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Noraは元野良猫で、今年2月に死にかけていた所を見つけ、連れ帰り家族になりました。
体中悪い所だらけです。
深刻なのは、カリシウイルス感染症。子猫のときに患い、成長が止まりました。
後遺症で、口内、喉、鼻の奥の炎症がひどく、血の混ざった鼻水と痰が出ます。
喉が潰れてニャーと鳴けません。
そして、猫エイズに感染(FIV抗体陽性)しています。
うちに来てから状態はかなり良くなり、1.85kgだった体重が2.8kgになりました。
ほとんど寝てばかりだったのに、時々飛び跳ねたり、走るようになりました。
しかし9月に入り、また体調が悪くなりました。
原因は、同じ部屋にいる赤ちゃん猫です。
私は7月末に、生後間もない4匹の赤ちゃん猫を保護しました。
危険な状態で、付きっ切りで世話をせねばならず、Noraのことをは後回しにしてしまいました。
赤ちゃん猫は3匹亡くなり、1匹だけ生き残りました。
生き残った一匹はすっかり元気になり、やんちゃをするようになりました。
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Noraの寝ている所(布団の上)に侵入し、しょっちゅう抱きついたり、しっぽを噛んだりします。
Noraはゆっくり休むことが出来ません。
赤ちゃん猫に、強いストレスを受けるようになりました。
Noraの食欲が次第に落ちてきました。
急性の結膜炎になり、目やにがいっぱい出て目が開かなくなりました。
鼻水と痰の量も増え、以前のようにゼーゼー苦しそうな息をするようになりました。
私はようやく、深刻な事態になっていることに気付きました。
Noraは心の優しい猫で、野良猫時代に、捨て猫の子猫を親代わりになって育てました。
2021年、Nora一歳の時。
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だから赤ちゃん猫とは仲良くやっていけると思っていました。
しかし、色々辛いことが重なり、病気も悪化し、体力がすっかり落ちてしまったのです。
2月の頃より元気になったとは言え、一日の大半は布団の上で寝ています。
赤ちゃん猫にいつもちょっかい出されると、気持ちの休まる暇がありません。
このままでは、Noraの病状が悪化し、エイズが発症するかも知れない。
私は、赤ちゃん猫を隣の大部屋に移しました。
大部屋には、5月に保護した捨て猫の子猫3匹と6月に保護した捨て猫親子4匹がいます。
赤ちゃん猫も生後40日を過ぎ、普通の食事もできます。
赤ちゃん猫はすぐに慣れて、お兄さんたちと一緒に遊ぶようになりました。
Noraは再び、布団の上でのんびりできるようになりました。
結膜炎は、ホウ酸水で洗った後、オフロキサシン軟膏を塗ると、数日で治りました。
食欲は徐々に回復しました。
最悪だった時は一日何も食べずうんこも出ませんでしたが、約2週間後に、食事の量もトイレも元通りになりました。
ゼーゼーと言う苦しそうな音も出なくなりました。
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昔から病は気からと言いますが、ストレスが病気を引き起こすメカニズムが次第に明らかになってきました。
その一つは、「抗ストレスホルモン」による免疫細胞の働きの抑制です。
最近有名になってきた「NK細胞」は最も高性能の免疫細胞で、がん細胞、ウイルス感染細胞などをパーフォリンというミサイルのような物質を敵に狙い撃ちして殺します。
がん細胞は毎日数千個出現しますが、なかなか癌にならないのはNK細胞のおかげです。
抗ストレスホルモンは、ストレス原因と戦うために体内で作り出される物質です。
血圧、心拍数を高め、瞳孔を広げ、汗腺の働きを活発にし、体を戦闘態勢にするホルモンですが、免疫細胞の働きを抑制します。
ウイルスやがん細胞と戦うことよりも、目前の敵と戦うことに集中するためです。
代表的な抗ストレスホルモンである「コルチゾール」は、NK細胞を殺してしまいます。
コルチゾールはまた、脳の記憶を取り扱う部位である海馬の神経細胞も破壊します。
ストレスが慢性化すると、免疫力も記憶力も低下し、大変恐ろしいことになるのです。
Noraの結膜炎の発症は、ストレスによって免疫力を低下したことを如実に示しています。
猫は人以上にストレスに弱い生き物です。
健康でいられるためには、リラックスでき、楽しみがある環境がとても大切です。
Noraはほとんど寝てばかりですが、起きるとよく窓から外を眺めています。
一時間以上、ずっと眺めていることがあります。
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外に出たいのだと思います。
野良猫が遊びに来ると嬉しそうです。
これまで病気の感染などを心配して外に出しませんでしたら、病気のリスクよりストレスのリスクのほうが大きい。
時々外に出してやろうかと考えています。
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