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初めての授乳。
なかなかミルクを飲んでくれない。
何度もくわえさせたり、飲み口を少し大きくしたり、ミルクを口周りに塗ってみたり。
シリンジも試したが飲んでくれない。
夜になってもなかなか上手くいかない。
試行錯誤していた私だが、ちょっと手応えを感じた。
角度や体勢をチェックし、同様に他の3匹にも飲ませ、排泄させる。
時間をあけてまた飲ませ、排泄。
気がついたら明け方だった。
授乳に慣れた私は家主に連絡をとった。
しかし、いつ電話してもつながらない。
授乳の合間に訪問しても、いつも留守だった。
店舗は開店休業状態なのに、家主は何をしているのだろう。
家主と連絡が取れたのは10日程経過してからだった。
4匹はミルクから離乳食に変わり、トイレトレーニングを始めていた。
いつものようにお菓子を渡し、白長毛と茶シロの避妊手術ついて話をする。
家主はあっさりと同意し、7月2日に個人ボラさんが紹介してくれた保護猫病院に予約を取り付けた。
そしてTNR当日。
大型キャリーケースの白長毛と茶シロと初めて対面した。
白長毛は白三毛長毛さんだった。
とってもキレイな美人さん。
茶シロは男の子かと思うほど大きくてかわいい女の子だった。
妊娠はしておらず、料金はワクチンとノミダニ駆除と合わせて27000円程。
夕方5時半に店舗に到着し、時間を見て家主にリターンしてもらう。
家主はお釣りはいいよと30000円を渡してくれた。
翌朝早く家主を訪問する。
朝4時にリターンしてから、2匹はずっと隠れたままだと心配している。
だが、一晩キャリーで休ませたせいか前回ほどふらつきもないようだ。
頑張った猫達にごほうびのチュールとシーバを渡し、
これで手術は終わり。
後はたくさんかわいがってあげて。
もう猫は絶対増やさないでね。
と言う私に、
もう十分だよと家主は笑っていた。
私はベランダで汚れたキャリーを洗いながら、3ヶ月かかったTNRがようやく終わったことを実感した。
後は最後の子猫達に、新しいお家を探してあげなければならない。
4匹のちびちび達は順調に育っていった。
そして。
TNRから約1ヶ月後の8月初旬。
耳をピクピクさせながらミルクをごきゅごきゅ飲んでいた乳飲み子達は、生後2ヶ月を過ぎ、カリカリが食べられるようになっていた。
そして、ワクチン接種とウィルスチェックを済ませ、里親募集を開始した。
私1人で対応可能な近隣を対象に、保健所の掲示板、動物病院へチラシを貼り希望者を募る。
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長期戦を覚悟していたが、とんとんと話が進み、お盆の頃には残り1匹となっていた。
残ったのは白ブチでママゆずりの長毛くん。
兄弟から遅れること2週間後、生後3ヶ月を過ぎた8月30日にトライアルを開始した。
3日間ずっと鳴きながら私を探していた白ブチくんは、先住猫さんを病気にさせ、おばあ様まで具合が悪くなってしまったという。
ごめんなさいとトライアル中止を申し出たお孫さんに、私達夫婦は笑顔で快諾した。
白ブチくんをうちの子にすることに何の迷いもなかった。
バースと名付けられた白ブチくんは、かつて大活躍していた阪神タイガースのランディ・バース選手から名前をいただいた。
神様仏様バース様といわれたバース選手は、阪神タイガースを優勝に導いた救世主だ。
うちの子になったバースは、我が家の救世主となるのだろうか。
先住3匹+新入り1匹の生活が始まった。
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あとがきに続きます。
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