後編では、過剰な猫を減らすために、何をすればよいか検討します。
答えは過去の結果に出ています。グラフを見てみましょう。
「保健所などに引取られる猫の数」は、2004年からTNRがほとんどされてない2010年代前半までに、5分の2に減少しました。その後も同様に減少し続け、現在は5分の1に減少しています。
「保健所などに引取られる猫の数」は、TNRとは無関係に減少し続けたのです。
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減少の原因は、2000年以降の度重なる法改正と、飼い主の意識の向上、それにより捨て猫の数が年々減少したことです。
2000年12月施行の動物愛護管理法。
重要なのは、飼い主の義務が明記されたことです。
家猫の繁殖制限に関する第20条。
「犬又はねこの所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をするように努めなければならない。」
捨て猫に対する罰則規定 第27条3項「愛護動物を遺棄した者は、30万円以下の罰金に処する」。
飼い主が無責任な繁殖をしないこと、捨て猫の罰則規定が法律に明文化されたのです。
その後、2002年、2006年、2007年に環境省の告示、2012年動物愛護管理法の更なる改正が行われ、
みだりな繁殖の防止義務、捨て猫に対する罰則の他に、終生飼養の義務、動物取り扱い業者の責任強化がされました。捨て猫の罰金は30万円から50万円に引き上げられました。
法律は重要ですが、より重要なのは飼い主の意識の変化です。
法律と並行して、飼い主の意識も年々向上しました。
猫を無責任に繁殖させ、それを捨てる人が年々減少しました。
昔は公園に段ボール箱に入れられ捨てられた子猫をよく見かけましたが、最近は非常に少なくなりました。
日本の法律は問題が多く残されていますが、正しかったことはTNRを法制化せず、飼い主や動物取り扱い業者など人間側に責任を求めたことです。
過剰な猫は、野良猫ではなく人間が作っている。その事実に沿った法改正でした。
それが「保健所などに引取られる猫の数」減少の結果につながりました。
日本の法律は、海外に比べ非常にゆるいです。
これは一見良くないようにも見えますが、そうとは言い切れません。
日本国民は、世界で最もマナーが良く、ルールをよく守る国民だからです。
日本人は、マナーやルールを守るのは当たり前だと思っています。
でも、法律は建前、バレなければ何をしても良い、法律は破るためにある、そういう国が多いのです。
コロナウイルスが発生した時、政府の対応が遅れたにも関わらず、地域や個人レベルで予防対策が行われ、蔓延をかなり抑えられました。日本はロックダウンを一度も行いませんでしたが、コロナによる死者は欧米諸国の10分の1以下です。日本人がルールをよく守ることの現れです。
国が法律でガチガチに縛る一方で、国民はそれを守らない、そのような国が多い中で、日本はとても進んでいます。
20世紀の頃、猫を飼う人のマナーが悪かったと言うよりは、よく知らなかったのです。
安易に避妊去勢せずに飼い続けると大変なことになるということ、捨猫が犯罪だということ、それが人々の意識に徐々に浸透してきたのです。
今後も更に捨て猫を減らすことは可能だし、それが最も重要なことです。
日本国内の大部分の地域では、野良猫が繁殖して増えるということはありません。
野良猫も子供を産みますが、子孫を残すのは並大抵のことではなく、現状の数を維持することは困難なのです。
捨て猫の一部は保健所などに引取られ、一部は死に、一部は野良猫になります。
その数が加わって維持されているのが実情です。
2016年以降、TNRが桁違いに増大しました。
グラフを見てわかるように、その効果は出ていません。
それは当然です。過剰な猫を作っているのは人間なのですから。
野良猫をTNRするのはとんだ見当違いなのです。
野良猫に多大な苦痛を与え、僅かな繁殖の芽を摘んでいるだけです。
大切なことは、捨て猫を無くすための啓発活動です。
人の助けを必要とする野良猫の保護も重要です。
そして不幸にも保健所などに引取られた猫を殺処分しない取り組み(それについては今後の日記に書く予定です)。
海辺の野良猫
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