懐石料理の世界

2021年2月4日(木) 234 / 10

いつも、うにくる信州グルメ旅日記を
読んで頂いてありがとうございます♪

普通の猫日記を読みたい皆様、
グルメ日記ばかりでごめんなさい💦💦

もともと、月イチ程度のつもりで
書き始めたお蕎麦食べ歩き日記が、
いつしか、
メインになってしまいました。(苦笑)

ネコジなのに、、、いいのかな？💧
という罪悪感も多少ありますが、

最近では、楽しみにしてくれてる方も
いるみたいなので、、、♪

興味無い方はスルーすればいいだけの事。

………というわけで、、
少し、図にのって(？)、
今回から４回連続で、
僕が体験した、
懐石料理の世界のお話を
してみたいと思います。
20年以上前のお話です。

猫話でもなければ、
うにくるグルメ旅日記でもありません。

興味無い方はスルーしてくださいませ。

………………………

20代半ばになった僕は、
松本市浅間温泉にある、
温泉ホテルに勤めることになりました。

飲食業、接客サービス業などの
経験もほとんどなく、
興味もありませんでした。

なぜ、この仕事を選んだかといえば、、、

僕はその頃、住む部屋も無かったから。

お金が無くて、
アパート等を借りたくても、
敷金礼金などの前払い金など、
払えません。

だから住み込みで働ける仕事を探していて
たまたま見つけたのが、
温泉ホテルの住み込み従業員募集。

何もわからないまま、
飛び込みました。

最初は『管理』という係でした。

宴会場の準備をしたり、
お客様のお部屋へ行って
お布団敷いたり、、、

３ヶ月ぐらい、
そういうお仕事をしていると、、

厨房のほうから
お声がかかりました。

ひとり退職しちゃったから、
厨房へ来てほしいと。

若かったから抜擢された
だけだと思いました。

そんなわけで、、、
自分から望んだわけでもなく、、

厳しい懐石料理の世界へ
足を踏み入れました。

下っ端として、
洗い物、先輩方の雑用、
前菜、八寸等の盛り付け、、、

などなど、、、、

１年近く経った頃、

揚げ方(揚げ番)に昇格。

しかし、、
懐石料理の世界の厳しさは
増します。

中居さんが、

『天ぷらが少し焦げてたから、
揚げ方さんが変わったって、
すぐにわかったよ。』

って、言ってきました。

僕が揚げ方になったことは、
初日にいきなりバレました。(苦笑)

揚げ方(揚げ番)は、
とにかく、、懐石料理の中の、
すべての揚げ物を仕込み、、

そしてもちろん、自分で揚げます。

毎日、約１００人前の仕込み。

天ぷらの中には
当然のように海老もあります。

毎日、100尾の海老を下処理します。

この仕込みが下手だと、
海老がキレイに真っ直ぐに
揚がりません。

曲がってたり、
グニャグニャだったり………😓

先輩方から、
優しく、、、
時に厳しく、、教わります。

でも、、
僕の揚げた海老はグニャグニャ……😥

怒られても、、怒られても、、

海老は上手く揚がりません……😰

ついに、板長登場。

直々に教えて頂きました。

それでも、上手く揚がらない💧😭

板長

『これだけ教えてもダメなら
もう、お前はダメだ…………』

…………ついに諦められてしまった。

見捨てられた気分のまま、
毎日、天ぷらを揚げていました。

もはや、誰も何も
言ってくれなくなりました。

年末が近づき、、

宴会プランの広告用の
料理の撮影がありました。

こういう時、、、

ここぞという時は、

板長自ら、
天ぷらを揚げる事があります。

今日は板長が揚げるだろうな、、と思い、

油の温度を上げ、
準備して待っていました。

板長が近づいてきて、

『ひで、、、そろそろ始めてな。』

え⁉️

僕が揚げていいの⁉️💧

広告に載るやつだけど💧💦

まあ、、、
板長が揚げてくれと言ってるから、
まあ、いいや💧

………と、天ぷらを揚げて、
器に盛り付けておきました。

しばらくすると、板長が来て、

『ン………良いな。』

と言いながら、

僕の盛り付けを少しだけ、
微調整しました。

その天ぷらが、広告に載りました。

僕は、誰からも何も言われなくなったから、
きっともう、僕はダメなんだって、
見捨てられてるんだと思ってた。

……でも、違った。

自分でも気付かないうちに、
キレイな天ぷらを揚げれるように
なってた。

板長も何も言わないような、
ちゃんとした、懐石料理の天ぷらを、

僕は揚げられるようになってた。

少しだけ、、自信を持って、、
毎日、天ぷらを揚げ続けました。

………ある日、、、

お部屋で召し上がったお客様が
言っていた事を
中居さんが僕へ伝えに来ました。

『こんな美味しい海老の天ぷらは、
海辺の旅館でも、食べた事が無い。

海なし長野県の山の中で、
こんな海老が食べれるなんて、、、

きっとこのホテルは、
近くに自前の池を持ってるんだ。

そして、毎朝、そこから
新鮮な海老を取ってきて
調理してるんだ！！』

………と、、
海老の天ぷらを絶賛していた
みたいです。

中居さんが僕に話すのを
近くで板長はニコニコしながら
聞いていました。

………これ、、
言っちゃっていいのかな？

実は厨房で使っていた海老は
冷凍です。(苦笑)

丁寧に仕込みをして、、
絶妙なタイミングで揚げれば、、

冷凍海老が、、、

お客様を唸らせる
一流の海老天になるのです。

あ、、、別に僕の腕がスゴいとか
言いたいわけではありません。

毎日毎日、海老100尾を
仕込んで、揚げていれば、

誰だって出来るようになります。

ただし、、、
いい加減なお店で、
何年揚げてたって、
美味しい天ぷらを揚げれるようには
なりません。

一流の料理を出す、
一流の厨房で毎日修行してこそです。

残念ながら、
僕は長くは勤めませんでした。

若かったので、
他にもやりたい事がいろいろあった。

もう少し、長く勤めればよかった、、と
今では後悔しています。

今まで勤めた職場の中で
いちばん大変で、、

でも
いちばんやりがいのある職場でした。

学んだ事は沢山あります。

ここに勤めたからこそ、
いまの自分があります。

本当に感謝しています。