免疫力が強すぎても病気になります。アレルギーと自己免疫です。
アレルギーは、猫の毛、花粉など無害なものに対して、免疫細胞が過剰に反応する病気です。
自己免疫(リウマチ、膠原病など)は、アレルギーよりもっと強烈で、免疫細胞が自分の細胞を攻撃する病気です。
ステロイドは免疫細胞の働きを抑制するので、アレルギーと自己免疫の治療に有効です。
ここで大切なのは、病気がアレルギーなのか、それとも感染症なのかという見極めです。
免疫細胞が引き起こす炎症は、アレルギーでも感染症でも同じ様に出ます。
猫の皮膚病も、アレルギーと感染症があります。
感染症の皮膚病にステロイドを使用すると、免疫細胞の働きが阻害され病状がもっと悪化します。
猫は人と体質がよく似て、アレルギーを起こしやすい生き物です。
猫も、花粉症になります。
最近里親さんに譲渡した子猫が猫風邪の症状が出て病院で調べた所、感染症ではなく花粉症でした。
花粉症になった子猫。

私は5歳の時「リウマチ熱」という病気になり、ステロイドを処方されて大変な目に会いました。
「リウマチ熱」は、溶連菌という細菌が引き起こす感染症です。
高齢者がよくなる「リウマチ」に症状が似ていますが、全く別の病気です。
「リウマチ」は自己免疫の病気なのでステロイドが処方されますが、「リウマチ熱」は細菌感染症なのでステロイドの使用は逆効果です。
しかし私を診た小児科医はとんだやぶ医者で、ステロイドをじゃんじゃん出しました。
私は、ステロイドを飲んで痛みが消えて元気いっぱいになり、食欲もりもり体重が増えました。
そのうち顔がパンパンに腫れまんまるになりました(ムーンフェイスと呼ばれるステロイド副作用)。
母はさすがに心配になって、看護婦をしている伯母に相談しました(当時看護師と言う言葉はなく、伯母は定年退職するまで看護婦でした)。
伯母は病院の先生に話してくれました。
先生は名医で、小児科医のことをカンカンになって怒り、「小さな子にステロイドなんか使ったら体がぼろぼろになってしまう。すぐうちに連れてきなさい。」と言いました。
私はその病院に入院しました。
木造2階建てのオンボロな病院でした。
入院してから数日は、高熱が出て体中が痛くて苦しくてたまりませんでした。
リウマチ熱本来の症状に加えて、ステロイドを断ったことによる禁断症状が出たのです。
ステロイドを常用していると、自分の体でステロイドを作れなくなります。
免疫細胞は、ステロイドの抑制から解放されて暴れまわります。
人も猫も体内でちょうど良い量のステロイドを生成して、免疫細胞をコントロールしています。
ステロイドの常用は、それを狂わせます。
名医の手荒い治療のおかげで、病気は一年後に完治、後遺症も出ませんでした。
今ではステロイドを断つ時は、徐々に減らしていくのが一般的です。
一昨年前に亡くなったモモも、闘病中一時ステロイドを皮下注射しました。
ステロイドを終了するとき、徐々に量を減らし、間隔を少しずつ空けて、最後ゼロにしました。
私が子供だった頃のやり方は、今の猫の場合よりずっと手荒かったということになります。
闘病中のモモ

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)という、がん細胞を退治してくれるとっても頼りになる免疫細胞があります。
炎症物質は放出せず、パーフォリンというミサイルのようなものをがん細胞に狙い撃ちして殺します。
人の体には毎日数千個のがん細胞が出現しますが、癌にならないのはNK細胞のおかげです。
ステロイドは、そのNK細胞を殺してしまいます。
ステロイドは、免疫細胞だけでなく、細胞分裂のもととなる「幹細胞」の働きも抑制します。
生体の主要な部位は、細胞分裂して自由に増えるのではなく、幹細胞が分化して増えます。
受精卵が細胞分裂して胎児になる間の細胞はいろんな形に変わりうる柔軟性を持っていますが、幹細胞はその柔軟性を持ち続けた細胞と言うことが出来ます。
ステロイドは、脳の海馬(記憶に関わる重要な器官)の幹細胞が神経細胞に分化するのを妨げます。
幹細胞の分化が行われなくなると、新しい細胞が出来ず、記憶力が低下します。
悲しみ、怒り、不安などネガティブな感情を持ち続けても、記憶力が低下します。
ネガティブな感情は交感神経を優位にし、ステロイドが過剰に作り続けられるからです。
私は去年、自らそれを経験しました。
ステロイド治療の重大な副作用である骨粗鬆症も、幹細胞の骨芽細胞(骨を作る細胞)への分化が阻害されることによって起こります。
ステロイドは目前の敵との戦いに集中するためのホルモンなので、急ぐことのない免疫細胞、幹細胞の働きは全般的に抑制されます。
ステロイドはアレルギーと自己免疫の治療に有効ですが、なるべく使わない、使いすぎないように心がけるべきです。
最後に、アレルギーについて。
アレルギーで苦しんでいる猫さん、人間さんが多いですが、悪いこととは言い切れません。
猫も人も、「免疫応答遺伝子」と「免疫抑制遺伝子」の相反する2つの遺伝子を持っています。
「免疫応答遺伝子」が強く出た人は、免疫力がつよくアレルギーになりやすい。
「免疫抑制遺伝子」が強く出た人は、アレルギーにはなりにくいが感染症に罹りやすいのです。
私の母は免疫応答遺伝子が強く出て、膠原病(自己免疫)になりました。
C型肝炎にも感染しましたが発症せず、何の治療もしないのにウイルスが消えて無くなりました。
私も母のアレルギー体質を受け継ぎ、子供の時にはリウマチ熱になりましたが、その後は感染症にあまり罹りません。
多分コロナにも感染しにくいし、感染しても重症化もしにくいと思います。
そういう訳で、アレルギー体質の人は、感染症には強いことが期待できます。
(但し、必ずそうとは言いきれません。中にはアレルギーにもなりやすく、感染症にも罹りやすい不運な人もいるかも知れません。アレルギーは、遺伝的要素とは別の要因でなることがありますので…。)
うちのNoraは猫エイズのキャリアです。
子猫の時にカリシウイルス感染症も患い、成長が止まってしまいました。
普通このような野良猫は、冬を越せずに死んでしまいます。
Noraは、免疫応答遺伝子が強いのだと思います。
エイズウイルスが消えて無くなれば良いと願っています。

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