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昨年モモが病気になりそれまでのペットフードが食べられなくなったので、近くの野良猫を保護している場所(野良猫保護地)の野良猫達にあげました。それを機会に、野良猫達との交流が始まりました。
1.山の野良猫
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この野良猫保護地は、市街地から車で30分ほどの所にある山の中です。野良猫の生活環境は、市街地とずいぶん違います。いろんな事情の猫がいます。一番多いのは、街から車で運ばれて捨てられた猫ですが、野良猫から生まれた者もいます。もっと山奥には、完全に野生化した野猫もいるはずです。
野良猫たちは地元の人が世話をしていますが、人に懐かない者もいます。
タヌキ、ハクビシンなど野良猫と対立する野生動物がいます。彼らは、野良猫が人から貰った餌を奪いに来ます。猫たちは野生動物と戦わなければいけません。
問題は、雄猫の去勢です。
猫の避妊・去勢、手術時のダメージが大きいのは雌猫ですが、手術後の心身への影響が大きいのは雄猫です。
雄猫は去勢されると、すっかりひ弱になります。
去勢前
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去勢後
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猫とタヌキのバトルというと笑っちゃいそうですが、現実は生存をかけた厳しい戦いです。
去勢された雄猫は、厳しい自然環境の中で生き抜く力を失います。
2.雄猫の去勢は、猫の出生を抑えるうえで効果がない
野良猫の出生を減らすため去勢が必要だと思われがちですが、実はその効果はほとんどありません。
この図は、避妊または去勢によって、猫の出生がどれだけ抑制できるかを表したものです。
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避妊、去勢を全然しなかった場合を100として、避妊または去勢によってどう変化するかを示しています。
雌猫だけを避妊させた場合、避妊率の増加に伴って出生率は減少します。50%の雌猫が避妊すれば出生は半分、80%が避妊すれば出生は20%になります。100%避妊すれば出生は0です。
一方、雄猫だけを去勢した場合はどうでしょうか?
雄猫を80%去勢しても、90%去勢しても、猫の出生率は変わりません。
なぜそうなるのでしょうか?
それは猫の生態によるものです。
発情した雌猫は、雄猫を呼び集める力は非常に強いです。
近くに雄猫がいなければ、山から、海から、隣町から呼び寄せます。
発情は妊娠するまで続きます。
仮に殆どの雄が去勢されたとしても、僅かに残った生殖能力のある雄を見つけ出し、交わり、妊娠するのです。
日本中のすべての野良猫、野猫を去勢しない限り止めることは出来ません。そしてそんなことは、許されません。
猫の出生は、雌猫には気の毒だけど、雌猫サイドでコントロールするしかありません。
雄猫サイドでしようとするのは、いたずらに雄猫を傷つけるだけです。
3.雌猫の避妊
人が多少とも世話をしている野良猫の避妊は必要だと思います。
山の野良猫は、避妊しなくても増えることはありません。なぜなら大部分の子猫が死ぬからです。抵抗力が弱くてよく病死します、今の時期、多くが凍死します。春の発情で生まれた子はなんとか冬を越せますが、夏の発情で生まれた子はほとんど凍死します。
そのような可哀想な子猫を出さないために、避妊は必要だと思います。
しかし人間社会からほとんど自立して、自然の中で生きている猫に対して、どこまで関与するべきか判断が難しいです。全く介入しないほうが良いのかもしれません。
4.野猫、日本猫
野猫は、古い法律がそのまま残っていて、環境省はいまだに害獣扱いしています。
野猫の実態は殆どわかっていないのです。地域によって、状況が全く違います。南の島嶼部は、比較的野猫が繁殖しやすい環境ですが、四国は、タヌキ、ハクビシンなどの競合相手が多く、最も繁殖しにくい環境です。私は、タヌキ、ハクビシンを時々見ますが、野猫をまだ見たことはありません。
日本猫のルーツは分かっていないことが多いです。最近、弥生時代の遺跡から猫の骨が発見されました。日本猫は相当古くから日本人と一緒に暮らしていたことがわかりました。
日本猫の生態も分かっていないことが多いです。
野猫は、日本猫の生態やルーツを知る上で大変貴重です。みだりに人が手を加えるべきではありません。
これまでハクビシンは外来種とされ、野猫と同様害獣扱いでしたが、最近の研究で日本固有の種である可能性が出てました。
国も民間も、安易な決めつけをしないで、十分な調査、研究のうえで慎重に行動してもらいたいです。
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