11月13日

兄猫があずが居ないのを完全に理解し、家の中をグルグルと歩き回っている

『…お兄ちゃんだもんね』

と頭を撫で兄猫を、自分を落ち着かせるように抱いた

それでもやはり外が気になるらしい
窓という窓から外を見ている

私の部屋の窓も開けて欲しいようで、開けてあげるが吹き込むのは寒い風

『風邪ひくよ』と言ってもこちらに視線を向けるだけ

気が済むまで開けといてあげよう、開けていれば捕獲器の音も聞こえるからと思っていたのが不味かった

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曜日が変わって月曜日

昨日の夜からお腹が痛い、吐き気がする
冷えてしまったのだろうか

会社に休む連絡をする
起きて恐る恐るリビングに向かえば、家族の姿
と用意されていた私のお弁当

『あれ？仕事行く時間じゃないの？』と聞かれギクリ
『…体調悪くて休んだ』徐々に小さくなる声

『馬鹿じゃないの？！会社に迷惑かけるくらいなら辞めたら？！』とピシャリ
何となくその場に居ずらくて自分の部屋に逃げ込むように戻った

あずのことは、おいおい区切りをつけなきゃいけないのは分かってる
すぐそこにいるのに諦めたくは無い
けれど、今の自分にはできることが無さすぎる

弱すぎる、情けない、そんなの自分でも分かってる
そんなことを考えては涙を流し、冷たくなり鼓動が早くなった体を丸くして再び眠りについた

あずが家に帰ってきて、一緒に寝ている夢
色んな場所に連れていく夢をみた
それが現実になればさぞ幸せだろう

そんな夢を覚ましたのは上司からの電話だった

『体調不良って言ってたけど、大丈夫か？』
『今のところは…』
『今のままじゃ契約更新されないかもな』
『…』
『休むのは構わないけど、休めば休むほど周りの信頼失っていくからな。1度失った信用は楽には戻せないんだから』

それから『たかが猫』『お前みたいなの』など一方的に言われ電話は切れた
何も言えなかったと同時に掲示板の書き込みと一緒だ、とふと思った

体調は少し良くなったが、気分が悪い
じっとしていられなくて、捕獲器の様子を確かめに行った

捕獲器を見に行くと、そのお家の住民の方が外に出ていた
『こんにちは』と挨拶をすると『こんにちは、捕獲器かかってないね』と
『あ''ー…、やっぱり…』
『寒くなるから心配だよね…。家族だもんね』と言ってくれる

『すみません、ご迷惑おかけして…』と頭を下げると『いいよいいよ、無事で帰って欲しいもの』と

頭がしばらくあがらなかった、ありがたかった

その場を後にし、次に向かうのは神社
夜、地形を確かめるべく父とあるった先で見つけた神社
その神社にお参りした夜にあずの姿を見たのだ
その時に何も持っておらず、『また来ます』とだけ伝えてきてしまった
お礼参りも兼ねて向かった

夜見た時よりもずっと立派な神社
失礼のないようにお参りする

『この間は来れずにすみません。あの後あずの姿を見ました。ありがとうございました。次はお家に帰って来れるようにお願いします』

と深く願った

家に帰る途中、雨が降る、天気雨だ
早く家に帰らなければと急げば、何やら家の前によく車が止まる
なんだと思い周りを見れば工事が始まっていた
『なんでこのタイミング…』と思ったが、こっちの都合で動いてるわけじゃない
この人たちも仕事だ…
心の中で『お疲れ様です』とだけ言って家に戻った

少しあるっただけなのに、体が、手足が冷たい
手を見れば白すぎる手

あずには申し訳ないが、こたつをつけて震える体を冷たい手で抱き寄せていた

しばらくして母が帰ってくる
朝と同じいたたまれない空気
やはり居づらくて部屋に行こうとすれば、鳴る電話
父からだった

『はい』と出れば
『あずの様子はどうだった』と
『何も変わらないよ、餌も状況も』
『この寒さで、何も食べてなきゃ死ぬぞ』
と言われ我に返る
『あの場所にいるのは分かったんだ。捕まえられるなら強制的に追い込むしかない』
と言われる

死ぬのだけはヤダ

それだけが体を動かしていた

しかし人手が足りなすぎる
この間のお兄様とお姉様、と頭をよぎったがこんな寒い夜に、しかもご飯前…
申し訳ないと思いながらも動く手、いつも間にか連絡を取っていた
Twitterでも『命の危険を感じたので捜索します。近くの人手伝って頂けると助かります』のツイートをした

するとお姉様から返信
『何も食べてないのは危ないですね、今から10分後に向かいます』との事

『！』少し希望が見えた気がした

お姉様が来ていただいて捜索開始
『旦那は今仕事中なので』と

この間姿を見た場所を重点的に捜索
いつの間にか、母、父、そして仕事終わりに来てくれたお兄様が集まっていた

しかしそれでも見つけられないあず
1時間ちょっとして再集合

『すみません、俺らは帰ります』
『こちらこそ夜遅くに、ご飯も食べずに申し訳ありません💦』
『そうだ、ライト貸しとくんでこれで見てて下さい』

とライトを貸してくださった

別れの挨拶を済ませ家に帰る
やはりするのは『なんで5mもない家に帰って来れないんだろう』だけ

『自分のおうち忘れちゃったのかな』
『名前覚えてない…とか？』

話せば話すほど嫌な方へと向かってしまう

最終的には『なんで帰ってこない』になってしまった

ご飯が終わり、捕獲器が気になり始める時間
『ちょっと見てくる』

と借りたライトを持って外に出た

やはり、風が冷たい
家に居た時の温かさは、すぐ消え去った

『あずはこれを我慢してるかもしれないんだ』
そう思えば進む足

隠れていた茂みを見るが、目は見当たらない
ちゃんと風が凌げるところに居るのだろうか、それだけが気になって仕方がなかった

君の姿を見失って6日
どこにいるの？なにしてるの？
天気予報、ニュースを見れば雪の話題ばっかり
今年も、もう50日もないって言ってたよ
お布団に入ろう、一緒に寝よう
大好きな君を抱きしめたいよ