それはもう朝から夫婦2人で泣いたし、それはもう悲しい別れだったけれど、どこか慌ただしくて最後まで我が家らしいお見送りでした。
朝には火葬を控えているのにも関わらず、結局明方が近づいても2人とも寝付けそうになかったので、眠るシンバをリビングに運んで、4ヶ月の600枚以上に及ぶ写真のデータを眺めながら、あの時はああだった、この時はこうだったと思い出して泣いては笑って、いつの間にか寝てしまっていました。
『こんな1週間毎日泣き腫らした酷い顔を見てあの子は私だと分かってくれてるのかな』
そんな呑気なことを考えながら朝は準備を済ませた気がします。
出発前になり、家を出る前に改めてシンバを抱きしめました。夫も私も前日よりお別れに対する心の準備は出来ていたものの、こうして息子を抱くのが最後だと思うと、別れを惜しんで泣いてしまって少しの間その場から動けませんでした。
予定時刻より出発が遅れながらも火葬場に到着し、受付を済ませようとしました。
ここでひとつ確認不足だったのが、火葬方法が合同火葬だった為、息子のお骨が戻ってこないことをここで初めて知ることになります。
亡くなった当日のうちに市役所への飼い主抹消手続きの連絡をした際に紹介された火葬場で、私たちはその日は悲しみに暮れてばかりで、事前確認もなしに足を運び、その事を聞いて今になって2人とも迷ってしまったのです。
受付を一旦保留にし、車に戻り、受付で教えて頂いた個別火葬のできるペット葬儀屋さんにお電話をしました。夫が電話をしている傍ら私は心の中で、まるで拾った日に病院を断られた時みたいにたらい回しにしてごめんね、そんなことを考えていました。
個別の葬儀屋さんへ問い合せたところ三賀日は営業していないとの事で、4日からなら24時間対応が可能だと伝えられました。つまり、もうふた晩息子をこのままにしていないといけません。すごく痛々しい表現になってしまいますが、息子は事故のせいでまだ血が滴り落ちる部分もあり、こんな姿であと2日も過ごしてもらうのはとても申し訳なく思い、このまま合同火葬で見送ることにしました。
締切時間寸前に再度受付を済ませようとした時、夫は「本当に大丈夫?」と聞いてきました。私自身もほんの一部でいいから自分の手元に残したい、そんな気持ちもありましたが、お骨に拘らずとも、ブラッシングした時の息子の毛はわずかながらに取ってあるのです。そして何より、息子の気持ちになった時に、私達が少しでも楽に見送れるようにそうさせたのではないかとふと思えて、大丈夫と答えました。
最後まで慌ただしくて息子に呆れられたかもしれないけれど、正午にお見送りが完了しました。
夫と2人だけになってしまった帰り道も、お家に帰っても、ふっと笑ったり、時々泣きそうになったり、明け方だけじゃ語り尽くせない思い出がいっぱいあったなと改めて思いました。
夜の19時になり、私は自室に戻ってゲームを開こうとしました。
我が家は夫婦共にゲームが好きで、プレイ中に息子にちょっかいを出されたことも多々あります。
いざゲームをするために椅子に座ると、背後からミシミシとキャットタワーの軋む音が聞こえてきました。「いや、まさか…」自分の耳を疑いながらも夫にこのことを伝えました。突っ張り型の麻紐が巻かれたキャットタワーで、息子が勢いよく飛びついてはしょっちゅうネジを絞め直してたものでした。1週間も放っておいたからネジが緩んだのかなとも思い、なんの音だろうねと嬉しそうに言いながら夫がネジを締め直しました。それでも、ミシミシと音が鳴り、更にはカツカツと爪が当たった様な音までして、私は何度も後ろにあるキャットタワーを振り返りました。
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キャットタワーは生後3ヶ月を迎える頃、日に日に暴れん坊になっていく息子に贈ったものです。設置している過程で既に目を輝かせていて、作業中も飛びついたり、完成したその日から嬉しそうに登っていたのを覚えています。ただ登ってお外を眺めているだけのくせに、仕事の作業をしている私を一日に何度も「こっちを向いて」と呼んで振り返らせた日もあったし、鳴いて気を引いては、下から上に一気に登るのを見てくれと訴える日もありました。
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会いに来るのが早すぎる、こんなんじゃ片付け出来ないや、と可笑しくなってゲーム内の友人達に報告すると「寂しがり屋だからしょうがない」「無理に片すものでもないのよ」と返ってきました。もう少し片付けは後にしようかなと思えてきて、その頃にはいつの間にか音はやんでいました。
今日の記録はここまでにします。
また後日、眠れなくなったり寂しい気持ちに負けそうになったら、楽しい思い出を振り返って残していこうと思います。
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