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どこだったかしら?
事の経緯はこう。
夏頃から我が家の敷地内をよく通りかかる猫がいました。
その時点では、父も母も、どこかのお宅で飼われている猫が遊びに行く途中で通っているのだと思っていたそう。自治体も保健所も、猫の室内飼いを推奨していますが、田舎ゆえ外に出している人も多いのです。
それが冬になり、雪が降り始めると家の裏の工場(こうば、かつて精米業を営んでいた作業場)に入って来て、必死で父に絡んできたらしいのです。骨と皮だけのような痩せた体で、声もかすれ、このままでは死んでしまう、と父は思ったそうです。知らないうちにここで死なれたら困る、という気持ちと、やはり可哀そうに思う気持ちもあったのでしょう、餌をやってしまい、結果、工場に居ついてしまいました。
もともと「人懐こい黒い猫がいる」と話していたので、情が湧いていたのだと思います。
こっちは驚きました。
たとえ野良猫でも、餌をやってしまったら飼い主です。さあ、どうしよう?
聞けばメス猫だといいます。
「えーっ!? じゃあ、このままだと猫増えるじゃん!どうするの?」と私。
「誰か飼ってくれる人、いないかなー?」と父。
「今後どうするにしろ、とにかく避妊手術だけは受けさせなくちゃ。」
「うーん、あの猫、なんかどっか悪いみたいなんだよな」
などなど話し合っていました。
私としてはそう急がなくてもいいかと思い、連休に入ったら病院に連れて行こうと考えていましたが、まだ連休に入る前のある日、父が改まって「あの猫を病院に連れて行ってくれ」と言いました。
「それはいいけど、お父さんが連れて行くべきじゃないの?私はその猫のこと、なんにも知らないし」
私はこの前日に、初めてその猫の姿を見かけたばかりだったのです。ということで父と連れ立ってその猫を病院に連れて行きました。
先生に訳を話し診察してもらいました。父が問診票に「お尻の穴が気になる」と書いたので、「じゃ、お尻を見てみようか」と先生が猫を後ろ向きにさせたところ、お尻から膿みがどろー。
切開して膿みを出し、2週間効果があるという抗生物質の注射をしてもらいました。
避妊手術については、夏の間妊娠していなかったのならもう終わっている可能性がある、とのことでまずは保留。避妊手術を受けた後、いなくなってしまう猫もいるそうで、実際にお腹を開いてみたら子宮がないということもあるそうなのです。
その他、便検査やブロードライン、血液検査などをして12000円なり。
血液検査の結果、エイズ、白血病は共に陰性で、それは安心しました。
「で、この後、この猫どうするの?」と父に聞くと、「このまま工場に置いておく」との答え。
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でも、初対面の私にもこんなにすぐお腹を見せてごろんごろんする人懐こい猫。
工場に置いておくと言っても、ずっと中にいる訳ではなく、時には外に遊びに出掛けて行きます。こんなに警戒心のない猫、まさかとは思うけど、悪意のある人間に何かされないとも限らない。
今回の診療費を父が出してくれようとしましたが、診療費は私が出すからそのお金でケージを買って、外に出さないようにして、と頼みました。
あまりに人懐こいのできっとどこかで飼われ、可愛がられていたのではないかと思い、とりあえず保健所と警察に連絡してみましたが、迷い猫の届け出はないとのこと。まあ、そうだろうな、と思います。一体どれだけの人が、飼い猫がいなくなったら保健所や警察に届け出ること、というのを知っているでしょうか。あまり知っている人はいないと思います。
そこでチラシを作成してスーパーやペット用品を売っているお店に貼ってもらうことにしました。
ひさしぶりにPCで文書作成。
前の会社でエクセルやパワポで帳票類を作成したりはしていたけど、今回はあまり使ったことのないワードでの作成。正直言うと、自分のPCでワードを開いたのは初めてのこと。前の会社にいた頃とは、いろいろ変わったところもあり、やり方を忘れたところもあり、簡単なチラシでも苦労しました。
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小さい町なので、人の集まる5店舗に絞りお願いしたところ、1店舗のみは本部に確認しないとわからないとのことでしたが、他は快く承諾してくださいました。
そして連休に入ってから2度目の受診。
やはり避妊手術の予約を取った方がいいだろうということと、そのためにワクチンを打ってもらおうと思ったのです。それからいくら雪や風に当たらなくて外よりはましといっても、火の気の全くない工場に置いておくのは可哀そうで、家の中に入れたい、そのためには白血病とエイズのワクチンも打ってもらいたい、と考えてのことでした。
ただ残念ながらお尻の状態があまり良くなっておらず、ワクチンを打つのはお尻が落ち着いてからということになってしまいました。お尻は何か出来物のような物があり、それが肛門腺の炎症なのかそれとも何か腫瘍のような物なのかは今の時点ではわからないと言われ、連休の終わりにもう1度受診する予定です。悪い物じゃないといいなと祈っていますが、この頃少し出来物が小さくなってきたようで希望が見えてきました。
避妊手術は今予約しても3月半ばになるので、とりあえず予約だけは入れ、家の中で様子を観察して発情しないようなら手術はしなくてもいいのではないか、ということになりました。またその間に飼い主さんが見つかればお返しするのでキャンセルすることになります。
私の家は昔からの日本家屋で、今の家と違い、複数の猫を隔離するような部屋はありません。ワクチンを受けられなかったので、本来ならまだ家の中に入れるべきではないかもしれませんが、最強の寒波が来るという時に工場に置いておくのは忍びなく、急いでケージを買いに行き、ブッコと接触しないように家の中に入れました。父は結局ケージを買わなかったのです。ダブルキャリアのブッコと接触させないために、ケージの中に入れっぱなしなのが少し可哀そうなのですが、おとなしく我慢してくれています。
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とりあえずの呼び名としてナツと名付けました。
とっても人懐こいから、ナツ。
「公園通りの猫たち」という本にも、あまりに人懐こいからナツと名付けられた子がいました。それと同じですね。
ブッコはナツのことが好きなようです。ナツがまだ外にいた頃、窓から呼びかけるようにナツに向かって鳴いていました。ですが残念ながらナツはブッコの姿を見ると唸り声をあげます。
唸られてはいますが、意外とブッコは平気そう。
ナツを家の中に入れることで、ブッコのストレスにならないかというのが心配だったので、そこは一安心です。
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ブッコさん、しばらくの間、よろしくね。
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