この子達を迎えるまでは猫に関しては初心者で、先代の猫達のお世話もほぼ家内まかせでした。
そんな私が家内より良く知っていたのは、職業柄、人に感染する病気くらい。
狂犬病、パスツレラ症、エキノコックス、かいせん、猫カビ、SFTS、そしてトキソプラズマなど。
話は変わって、私がかかさず見るテレビ番組に『鉄腕DASH』がございます。
3月の放送で新宿区のビルの屋上にビオトープのコーナーで、ハリガネムシの話題がありました。
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カマキリ、キリギリス、カマドウマなんかの昆虫に寄生する線虫です。
成長すると10数センチになる茶褐色の、まさにハリガネのような生物。
このハリガネムシってカマキリや肉食のバッタの餌になる水性昆虫を中間宿主としていて、それらを食べたカマキリのお腹の中で栄養を吸収して成長します。
ここまでなら、人に寄生するサナダムシと同じ。
私の趣味の一つに渓流釣りがあります。
夏から秋にかけてヤマメやイワナを釣ると、たまに、お尻からハリガネムシが顔を出してることがあります。
ハリガネムシに寄生されたカマキリやカマドウマが自ら川に落水する話をご存知の方も多いと思います。
夏から秋にかけて、渓流のヤマメやイワナが食べる餌の半数以上が、このハリガネムシに寄生された昆虫という報告もあるくらいです。
成長したハリガネムシは川の中で卵を生むため宿主のカマキリを落水させるように脳を支配するのだそうです。
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生き物番組、YouTubeなんかで有名になった、ゾンビカタツムリ。
カタツムリにロイコクロリディウムという寄生虫が感染し、カタツムリの脳を支配してわざと目立つような色になったり、目立つ場所に移動して鳥に食べられるように仕向けます。
カタツムリを食べた鳥はロイコクロリディウムが混じった糞をばらまき、それをまたカタツムリが食べるというサイクル。
脳を支配する化学物質を分泌することで、寄生虫は宿主をコントロールする…このような寄生虫を神経寄生生物と言うらしい。
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さて、ここまで読まれた方はもうお気づきかな?
やっと本題です(笑)
猫の寄生虫、感染症の中で人にも感染する人猫共通感症の代表…トキソプラズマ。
トキソプラズマなどの感染症を予防するための話として、良く犬猫の飼育ハウツー本やサイトに、濃厚接触はしないことが書かれてます。
ようは同じ布団で一緒に寝たり、キス(猫吸いも?)することを禁じたり、糞の処理なんて室内にトイレ置けないじゃん!レベルの内容だったりも。
一番有名なのは妊婦さんが感染すると流産、死産すること。
また、言語障害、半身の脱力感、頭痛、けいれん、錯乱、昏睡、 炎症が肝臓で起きたり、肺炎、心筋炎が発症したりする怖い伝染病です。
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うちの子に限って…
まずトキソプラズマはネズミに感染すると、ネズミの脳を支配して、わざと猫に見つかるような行動をさせるのです。
ネズミを捕らえた猫は、まんまとトキソプラズマに感染します。
そして猫から人に感染すると…
2007、2008年に京都の地域猫で調査されたトキソプラズマ陽性率は約10%、13%でした。
2013年に名古屋市でも調査されてます。
雑種 116 頭、純血種 12 頭の計128頭、飼育環境は完全室内飼育96 頭、その他 32 頭(室内外飼育 22 頭、室外飼育 2 頭、地域猫8頭。
抗体検査結果で陽性を示した猫は 128 頭中 8 頭(6.3%)、完全室内飼育が 4 頭(4.2%)、その他が 4 頭(12.5%)
(詳細は平成25年度人獣共通感染症調査事業-名古屋市 のPDF報告書をご覧ください)
お外の猫の約1割はトキソプラズマに感染しているということですかね。
(鳥や他の哺乳類にも感染するので、生の豚肉や生の鶏肉を接種することも感染ルートです)
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最近の研究では、トキソプラズマは人の脳を操作するのではないか?という論文が出ています。
トキソプラズマ感染者の自殺率は非感染者の7倍、特に女性の自殺率が上がる、交通事故に会う確率は2倍、統合失調症を発症しやすくなり、うつ病、アルツ. ハイマー症などの発症リスクとなることが示唆されているようです。
野良猫の1割、一定数以上いるトキソプラズマ感染猫を保護したり、譲渡したり、里親になっているかもしれないというリスク…
猫好きの私達に、いわゆる過度なスキンシップを禁じるなんて無理な話。
譲渡猫に関しては猫白血病、猫FIVの検査、回虫やノミ、ダニの駆除同様にトキソプラズマについても検査すべきだなぁと思わないでもない。
もしくは飼育者の知識として学ぶべき事かと思います。
そして完全室内飼いがトキソプラズマ感染から猫と飼い主を守る手段なのだと改めて確信した次第です。
統計上では10匹につき約1匹はトキソプラズマに感染していると言う話になるかもしれない。
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