普段人の目に触れることがないので、当然と言えます。
野良猫は、私達の身近にいて、野生の生き物の姿を見せてくれます。
野良猫の生態は、動物学的に大変貴重です。
ライオンの生態も分かっていないことが多く、間違った説がとても多いです。
例えば、狩は専らメスが行い、メスが捕獲した獲物をオスがメスや子供を押しのけて、最初に食べると言うのは誤りのようです。
最近は、オスも狩りに重要な役割を果たしているという説が有力です。
また獲物を雄が最初に食べるのではなく、家族一緒に仲良く食べているのが数多く確認されています。
以下、野生の猫そして野良猫の興味深い生態をご紹介します。
1.猫の家族
動物の生態で最も基本となるのは、家族です。
野生の猫の家族には父親は存在せず、母猫とその子供からなるというのが通説です。
母猫は、出産して約一ヶ月ほど子猫に母乳を与えます。
離乳後もしばらくの間手元に置き、餌を運びます。
また子猫に狩の仕方を教えます。
子猫がある程度大きくなると、雄猫は母猫のもとを去ります。
そして自分の新しい住処を見つけ、縄張りを作ります。
雌猫は母猫のもとに残ります。
そして翌年子供が生まれると、一緒に助け合いながら子育てすると言われています。
以上は野良猫に割と見られる形態ですが、必ずそうとは限りません。
状況によって、また猫それぞれの性格によって異なります。
この3匹は野良猫保護地にいる猫で、親子です。
真ん中の三毛猫が母親、向かって右のキジトラが娘、左の茶白が息子です。

娘も妊娠しましたが、残念ながら出産出来ませんでした。
分娩の際に子宮が外に飛び出してしまったのです。
病院で手術して一命をとりとめましたが、子猫は救えませんでした。
もし子猫が生きていたら、母親のミケと協力して子育てする姿が見られたことと思います。
息子は、おとなしく甘えん坊の性格で、未だに母親の元を離れようとしません。

猫の親子も様々です。
2.子を捨てる親
この猫は、洋猫の長毛種です。捨て猫です。

数年前に一度出産しました。
生まれた子の中に発育不良の子猫が一匹いました。
この猫は、その子猫を山の斜面に突き落としました。
戻してもまた突き落とします。
その子猫は責任者のYさんが家につれて帰り育てました。
この猫には、体の弱い子は捨てるということがインプットされていたようです。
実際厳しい自然界では、体の弱い子猫はおとなになれずに死んでしまいます。
母猫も生きるのがやっとで、下手をすると親子全員死ぬかもしれません。
「弱い子は捨てる」ということが、この猫に本能的に備わっていた様です。
私の知っている中では、この様なケースはこの一匹だけです。
この猫の品種にその様な遺伝情報が備わっているのか、或いは猫一般にそのような猫が一定数存在するのかはよくわかりません。
この猫のような先天的な原因以外で、母猫が育児放棄をすることがあります。
体力的、状況的に育児が不可能になった時、強いストレスでパニックになった時などです。
また、捨て猫(もと家猫)が初産の時、子育てをしないことがあります。
母親からきちんと子育てを学んでおらず、仕方がわからないのだと思われます。
動物園の動物も同じことがあります。
これは野生の猫の生態ではなく、人に飼われた猫の生態と言えるでしょう。
3.よその子を我が子として育てる猫。
我が子を捨てる猫よりも、よその子を我が子として育てる猫のほうが多いと思います。
うちのNoraは野良猫時代1歳の時に、捨てられた子猫を母親代わりになって面倒を見ていました。
手前がNora。後ろが子猫

Noraは病気と発育不良のため、発情も妊娠も出産の経験もありませんでした。
子猫はお乳の出ないNoraのおっぱいを吸っていたそうです。
野良猫ではありませんが、去年保護した親子で捨てられていた、母猫と3匹の子猫です。

茶トラの2匹は母猫の実の子ですが、左端の白黒の赤ちゃん猫は実の親子ではありません。
保護した時、茶トラの2匹は生後2~3週間ほど、白黒は目も開かずへその緒も付いていました。
生まれた日に半月ほどの差があります。
別の母猫が産んだ子だと考えざるを得ません。
母猫は、白黒を実の子と別け隔てなく、お乳を与えて育てました。
メス猫の母性愛は、しばしば自分がお腹を痛めた子以外にも向けられるようです。
次回は、オス猫について説明します。
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