
先日の日曜日。
義姉から電話があった。
ねぇ、美國ちゃん。餃子が食べたいんだけど送ってくれない?
もうね、私は餃子の満州のクール便を送ろうと思いましたよ。
義姉さん、今ね、子猫の里親さん探しが大変なの。
だから美味しいお店の餃子を送るわ。
えっ?その餃子は国産材料なの?
国産じゃないといやだ。
などとぬかす❗️
菓子パンとアイスクリームが好きで、お惣菜と冷凍食品で生きている人が国産材料とか言うな❗️
大丈夫。餃子の満州は国産材料しか使ってないから❗️
えー?そうなの?でもいいや。
ってか美國ちゃんまた猫やってるの?
また増えるよ。もう猫は止めてよ。
来る義母の七回忌に猫達を連れて帰省されるのがいやなんだろう。
私はもう猫達を連れて帰省しない。絶対に。
帰省するなら日帰りか一泊でペットシッターを頼むつもりだ。
七回忌の法要は仕出しを頼めば良い。
料金はこちらが払えばすむことだ。
大好きな義母が亡くなってから、嫁としての義務は果たしたつもりだ。
もう女中は卒業させてほしい。
そんな女中時代を思い出した日曜日。
夫が猫部屋の扉を改良した。

バタンとなってクッとなりました。
マグネットがついて使いやすい。
ステップもついてローザも気に入ってくれたみたい。
良かった良かった。

ローザは今日もかわいいです。
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