病院に向かう途中の交通量の多い交差点のちょっと手前で、徐行していると前方に白い物が見えた。
白い帽子?
いや、違う。動いている。ハトだ。
道路の真ん中で、そこから動けずに首だけ動かしている。
どうしよう。こんな場所では、あっという間にペシャンコになってしまう。
後先考えずに、路肩に車を寄せて停めた。
車の流れが止まったので、脇道から出てきた車がハトの上を通過して右折していった。
ヒヤリとしたが、ハトはつぶされずに済んだ。
車のトランクから積みっぱなしのバスケットを出して、中に入っているタオルでハトをそっと包みバスケットに入れた。
片方の翼が無残に折れ曲がって血だらけ。周辺に数カ所血だまりがあった。
後続車はクラクションも鳴らさず待っていてくれたことに感謝。
病院まで急ぎ、受付で交通事故にあったハトを保護したことと、先生に診てもらいたいことを告げた。
患者の犬猫の交通事故ならすぐ診てもらえたのかもしれないが、茶太郎の前の犬にえらく時間がかかり、それから茶太郎。
茶太郎をキャリーに入れたところで、
もう車で死んでいるかもしれないけど(イヤミ)、ハトを診てもらえますか? と先生に聞いた。
野生のハトを診ることはできない、鳥インフルが広がっていることを知ってるでしょう? 汚染されたら大変なことになるし……でも、応急処置だけはしておきましょう、と先生が言ってくれた。
車からバスケットを持ってくると、先生はハトをそっと持ち上げて、怪我が片方の翼だけであることを確認。でもひどい怪我で、翼は付け根のところで折れてプラプラ状態。
翼全体に霧状の消毒薬を吹きかけて、幅広の包帯とテープで固定してくれた。
そして2個の足輪に気がついた。
このハトは、飼い主のいる伝書鳩だった。
先生がハトを抱きかかえ、病院スタッフが伝書鳩の登録番号と飼い主の名前、電話番号をメモしてくれた。
自宅に戻りハトの飼い主に電話すると、すぐに迎えに行きますと言い、30分後には指定の場所にやってきた。
飼い主はハトを受け取ると、私にお世話になりましたと言い、封筒を差し出した
お礼?
お礼はいりません。(病院タダだったし) この子は翼が折れてます。これは治療費に使ってください。そしてもう飛ぶことができなくても、最後までお世話してやってください。この子の上を車が通過したんです。奇跡的に助かったんです。
それじゃと言って、私は車を出した。
ハトの飼い主は車の横に立って、私の車のほうに頭を下げていた。
迷子札を付けていた事といい、すぐに迎えに来た事といい、お礼を用意していた事といい、あのハトは大切にされている。この先も大丈夫。
あ~、良かった。
それにしても、もし飼い主のいないハトだったら、私は飛べないハトをずっとお世話することになっていたんだろうな。
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