雑食動物の人間とは違います。
猫のごはんを考える時、それを念頭に置かなければなりません。
ネコさんグレードは、ヒューマングレードではありません。

猫の食事の検討は、三大栄養素(たんぱく質、脂肪、炭水化物)の摂取量を、人と比較してみることが重要です。
下表では、野生の猫の摂取量を赤字で左端に、人の標準摂取量を青字で右端に示しています。
野生の猫は、小動物の骨、毛以外のほとんどの部位を食べます。
哺乳類、鳥類の体は、水分を除くと、ほぼたんぱく質と脂肪、たんぱく質が脂肪よりやや多く、ミネラルは骨を除くとごく少量、大体下表の赤字の数値になります。。
一方、人間は雑食動物なので、三大栄養素をバランスよく食べなければなりません。
内訳は、カロリー比で、たんぱく質が15%、脂質が25%、炭水化物が60%ほど。
これを重量比に換算すると、下表の青字で示したようになります。

表を見て明らかなように、猫と人との決定的な違いは炭水化物です。
人は炭水化物が食事の大部分を占めますが、猫の炭水化物摂取量はほぼ0。
猫の体は、炭水化物を必要としません。
次に、各種食べ物について。
トリ肉ムネとモモは、カロリーSlism を参照。水分を除いた数値を記載しました。
https://calorie.slism.jp/111219/、https://calorie.slism.jp/111224/
「ねこまんま」
昭和の頃の、ごはんにかつお節を混ぜた食べ物。
かつお節は、たんぱく質を80%近く含む高タンパク食品ですが、軽いのでたくさん加えたつもりでも量は少ない。
ここではごはんに10%のかつを節を加えたものとして、計算しました。
ペットフードA~Gについて。
ドライフードで、総合食、グレインフリー、糖尿病療法食の中から7品目ピックアップしました。
参考のために、フードの100g当たりの大体の値段を記しました。
炭水化物の重量%をきちんと表示しているものに○、していないものに☓をつけました。
表の数値は、水分を除いた%で、合計100になるようにしています。
ここでペットフードの成分表示について、簡単な説明をします。
大切な愛猫のために、普段食べさせているペットフードの成分を確認することはとても大切です。
「ペットフード安全法」は、下記の表示を義務付けています。
「名称 原材料名 賞味期限 製造業者等の名称及び住所 原産国名」
出典:環境省 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/petfood/outline.html

出典:環境省 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2305b.html
「ペットフード安全法」では、原材料名の表示は義務付けていますが、成分の内訳%までは義務付けていません。
民間の「ペットフード公正取引協議会」(ペットフード会社など70数社からなる団体、https://pffta.org/index.html) が、自主的にルールを定めています。
たん白質、脂質、粗繊維、灰分、水分の重量比が%(パーセント)の表示を義務付けています。
https://pffta.org/hyouji/howto.html
ところが、肝心の炭水化物の表示は義務付けていません。
「炭水化物は表示したくない」、気持ちはわかります。
中には、正直に表示するメーカーもあります。
炭水化物の重量%は、簡単な計算で出せます。
100%に、たん白質、脂質、粗繊維、灰分、水分%を引けば、炭水化物%の実数にほぼ一致します。
表では、その数値を記載しました。
それでは、表をもう一度見て、食べ物を右から順番に検討します。

「ねこまんま」
炭水化物が76%と、現代人の標準摂取量をも超えています。
完璧なヒューマングレードの食べ物です。
人も猫も一緒というコンセプトは買いますが、これでは猫の体が持ちません。
当時は、飼い猫もネズミなどを捕食していたし、魚の頭や内臓などをもらってたのでなんとかやれたのでしょう。
ペットフードA、B
店でよく売られている値段の安いものです。
人の標準摂取量に比べると、たんぱく質が多く、炭水化物は少ないですが、炭水化物の量がタンパク質の量を上回っています。
フードC
いわゆる高級フードですが、フードA、Bよりもたんぱく質が少なく、炭水化物が多い。
高級フードの中にも、こういうものがあります。
フードD、E
グレインフリーと銘打っているもの。
確かにフードA、Bに比べると、炭水化物が少ないですが、それでも20数%あります。
グレインフリーなのに何故?
原材料を見るとすぐわかります。
原材料は量が多い順に、例えば「トリ肉、サーモン、ジャガイモ、豚肉、サツマイモ、白身魚、ビタミン類(A、E)、ミネラル類(鉄、銅、亜鉛)…」というように表示されています。
グレイン(穀物、小麦や米など)の代りに、じゃがいも、さつまいもなどを使っているのです。
じゃがいもは、食後の血糖値が上がる指標となるGI値が90とかなり高い食品です。
「グレインフリー」と言う表示はほとんど意味がなく、消費者を欺くような悪意すら感じさせます。
フードF、G
糖尿病の療法食です。
Gは、野生の猫の餌と同量のたんぱく質があります。
炭水化物は一般のペットフードの半分以下に抑えられており、かなり野生の猫の食事に近いです。
トリ肉
ムネ肉も、モモ肉も、炭水化物は0。
猫が元々捕食していた食事と変わりがありません。
とりわけムネ肉は、たんぱく質と脂質の割合が、元々猫が食べていた食事に非常に近いです。

何故、ペットフードには炭水化物が多く含まれるのか?
理由は簡単です。
炭水化物の多い食材の値段が、肉や魚の10分の1だからです。
最近、ペットフードが値上がりしています。
フード会社も、原料コスト、製造コストを下げるために一生懸命です。
コストを下げる一番簡単な方法が、炭水化物を含む食材を使うことです。
フードの中で、値段の安いものほど炭水化物の量が多いことからも、それがよくわかります。
炭水化物の多い猫のごはんは、ねこまんまの時代から現在まで、猫のためではなく人の都合で作られています。
冒頭で述べたように、猫は完全な肉食動物です。
数千万年の間、ほとんど肉だけを食べてきて、体は肉を食べるように出来上がっています。
炭水化物の多い食事が、猫の健康に良くないことは容易に推察できることです。
次回は、炭水化物の多い食事が、どれだけ猫の健康を害するものであるかを見ていきます。
*おことわり:グラフのトリ肉モモの数値が間違っておりましたので、訂正しました。
訂正前 たんぱく質88% 脂質が18%、その他4%、炭水化物0%
→訂正後 たんぱく質80% 脂質が17%、その他3%、炭水化物0%
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