7年くらい前に
自宅前の道路を、いつもエプロンを着けて散歩している品の良い おばあちゃんと 出会いました。
我が家の 道路に面している部屋の窓から 外を眺めている猫たちが 気になっていたらしく
庭の手入れをしていた 私に話し掛けてきたのです。
ご自分も2匹の猫ちゃんを飼っていて
猫が大好きなことや
お散歩の時に
我が家の窓辺の猫と会えると とても嬉しいのだとお話ししてくれました。
4年前の2016年 3月
2匹の愛猫が 老衰と腎臓病で相次いで亡くなったと悲しまれていました。
淋しいから また猫と暮らしたいと打ち明けてくれました。
同じ猫を愛する者として 気持ちは痛いほど分かります。
近くの
動物病院に隣接するスペースでは、
週末になると 犬猫の譲渡会が開催されており
おばあちゃんは
何度か足を運びましたが、
高齢者では どこの愛護団体さんからも個人ボランティアさんからも 里親にはなれないとお断りされると嘆いていました。
おばあちゃんは、当時 78歳。
同じ市内に ひとり息子さんがいますが、
おばあちゃんは 賃貸アパートで独居。
譲渡してもらえないのは、私自身 猫の保護譲渡する立場からすると 高齢ゆえに当然のことだと思いました。
そして、
猫を通じて色んなお話をしてくれるようになってきた頃
2015年に
同じアパートに住んでいた20代の女性が
10匹以上の猫を置き去りにし、家賃滞納した挙げ句 夜逃げし
猫たちは、管理会社と 女性の両親の手によって
外に放たれたことがあったと お話して下さいました。
いきなり おうちを失い 生きて行くためのご飯やお水を貰えなくなった たくさんの猫達のために
おばあちゃんは
アパートの裏庭で 餌をあげていたそうです。
未避妊と未去勢の猫ばかりでしたので
出産が
何回も何回も繰り返され 猫の頭数もかなり増えて来たことで
おばあちゃんのアパートの隣家のお宅からは、猫の糞尿被害のクレームや嫌がらせを受けたそうです。
隣家の庭には、害獣駆除用の強力ネズミ取りシートが一面に敷き詰められ
それを、猫が餌に釣られて踏んでしまい 粘着シートから逃れられずに亡くなった猫もいたり、
二階のベランダから
熱湯や 使用済の揚げ油などを 猫 目がけてかけたこともあったそうです。(アパートの敷地内での餌やりは禁止されていた為 餌やり行為を咎められないかと 虐待の件は警察にも、どこにも相談しなかったそうです。)
そんな虐待が続けられたり
過酷なお外で生き延びて行くことは 大変な為か
徐々に猫の数も減ってきた頃に
2017年4月 障害のあるキジ白の子猫が産まれたのこと。
(写真の おばあちゃんが、抱っこしているキジ白の猫ちゃん こつぶ君)
「あの子は たぶん脳に障害がある。あの体では高いところも登れず 野良猫として外では生きていけないので 捕まえて自分が飼いたい。
ても、真っ直ぐ歩けない体でも すばしっこく
年寄りの自分には なかなか素手で捕まえることが出来ず 一度 失敗して警戒されてしまった。 捕まえる方法があるなら捕まえて欲しい」と相談されました。
「子猫だけ捕まえても
餌をあげてる母猫はどうするのですか?
この先 また出産を繰り返し
隣家による虐待や カラスに連れ去られたり 事故に遭うかもしれない。
ご自分で餌を与えている 母猫のことも考えて欲しい」と伝え
母猫の避妊手術の同意を得 手術を受けさせることを決めました。
(行政に相談したところ、自分の家の敷地内で餌を与えている猫は 飼い猫となるそうで 飼い猫に対して 飼育者に無断で避妊手術をしてはいけないとのことで この場合 母猫の飼育者はおばあちゃんになります。費用については猫ボラの友人と私が負担しました。)
障害を持つ子猫 こつぶ君(キジ白の男の子 当時2ヶ月半)と 母猫 ノンちゃん(キジ白 当時1歳)を
市内のボランティアさんの協力のもと 捕獲することになりました。
子猫は、捕獲器ですぐに保護出来ました。
動物病院で、
頭を常に振りながら歩いたり
四肢が 真っ直ぐ歩行出来ない原因は何か
トキソプラズマの抗体検査やレントゲン検査などで調べましたが
先天的な小脳の異常ではないかとの診断でした。
それ以上の精密検査は、高度医療の病院での高額な検査が必要な為 断念しました。
母猫 ノンちゃんは賢く 何度捕獲器を仕掛けても入らない為 なかなか捕獲出来ませんでしたが、 2017年の10月にようやく 捕獲器以外の方法で保護が出来ました。
母猫ノンちゃんは避妊手術後、
リリースするつもりでしたが、
これから寒くなる時期で
母猫ノンちゃんだけ 厳しいお外で暮らさせるのは忍びないと おばあちゃんの希望で
母猫も一緒に飼うことになりました。
ノンちゃんは、自分より半年前に保護され おばあちゃんの部屋で暮らす こつぶ君に会うため
ブロック塀から 雨樋にジャンプして
お猿さんのように エアコンのホースをよじ登り
おばあちゃんの部屋の二階の窓まで 器用によじ登って
息子こつぶくんに会いに来たり
おばあちゃんに対しても 甘えた声で鳴いて 信頼関係がありました。
こつぶ君と母猫ノンちゃん二匹を飼うことになったおばあちゃんですが
当時 おばあちゃんは79歳でしたので
息子さんとも直接何度もお会いして
もしも
おばあちゃんに(お母さん)何かあった時には
息子さんが 母猫ノンちゃんと子猫こつぶ君の後見人になることを承諾して頂き
息子さんが もしもお世話出来ない状況になった時には
おばあちゃんの財産の一部で
猫2匹の為に 引き取ってくださるシェルターを探しておき 猫ちゃん2匹の命に対して終生責任もつ という 取り決めもし 誓約書を交わしました。
その後
親子二匹のワクチン接種や こつぶ君の去勢手術時などの通院時には
私も含めて数人のボランティアさんが 車を出して同行するなどのサポートをして来ました。
おばあちゃんは、元々猫が大好きで愛情をかけ大切にされる方で
ワクチンや駆虫などの医療についてもお金を惜しむこともなく常識もあり
ニ匹は、おばあちゃんと 元気に のんびり暮していました。
私は、定期的に おばあちゃんちに猫達の様子を見にいくことを続けていましたが
2020年 今年の春になって
築50年以上の 木造アパートの解体が決まり
8月中旬までに退去しなくてはならなくなったと、聞かされました。
年金生活の高齢者が猫ニ匹を飼って 引っ越せる賃貸物件。
貸してもらえるのか
長年住み慣れた生活環境を変えたくないという おばあちゃんの希望通りの物件が 近隣にあるのだろうかと 不安になりました。
難航していた物件探しも、
地元の不動産会社のご厚意で
元のアパートから徒歩5分の 小さなマンション 一階に決まり 8月上旬頃に引っ越せることになったと聞き 安堵しました。
「お引っ越し日が決まったら 教えてね。
お手伝いします」と約束しました。
7月下旬のある日
差し入れを持って
アパートを訪ねると
まさかの 真っ暗。(。•́︿•̀。)
もともと10世帯のアパートに3軒しか入居していませんでしたが、
全く人の気配がなく すぐに全世帯退去したと感じました。
その場で すぐに おばあちゃんの携帯に電話をすると
なんと。。。既に 10日以上前に引越したとのこと。
でも
「すぐ近くだから 生活環境は変わらないし
以前のアパートは二階で階段の昇り降りに苦労したけど
今は 一階だから
腰の悪い自分にとって 本当に助かる」と喜んでいました。
「環境が変わって 猫ちゃん達は大丈夫なの?
元気にしてる?お引っ越しの時 大丈夫だったの?」と尋ねると
「ノンちゃん(母猫)は、引っ越しの日に キャリーバッグに入れて
押し入れにしまっておいたら
外国人の引っ越し業者の人が まさか バッグに猫が入っているとは思わずに勝手に開けてしまい
驚いたノンちゃんは そのまま走って逃げてしまった」と聞かされ 愕然としました。
元 住んでいたアパートに、ノンちゃんを探しに行ったのかと聞くと
「これも ご縁かなと 思って。 部屋を飛び出した直後 裏庭を探したけど見つからなくて あの子は やっぱりお外が好きなんだと思って お外で生きていくのを選んだのよ。だから もう諦めてるの」と。
酷暑もあったとは思うのですが
徒歩5分の元アパートへ ノンちゃんを探したりの 見つけて連れ帰る努力もせず
ご飯やお水をもっていくことを一度もしないまま 放っておいたそうで
すでに 10日以上経過していました。
それから
私は
元アパートを見に行ったり
保健所や警察
ご近所に、母猫がいないか保護されてないか調べましたが
行方不明でわからないまま。
おりしも今年の夏は
猫も人も生きていくのも精一杯なくらい酷暑でしたので
どこかでご飯を食べられてるのかな
雨もなかなか降らなくて お水飲めてるのかなと
可哀想で心配で堪りませんでした。
元アパートの敷地内にコッソリ置き餌をしてみたけれど
手つかずで
食べた形跡が無いことが
もう、このあたりにはいないのだと思ってしまったり
とにかく 母猫ノンちゃんが無事に元気でいてくれますようにと祈りました。
捜索から一週間後の8月上旬。
おばあちゃんと暮していた 二階の部屋の窓を
ブロック塀の上から見つめている 母猫 ノンちゃんを 発見しました。
私の存在に気がつくと、錆びて腐食した鉄格子を、くぐり抜け
縁の下に隠れてしまいました。
(お外時代 ノンちゃんは この縁の下で出産 育児していたそうです。)
でも、生きている 安否確認が出来たことは とても嬉しかった。
酷暑の8月 この日から
ノンちゃんを再び保護するための 試練が始まりました。
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