彼女は母親から離れ独立したばかりだった。
翌年の夏、彼女はたくさんの車が行きかう
国立公園入り口近くに姿を表すようになった。
その後すぐ、とんでもない知らせが飛び込んで
きた。
観光客が彼女にソーセージを投げ与えていた
というのだ。それからの彼女は同じクマとは思
えないほどすっかり変わってしまった。
人や車は警戒する対象から、食べ物を連想させ
る対象に変わり、彼女はしつこく道路沿いに姿
を見せるようになった。そのたびに見物の車列
ができ、彼女はますます人に慣れていった。
我々はこれがとても危険な兆候だと感じてい
た。かつて北米の国立公園では、餌付けられた
クマが悲惨な人身事故を起こしてきた歴史があ
ることを知っていたからだ。我々は彼女を必死
に追い払い続け、厳しくお仕置きした。人に近
づくなと学習させようとしたのだ。しかし、彼
女はのんびりと出歩き続けた。
翌春、ついに彼女は市街地にまで入り込むよ
うになった。呑気に歩き回るばかりだが、人に
ばったり出会ったら何が起こるかわからない。
そしてある朝、彼女は小学校のそばでシカの死
体を食べ始めた。もはや決断のときだった。子
供たちの通学が始まる前にすべてを終わらせな
ければならない。私は近づきながら弾丸を装填
した。スコープの中の彼女は、一瞬、あっ、と
いうような表情を見せた。そして、叩きつける
激しい発射音。ライフル弾の恐ろしい力。彼女
はもうほとんど動くことができなかった。瞳の
輝きはみるみるうちに失われていった。
彼女は知床の森に生まれ、またその土に戻っ
て行くはずだった。それは、たった、1本のソ
ーセージで狂いはじめた。何気ない気持ちの餌
やりだったかもしれない。けれどもそれが多く
の人を危険に陥れ、失われなくてもよかった命
を奪うことになることを、よく考えて欲しい。
長野県の観光道路『ビーナスライン』にある、
お土産屋さんの壁に貼ってあった記事を
そのまま載せました。
知床のお話なのになんで長野県の
観光地に貼ってあるの?
………とは思いませんでした。
知床といえば、ヒグマ。
彼女はたぶん、ヒグマでしょう。
長野県に生息しているのは、
ツキノワグマ。
性格が全く違います。
だから、関係ない。
………とも思いませんでした。
長野県内で、滝めぐりなどをしていると、
『クマ注意⚠️』の看板は
いくらでもあります。
以前、、ある滝の遊歩道に
設置してあった看板の文言に感心しました。
『クマ出没注意⚠️』とは
書いてありません。
『あなたはクマの生息域に入っています。』
……と、書かれていました。
クマの方から出てきているわけではない。
僕達がクマの領域を侵しているのです。
本州ではツキノワグマの被害が
後を絶ちません。
襲われて怪我をする方、
亡くなる方もいます。
その度に、クマは駆除されます。
人に危害を加えれば仕方ないかもしれない。
でも、、、
襲われた方はもちろん気の毒に思いますが、
駆除されたクマも可哀想に思ってしまいます。
クマだけじゃなく、
沢山の野生動物がいますが、
こちらではシカなどによる、
農作物の被害も後を絶ちません。
………やっぱり、、駆除されます。
農家の方々からしたら、
死活問題。
可哀想とばかりも言ってられない。
………でも、なんとかならないものか、
と考えてしまいます。
※ビーナスラインを走っていると、
シカに出会えます。
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※地元、駒ヶ根高原にある看板。
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※駒ヶ根高原のサル。
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元はといえば、人間による環境破壊によって、
野生動物の生息環境が侵されているのです。
人間と野生動物が、
絶妙な距離感で共存する世界。
そんな世界になったらいいな。
問題が大き過ぎて、
僕がいくら考えたって、
どうにもならない。
でも、、、
知る事。
関心を持つ事。
情報発信する事。
それぐらいしか出来なくても、
それだけでも大事だと思う。
………身勝手な観光客に成り下がって
1本のソーセージを投げる前に。
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