
受付終了間近の待合室には運良く誰もいませんでした。他の患者さんが居たら外で待つつもりだったので、ホッとしました。何せ野良猫さんときたら、臭うし汚れているし。
そしてすぐに診察台に。…キャリーの中で踏ん張って出てこない!でも、先生は慣れたもので、穏やかな口調で「出ておいで〜」とキャリーを斜めに立て、野良猫さんが自重でキャリーからはみ出たところをガッチリホールド。先生に事の経緯を話すと、「しんどいから助けて〜って来たんだね」と。
野良猫さんの背中にくしを通すと、くしに無数の黒い粒々。野良猫さんあるあるの、ノミ(沢山)の証。真新しい傷は猫同士の喧嘩。深い噛み傷もあり。歯の状態からは「う〜ん、こりゃ15歳前後かな」。
?!
完全にお年寄り!しかも上の前歯が1本抜けちゃってる。弱々しい後ろ足は、麻痺は無いけれど立つ時に後ろ足がかかとまで着いてしまっている。もしかしたら、以前事故に遭い骨折したのがそのままくっついたり、もしくは高齢で足腰が弱ったのか、もしくは別の病気か。浅い呼吸に関してもレントゲンを撮って詳しく検査しないと分からないそう。取り敢えず血液検査をしてみますか?と言う事でお願いしました。
野良猫さんは診察台で怯えてはいましたが、大人しく、先生にも一切攻撃する事はありませんでした。肉球が硬いので外にいる期間は短くは無さそう、なら元飼い猫さん?でも、家の猫さんの診察台での光景を思い出せば、関係ないなとの結論。野良猫さん個人(猫)の性格なのかな。こんな大人しくて人懐こい野良猫さんは、可愛がって貰える事も多いけど危ない目に遭う確率も高いだろうな…とぼんやり考えているうちに結果がきました。
すると、ノミが多い為の貧血、脱水、とにかく肝臓の数値が非常に悪い事が判明しました。原因は色々だけれど、お薬は飲んだ方が良いかも、と先生。去勢だけでもと思っても、肝臓がこの数値では麻酔のリスクも高く到底無理。病院に連れて行く腹は括った、けれどその先は…。呆然とした私に先生が「ノミの駆除だけでもすると貧血は良くなるよ」と言って下さったので、取り敢えずフィプロスポットを塗布して頂きました。
病院の帰り道、やはり手を出すべきでは無かったのではないかと不安でいっぱいになりました。関わってしまった以上自分には責任がある。でも病院に連れて行くだけでは何も終わらない、その先にまだまだ長い道が続いていて、責任を持つとはその道のりを最後まで共にする事…。病院に連れて行ったところでその先が無ければ、野良猫さんにとって結局残酷な事に変わり無いのではと自己嫌悪でいっぱいになりました。
家に着き、玄関のアプローチでキャリーを開けました。野良猫さんは「出て良いの?」といった感じでそろりとキャリーから出てきました。そして再び私の足元にゴロンと横になり、頭を撫でてやるとスリスリしてきました。暫くスリスリした後、もういいやとばかりにのんびり起き上がり、アプローチをゆっくり降りて行きました。ちょっと進んでは1分程休み、進んでは休みを繰り返し、亀の如きのろまさでフラフラと夜の闇に消えていきました。
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